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本日の到着便 柄谷行人「反復強迫としての平和」 『世界』 2015年9月号 その2
柄谷行人「反復強迫としての平和」『世界』は その1があります。ここ▼
本日の到着便 柄谷行人「反復強迫としての平和」『世界』 2015年9月号 その1の1
柄谷行人 「反復強迫としての平和」 の講演草稿の抄録
1 カントの平和論が意味するもの → 8月8日 当ブログに抄録あり
2 歴史的段階としての新自由主義 →本日8月9日当ブログ
3 フロイトの転回と平和論 → 8月10日
4 憲法九条と無意識 → 8月10日
5 結語 → 8月10日
今日はここから
2 歴史的段階としての新自由主義
「カントの平和論が重要になるのは一定の状況においてである。」
「カントの平和論を必要とする状況は反復的である」
「18世紀末、19世紀末、そして現在の時代」
歴史家ウォーラスティンの「世界システム」論でいえば
「自由主義的段階は、ヘゲモニー国家が存在する状態」
「帝国主義的段階とは、ヘゲモニー国家が衰退し、多数の国が次のヘゲモニーの座をめぐって争う状態」
「自由主義的段階と帝国主義的段階は交互にあらわれる。」
「大体60年の周期で発生する。」
「自由主義的段階では、すべての国が自由主義的であるわけではない。むしろヘゲモニー国家だけが、自由主義的で、他の国は多かれ少なかれ保護主義的」
「ウォーラスティンによれば、ヘゲモニー国家は3つしかなかった。オランダ、イギリス、そして米国」
「製造部門で、ヘゲモニーを獲得し、それから、商業部門、さらに金融部門に進む」
「全領域で覇権をもつ時期は短い」
「19世紀後半になると、イギリスは製造部門では交代、・・・イギリスは海外投資、金融部門で圧倒的な優位を保ち、軍事的にも「世界の七つの海を支配していたが、没落する過程にあった。」
「それに対して、ドイツ、米国などが次のヘゲモニー国家の座をめぐって争った段階が、帝国主義段階です。こうして、19世紀末に、世界資本主義は再び帝国主義段階に入った。」
「これが第一次世界大戦に突入して、次のヘゲモニー国家が米国になった。」
「冷戦体制は、1990年に終わり、米国が勝利し、自由主義が勝利したと信じたが、そうではなかった。その没落の開始を示す事件」
「米国は製造業で、ドイツと日本に敗北した」
「ゆえに、商業や金融のほうに向かった。オランダやイギリスが、ヘゲモニー国家が衰退するときに見られるように」
「米国の資本はグローバリズムで存続しようとした。それは金融規制を廃棄し国内の福祉や労働問題を犠牲にすることで、これが新自由主義」
「新自由主義は、自由主義とは無縁」
「新自由主義は、帝国主義的な段階の特徴で、新帝国主義と呼んだほうがいい」
「現在を1930年代に似ているという人が多いが、これは誤り、120年前、19世紀末の帝国主義時代に似ている」
「帝国主義的段階は、ヘゲモニー国家が没落して、次のヘゲモニーをめぐる争いが始まる段階」
「では、次のヘゲモニーに向かって米国を圧倒するのはどこか」
「私の見るところ、それはドイツ・ヨーロッパではない。むろん、日本ではない。おそらく、中国とインドです。」
「次のヘゲモニー国家がどこになるかはわからないが、確実なのはヘゲモニーをめぐる争いが長く続くということ」
「われわれの今の時代は、「帝国主義段階」に入ったといえる」
「いいかえれば、平和論がふたたび意味をもつ時代に入ったのです。」 柄谷行人「反復強迫としての平和」 『世界』2015年9月号 (34~38頁)
今日はここまで
つづく