野散 NOSAN 散種 野の鍵 贈与のカオスモス ラジオ・ヴォルテール

野散 のさん  野を開く鍵 贈与のカオスモス 散種 混沌ー宇宙 想像的・歴史的なもののジャンルなき収蔵庫をめざして 

『英米史辞典』2000研究社 『岩波イスラーム辞典』2002 『新イスラム事典』2002平凡社

2015年11月20日 | 辞典・事典・道具

                         ▲ 『英米史辞典』2000年 研究社 定価12000円+税

 

 

辞典・事典・道具・工具類

 

1980年代には平凡社が「エリア別事典」シリーズを出版していて重宝していたのだが、80年代の事典を今読んでみるとさすがに古びている。『アメリカを知る事典』1986年、『ロシア・ソ連を知る事典』1989年、『ラテンアメリカを知る事典』1987年、『朝鮮を知る事典』1986年、『東南アジアを知る事典』などである。それ以外にも、出版されていて、順次手元に置こうと思っていたのだが。

 

1980年代は、情報収集するには、まだインターネットもなく、ようやく、パソコン通信なるものができ、テキストベースでぽつぽつとデータを収集する段階だったから、ちょっとした調べ物は、平凡社などの百科事典で調べるものだったし、だめなときには、規模の大きい公共図書館で、本を中心に利用するほかはない。

が、そうこうするうちに、景気、にわかにかきくもり、なんでも、興味のおもむくまま、ちょっとした調べ物のために、事典類を購入する状況ではなくなってしまったのだ。

我が家にも、20世紀末の恐慌の嵐が吹き荒れた。特に仕事上で使う必要のある事典以外は、1990年半ば以降は、平凡社のエリア別事典の新版・改訂版を含め、高価な事典類は中途で途絶したままになっている。

1991年以降のソ連解体以後、怪しげな事件・戦争が相次ぎ、2001年の9.11事件後には、現代世界の情報収集には、既成のマスメディアの情報を妄信しては何も得るものがないことがわかった。

仕事に明け暮れた現役時代には、余暇の時間は限られているし、疑問に思った事件や現代史も、深く考え情報を発信するほどの網羅的な知識を収集する時間も財源もない。

しかし、退職後の自由時間も、そう長いものではなく、親しみ、敬愛していた鶴見俊輔さんやマチョイネさんこと、西江雅之さんの訃報に接して、もう少し、時間を完全燃焼しないと、と、しきりに思う。

いまさら興味のおもむくまま、読み散らかすことの反省の気持ちもないことから、このまま、広く・深くを目指してはいるが、浅知恵を繰り広げるのほかはない。

20世紀の末の日本恐慌の前の時代に戻ってみると、1990年代前半の冷戦後という時代が、幻影の時代だったのが、今はっきりと見えてきた。「冷戦から冷戦へ」というのが、変わることのないほんとうのシナリオ。

「ワン・ワールド」という、「世界連邦」という途方もない謀略・幻想へ向けた工作の分岐点が、ソ連の解体であり、2001年の9.11事件であった。それ以後の世界で起きた重大事件は「ワン・ワールド」へ向かって着々と歩む、ひとつひとつ工作の痕跡となっていっているのではないだろうか。

 

これまで、個々バラバラに見えた世界現代史の大事件も、誰が、またどのような勢力が、将来の利益や、影響力を増そうとしているのかを考慮すれば、背後にいるものがはっきりと予想されよう。

ということで、

現在の欧米とイスラム世界の「文明の衝突」を装った演出に細心の関心を持って留意するよう、また「アメリカ建国の大義」や、あるいは「英帝国とは何だったのか」をもう一度はっきりさせることが当面の私の世界現代史の課題。

世界史に関わる事典類は、『世界民族問題事典』平凡社 2002年、『20世紀世界紛争事典』2000年 三省堂以来だ。

発行年代も、上の、『世界民族問題事典』、『20世紀世界紛争事典』とほとんど変わらないのだが、以下の事典3冊、これから使い倒そうと入手したので紹介。

 ▲ 『英米史辞典』 研究社 2000年 上の写真は外箱。定価は12000円+税

▲ 『英米史辞典』 研究社 2000年 本体カバーはこんな装丁。箱なしだと、古本屋さんで、現在は半額以下で安く買える。英・米帝国を知るために、その起源に遡って考えるための1冊。

アメリカ史部分の編者は、富田虎男さんなので、納得の購入。この本大分前から、気になっていたのだが、値段も値段なので購入するまで時間がかかってしまった。ようやく古書価格がこなれてきたので購入。富田虎男さんは、かつて、山川出版社から、清水知久・高橋章などとともに、『アメリカ史研究入門』を出していた。アメリカ史を建国のはじめから、「帝国主義」形成の歴史ととらえ、一貫して著述した圧倒的な迫力のアメリカ史研究入門だった。近現代世界史の反省から生まれた、1960年末ー1970年初頭の異議申し立ての時代の刻印を帯びた名著だったと思う。今、アメリカ史研究者が、こんな気迫を込めた本が作れるかは大いに疑問。

大体、アメリカの著名大学で、マスターとるのにこんな富田虎男さんらの方針で、研究計画したら、即座にアメリカから出て行け、破門だろうなぁ。1970年代前半は日本でこんな本が作れたのです。

▼『英米史辞典』 目次

▲ 『英米史辞典』 目次

『英米史辞典』編者の富田虎男さんは、初版の『アメリカを知る事典』 1986年 平凡社でも執筆している。

アメリカとメキシコのかつてあった戦争 、米墨戦争の項目を極めて率直に書いていて、特に強い印象が刻まれアメリカ史研究者では、清水知久、高橋章とならんで好きな研究者。アメリカインディアンの歴史などの著述もある。

以下は富田虎男の初版の『アメリカを知る事典』の執筆項目はこんな具合だ。

「米墨戦争

「アメリカ・メキシコ戦争ともいう。1846ー48年、合衆国が、太平洋岸まで領土を拡張する過程で引き起こしたメキシコ領土への侵略戦争。直接の原因は1845年12月メキシコの旧領土テキサスが米連邦へ加入したこと、合衆国がカリフォルニアとメキシコの買収による併合を要求したことにある。・・・・・・・・・・

・・・・・・全戦線で合衆国軍は優位にたち、・・・・1848年2月2日グアダルーペ・イダルゴ条約で、合衆国はメキシコに、テキサスへの請求権を放棄させ、ニューメキシコとカリフォルニアを譲渡させ、これに対し1500万ドルを支払うことが定められた。この結果メキシコは国土の半分近くを失う一方、合衆国は太平洋一帯まで領土を拡大し、太平洋とアジアへの進出の足場を築いた。また同条約の直前にカリフォルニアで金鉱が発見され、ゴールドラッシュが始まった。」 『アメリカを知る事典』1986年(初版) 平凡社 (449頁 富田虎男執筆)

その後、新版・改版でこの記述がどうなったのかは興味あるところだが、まだ、確認していない。

また、この米墨(アメリカーメキシコ)戦争についての記述は、日本人アメリカ研究者のアメリカ観や、研究姿勢が如実に表れるので、よく観察して見たい項目だね。

先日、同志社大学の学長選に敗れた某村田センセィは、米国外交史で、米墨戦争、同志社大学でどんな講義をしていたのだろうなぁ。

その昔、「朝まで生テレビ」で、村田教授が出演していて、アメリカべったりの、こちらが聞くだけでも恥ずかしくなる先生がいたのだが、このところ出てないと思っていたが、同志社の学長さんになっていたわけだ。米国臣従安倍内閣にふさわしい人選だ。安倍内閣とりまきの学者さんはこんなものなのだなぁ。

 

▲『岩波イスラーム辞典』2002年 岩波書店  定価7500円+税

▲『岩波イスラーム辞典』2002年 岩波書店 本体装丁

ソフトカバーで使いやすい。小項目なので、後ろの索引から用語を探し引く方がいいかもしれない。

また下に表示してあるように、イスラームを知る重要な大項目は、特別に枠組みで解説している。この大項目を読んでから、小項目にいこう。

また、この本、2001年の9.11の事件より遙か前の1993年に事典編集が始まっている。刊行は2002年だが、9.11事件とイスラームの歴史とは、本当は何の関係もないかもしれない。

時勢に流されず、イスラームを文化史としてとらえるような姿勢を持たないと、この本役に立たないので要注意。

取り急ぎ、ジハードやら、テロリズムを知りたくても、ここには、得るものはない。読んで得られるのは、マスメディアが、性急にとらえる矮小化されたイスラームではなく、暴走する1パーセントの人のためだけの経済中心主義・新自由主義にはない対抗文化となるかもしれないもうひとつの価値観の在庫目録であるかもしれないのだが。

▲『岩波イスラーム辞典』2002年 岩波書店 キーワード 目次

 

▼『新イスラム事典』 平凡社 

『新イスラム事典』 2002年 平凡社 定価4000円+税

 

 『新イスラム事典』 2002年 平凡社 目次

すでに1982年に出版されていた、イスラム事典の改訂版。

最初に37頁にわたるイスラームの宗教・歴史・社会の総説があって、概要が得られる。

またイスラム歴史年表、地図、参考文献案内もある。平凡社は世界のエリア別事典を出版しているのだが、その一環として、企画された内容が含まれているようだ。索引や、図表も充実していて、初版からの大幅な拡充が図られている。価格も手ごろで、入手しやすいのではないだろうか。

『新イスラム事典』 2002年 平凡社  『岩波イスラーム辞典』2002年 岩波書店

というコースをたどるのではないだろうか。

数十年前のイスラームについて書かれた岩波新書では、参考文献が少なく、探していたのだが、平凡社の『新イスラム事典』 2002年は、2002年初めまでのものまでだが文献紹介は充実している。

『岩波イスラーム辞典』には参考文献がないので棲み分けしているのかもしれない。

イスラームに関する参考文献が充実していると思われるのは、名古屋大学で出版されているイスラーム世界研究マニュアルのようだ。まだこの本入手していないが、600頁もある大冊らしい。

 

▼ イスラーム世界研究マニュアル 

 ▲『イスラーム世界研究マニュアル』 2008年 名古屋大学出版会 3800円

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『英米史辞典』2000研究社 『岩波イスラーム辞典』2002 『平凡社新イスラム辞典』2002



最新の画像もっと見る