沖縄・台湾友の会

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「二十年後、テスラ・ボット(ヒューマノイド・ロボット)は百万台」    イーロン・マスクが自社ロボット「オプティミス」で強気の予測

2024-01-23 13:30:45 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024)1月23日(火曜日)弐
        通巻第8103号  
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 「二十年後、テスラ・ボット(ヒューマノイド・ロボット)は百万台」
   イーロン・マスクが自社ロボット「オプティミス」で強気の予測
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 世界一の大富豪といわれるイーロン・マスク、あちこちで無造作な発言をつづけ物議を醸し出すことでも有名だが、「これから二十年以内に、文明の安定が続く限りにおいて、テスラ・ボット(ヒューマノイド・ロボット)の「オプティミス」は百万台になる。価格は2万ドル近辺になるだろう」と強気な予測を語った(FOXニュース、24年1月22日)。

 上海で開催されたAI国際会議で、テスラは、このオプティミスの試作品を展示し実演して見せた。
なるほど、人間のかたちをして、運搬や物品の配置換え、植木に水撒きなど単純な作業ができる。これは日本の産業ロボットのレベル以下だが、愛称「テスラ・ボット」は忽ち世界のブランドとなった。マスクは上海の展示ショーで、「3~5年以内に市場に投入する」と語った。

しかし、用意周到な言葉選びがなされていて、注意が必要である。原文にあたると「provided」が挿入されている。これは「以下の条件のもとに」という付帯条件を示し、「文明の安定が続く限りにおいて」、マスクの予測は成立するという意味である。

テスラは先にSF映画の装甲車のような「サイバートラック」という新モデルを発売したが、価格が6万ドル(900万円弱。因みにトヨタ・レクサスの価格は23年モデルが460万円から570万円。最高級豪華版は、上海自動車ショーで披露された新モデルで3200万円)。
サイバートラックは当初4万ドルと宣伝されたので、予約は百万台に達したらしい。ところが、イザ蓋をあけると高価なので、当面の年間販売台数25~50万台を達成できるかどうか、専門家は疑問視している。

テスラ、その前にはリコールが200万台。またその前はマスクの失言で「反ユダヤ主義」と間違えられ、イスラエルへ釈明に飛び、1月22日はポーランドのアウシュビッツ見学に行かされるなど失言後遺症も続いている。
ポーランドの古都クラコウ(琥珀と日本漫画センターで有名)で開催された「全欧ユダヤ人協会」に出席したイーロン・マスクは「多様性、公平性、包括性」が重要だと述べた。

米国専門誌『コンシューマー・リポート』は33万台以上の自動車データの分析結果を発表し、「EVはまだ主力車種としては発展途上にあり、EVはガソリン車よりも問題が79%多い」と報じた。
他方、ハイブリッド車は26%少なく、トヨタや現代は「信頼性の高いメーカーだ」と評価した。

 マスクはAIにも挑んでおり、多数のエンジニアをスカウトして、「AI─X」社を設立し「オープンAI社」のチャットGPTに対抗意欲を燃やす。
ロボットはそのAIとの連携から編み出された分野なのか基礎的には宇宙衛星通信網の「スペースX」の超ハイテク技術を持っている。
 ともかくその飽くなき冒険精神は萎縮気味の日本の若者たちを鼓舞していることだけは確かである。

中国の都市化比率は60%を超えて農村の荒廃に拍車   農業人口の激減と農作物の輸入激増、そして食糧輸入国へ

2024-01-23 13:29:33 | 日記
 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024)1月23日(火曜日)
        通巻第8102号  
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 中国の都市化比率は60%を超えて農村の荒廃に拍車
  農業人口の激減と農作物の輸入激増、そして食糧輸入国へ
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 GM(genetically modified)とは、バイオ技術により遺伝子組み替え種子を意味する。
 中国農業部(MARA=農林水産省)は3年間の試験を経てGMトウモロコシ37品種とGM大豆14品種を承認した。
中国政府は都市化による農地激減、農家の労働力不足、農民の高齢化に加えて台風、洪水など天然災害による田畑の荒廃と砂漠化、慢性的水不足、過剰な化学肥料、土壌の劣化などで、農作物の自給自足体制が崩壊し、輸入が増えていることを憂慮してきた。

もとより中国の「三農問題」とは農民、農村、農業。経済成長による農民の都会への流失は深刻である。
農村もマンションやら高速道路などで嘗てのムラ意識は稀釈となりまた農耕具の機械化や近代化などは農業会社(旧「人民公社」)の官僚主義、日本のような農協システムはないため、マネジメントが機能せず、貧困が続いてきた。

 習近平政権は、公園を潰して農耕地への転換を強制するなど、ちぐはぐの農政の一方で、食糧安全保障の改善を重視している。
とくに国内生産と自給自足を確立するべく、2024年6月1日には「食糧安全保障法」が発効する。

GMに関して、食の安全、品質が所謂「科学者」、たとえば「ハイブリッドライスの父」袁龍平のように支持はされているが、民衆は生物学的な安全を懸念しており、また日頃からの政府への不信感が基底にあるためGM作物に対して拒否反応が強い。したがって商品化が遅れてきた。2018年の全国調査では47%がGMに対して否定的な見方をしており、14%がGMを中国を狙ったバイオテロの一種とみなしている。

 大豆は中国の食糧安全保障にとって極めて重要であり、動物用、人間用、工業製品用に区分けされている。
日本でも大豆は納豆、豆腐、醤油などに必需品。たしかに中国は大豆生産国であり、現在の生産量はおよそ 2100 万トンだが、同時に最大の大豆輸入国だ。
2023 年の中国大豆購入量は8500万噸、主に米国、ブラジル、アルゼンチンから輸入した。
2008 年から 2013 年の間に、中国国内の大豆生産専用面積は 24% 減少した。 

中国では大豆は牧畜の飼料にも多用される。大豆とトウモロコシが重要なのは中国の耕地面積の5億2254万ヘクタールのうちの1億2254万ヘクタールが放牧地である。


▼中国は食糧安全保障が優先課題なのだ

 食糧安全保障の改善は習近平政権の優先事項である。
国家の能力構築の強化を含む国家食料安全保障を確保するための8つの課題が提案され中央農村労働会議で確認された。
 遺伝子組み換え作物開発への投資は国有企業 (SOE) ならびに国有研究センター (MARA=直属の国立研究機関である中国農業科学院など) が担い、他方、民間でも種子会社は7600社以上ある。

ところが種子特許出願では世界第 1 位であるにもかかわらず、中国がもつ1225 件の特許の殆どが、中国農薬総公司(ケムチャイナ)が保有する。ケムチャイナは2017年スイスのアグリビジネスでGM開発企業の「シンジェンタ社」を430億ドルで買収し、世界最大の農薬・種子会社の一つとなった。ちなみに中国語の会社名表記は「先正達集団」(発音はまさしくシンジェンダ)。

同社は種苗業界でモンサント、デュポンに次ぐ世界第3位。2019年度の売上は約230億ドルであり、世界100ヵ国に49000人を越える従業員を抱えている。日本支社は殺虫剤などを取り扱っている。
逆にこのM&Aによって西側に警戒感を抱かせ、米国アーカンソー州などは中国企業の農地買収を禁止した。