2022年9月4日
開けっ放しの窓から涼しい潮風を浴び、最高の目覚めだ。
ただ、気持ちの良い昨日の快晴とは打って変わりどんよりとした曇り空。そのうち雨も降り出すという。
本日はレンタカーを半日借りて島内一周を予定している。景色が良くないのは残念だが、まあ何とか楽しめるだろう。
午前9時半ごろ、宿の朝食を頂き、オーナーのおじさんの車で鴛泊の町まで送ってもらう。
本来はチェックイン/アウト時のみの送迎サービスだったのだが、いくらかのガソリン代で朝、夕方の送り迎えを特別に了承してもらった。ありがたい事この上ない。
面積183キロ、周囲63キロある利尻島は仙法志の宿~鴛泊まで片道30分少々かかる。
気さくなおじさんとは移動中の車中で話がはずみ、利尻島の「シリ」はアイヌ語で「島」を意味することや、島内の電力事情=本土と独立して島内で発電しているため、胆振東部地震ではブラックアウトの被害を免れたらしい=などを教えてくれた。
奥尻島、焼尻島など、北海道に「尻」が付く島が多いのはそういう事だったのか、と友人と納得しているうち、昨日降り立ったフェリーターミナル前に到着し降ろしてもらう。
おじさんはこの後、宿の近くで経営している物産店での仕事があるという。いやはや、忙しいのにも関わらず送って頂き申し訳ない。
昨日は上陸早々に車に乗ってしまったのでゆっくり見物できなかったのだが、改めて見るターミナル周辺はおしゃれな飲食店や雑貨店などがあり、昨日の礼文島よりも開けている印象だ。
間近にそびえる利尻富士も迫力満点である。
午前11時、ターミナル前のレンタカー店で予約していた軽自動車(ダイハツミライース)を受け取る。
夕方5時までの利用で料金は9800円。まずは友人がハンドルを握る。
沓形(くつがた)にある利尻ラーメンの店に行ってみよう、と反時計回りに車をスタートさせると、すぐさま強めの雨が降ってきた。
ほぼ正午ぴったりにありつけたお目当ての利尻ラーメン(焼き醤油)は利尻昆布をたっぷり使用した出汁であっさり系。
人気店舗らしく、ハイキングや観光などで来たであろう島外のお客さんでにぎわっていた。
おじさんが送ってくれた道を反対方向に進み仙法志へと戻り、午後1時、島の最南端に近い仙法志御崎公園へ。
雨が本降りで風もあるため景色を楽しむ余裕がほぼなく、普段は絶景であろう高台からの眺めもこんな感じである。
公園の突端にあるおじさんの土産物店に寄りご挨拶。昆布など豊富にそろった海産物のお土産をそれぞれ買い込んだ。
普段は隣接した海上プールでアザラシへの餌やり体験もやっているそうで、地味に楽しみだったのだが今日は悪天候で無しとのこと。残念だ。
温泉好きの友人が、おじさんに島内おすすめの温泉を聞く。
2か所ほどあるらしいが、そのうち沓形の「利尻ふれあい温泉」が茶褐色に濁った「金の湯」で泉質が良いのだとか。
よし、今日の最後の目的地はそこに決定だ。
運転を私にチェンジし、島の東側を北上するも相変わらずの悪天候。
あの北海道銘菓「白い恋人」の缶にプリントされた利尻富士の風景が見られるという「オタトマリ沼」および「白い恋人の丘」は車から出る気にもなれず。雨に霞んで山も見えないため、運転席からの撮影に留めた。
その後「姫沼」付近にも足を延ばしてみたが、沼まで遊歩道を歩かなくてはならぬようでこちらもすぐに引き返してしまった。
観光らしい観光をしないまま鴛泊へと戻り、ガソリンスタンドへ入ると本土民は皆びっくりの島価格で思わずパチリ。
さて、もう一度沓形に向かって探検の締めに温泉だ。
とその前に、私が利尻島で最も寄りたかった場所へ寄り道させてもらった。
・ミルピス商店(利尻町沓形新湊153)
ごく普通の民家の敷地内に向かって案内看板があり、少し躊躇してしまった。
一軒家の一角に看板が掲げられた販売所への入り口があった。
ミルピスとは、1965年にここの家主(牧場経営)が生み出したオリジナルの「乳酸飲料(乳酸菌飲料ではない)」。
牛乳と乳酸をベースに砂糖、クエン酸、香料を混ぜて作り出し半世紀以上。この民家が全国で唯一の生産場所であるという、(利尻島以外では)知る人ぞ知る激レアドリンクなのだ。
期待を胸にガラガラと扉を開けるも無人。
旅人らの思い出の写真やメッセージが貼られた飲食スペースが広がっていた。
「珍スポ」風味に私だけが盛り上がる。
肝心の「ミルピス」はというと、奥の冷蔵ケースでしっかり冷やされてストックされていた。
どうやら横の料金箱にお金を入れて持って行ってくださいというシステムのようだ。
1本350円(持ち帰りは450円)。さっそくお金を入れて1本取り出す。
味わい深い特製の瓶に入ったミルピス。牛乳が沈殿しているのでよく振ってから頂く。
おぉ!濃い牛乳のようなものを想像していたが、森永マミーをあっさりさせたような味で、のどごしが良くとても美味しい。
乳飲料が苦手な友人も美味しそうに飲んでいた。
近年はギョウジャニンニク、ハマナス、ヤマブドウなど10数種類の味があり、電話やファクスで全国からの注文も可能との事なので、気になった人はぜひ。
無事にミルピスを味わえ満足した後、沓形港近くの「利尻ふれあい温泉」へ。
確かにお湯が茶褐色で、これは空気に触れることで湯の成分が変色しているからなのだそうだ。
露天風呂からは海が一望できるのだが、残念ながら風雨が酷くなっており寒い。いまいち寛げずに終了した。
今夜は素泊まりのため、セイコーマートで夜食と酒を買い込んでからレンタカーを返却。
ターミナルで風雨をしのぎ、朝約束した時間に再びおじさんに迎えに来てもらい宿へと戻った。
フェリーの時刻表を見る限り、明日の船はなんとか出港してくれるようだ。
2022年9月5日
昨晩も夜遅くまで飲んでたはずなのだが、ずいぶん早く目覚めてしまった。今朝も曇りの朝。
本日は正午の稚内行きのフェリーに乗ると2人で決めていたので、ぐっすり眠る友人の横でだらだらしていたのだが、午前7時ごろにおじさんが部屋にやってきた。
なんでも、我々の乗船予定の船までは通常運航なのだが、その次の便は欠航。時間を繰り上げて臨時便の運航が決まっている状況なのだそうだ。
「混雑すると思うし、恐らく揺れるので朝イチの便に早めた方がいい」との事だった。
おじさんのアドバイスに従い友人をたたき起こし、慌ただしく準備して宿を後にすることに。
奥様(実は苫小牧出身なんだとか)へお礼を言ってお別れ。今日もおじさんにターミナルまで送ってもらった。
利尻島での2日間、おじさんには良くしてもらいっぱなしだった。
おじさんと仙法志の宿のおかげで、今回の島旅がより素晴らしい思い出になったことは言うまでもない。
また利尻島に来た際にはぜひ利用させてもらう旨お伝えし、しっかりお礼を伝えてお別れした。
午前8時半、無事に朝イチの稚内行フェリーに乗船。皆予定を繰り上げて乗っているのか、それなりの乗船率だった。
時刻通り出港する船の甲板に出て、少しずつ離れていく鴛泊港を感慨深く眺めた。
夏の終わりの旅の終わり、友人はZONEの「secret base~君がくれたもの~」を聴きながら思い出に浸っていたが、私は出港時の脳内テーマソングはいつもセリーヌ・ディオンの「My heart will go on」である。
幸い船の揺れは覚悟していたほどではなく、隣に居合わせた関西の老夫婦ペアとお菓子を交換したりして楽しむことができた。
2022 北の島旅 礼文・利尻島へ
完。