能登半島の奥は、金沢より一週間遅れて桜が咲く。
4月の半ば、山に、里に、一斉に春がやってくる。
金沢の兼六園は今年の桜のもとで、
過去最高の人出だったそうだが、
いつ来ても能登の桜の周りには何の喧騒もなく、
人々は花に見守られながら、農作業にいそしんでいる。
「能登はやさしや、土までも」
人が自然の中で謙虚であるから、
それに応えて、花が咲き、豊かに実るのだと思う。
世界農業遺産に指定された能登地区は、
美しい自然と、人の営みが一体となり
本当の豊かさとはこんなこと、という光景を見せてくれる。
普通の民家に、何でもないことのように
すばらしい桜が咲いている。
昔ながらの土壁がほんとうに美しい。
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輪島市内の県道沿いにある、大きな桜、
「手弱女(たおやめ)の桜」
そばに寄ると、こんなに繊細で優しい花。
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そして、数年ぶりに再会できた神社の桜。
一年に一度、この木に神が降りてくる。
これから始まる田畑の仕事を励ますように
威厳と慈愛をもって、集落を見つめている。
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