語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


神秘の森

2010年08月12日 | 旅日記
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子供の頃から、森を探検するのが好きだった。

夏休みは、ラジオ体操が終わるや否や

近所の森へ遊びにいった。


そんな子供の頃の思い出の森、

心象風景の森を

誰しもが大切に持っているのかもしれない。


九谷焼・上出長右衛門窯の若き担い手である

上出惠悟さんの森は、やはり生まれ育った九谷の地に

今も静かに存在する。

その森の奥には、神秘の池があるという。


その秘密の場所へ、連れて行ってくれることになったのだ。

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夏の朝の山の道は、

目覚めた生物たちの

底知れぬエネルギーに満ちている。


前日に降った雨の露が、

針葉樹の森に 無数のダイヤモンドを降らせていた。


緑したたり、

光が玉となり、線となって踊る。






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森にはたくさんの宝物があるが、

たくさんの危険も待ち受けている。


慣れ親しんだ森であっても、

恐る恐る、歩をすすめていく。

熊よけのベルを時おり響かせながら。

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深い緑に囲まれて、

岩でごろごろした細い道をしばらく登っていくと、

緑のトンネルの奥が急に明るくなった。




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神秘の池、蟹淵(がんぶち)が目の前に現れた。

深い底から不思議な緑色をたたえ、

鏡のような水面に、周囲の緑を映す。


ふいに小さな野鳥、セキレイのような鳥が

舞い降りてきて、

私たちのすぐ目の前の枝にとまった。

向かい合って「ツイー」とひと鳴きして飛び去った。

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まるでおとぎの世界に迷い込んだようだ。


この緑色の淵のぬしは、

巨大な蟹なのだという。

真っ赤な蟹が水を守っているという伝説が残る。

ほんとにいるのではないかと思う。


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その蟹には会えなかったが、

美しい無数のトンボ、

チラホラと鮮やかな赤トンボが

水面ぎりぎりをスイスイすべっていた。


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蝉しぐれが激しく降ってくる。

多様な生物がうごめいている。

でも静謐な森。


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あらゆる造形がありながら

静かに調和する世界。


私が私の森で感じるように、

彼もまたここを訪れるたびに

新しいインスピレーションを得て、

創造につなげていくのだろうか。

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この神秘の池の淵に立っていると、

人間の考えることなんて、

ほんの一粒くらいのものなのかなと思えてくる。


深い緑の水底をどれだけ見つめていても

ちょっと先しかわからない。

” 神秘 ” という言葉は、神の秘密と書くのだなぁ。

私なんかにわかるわけがないのだな。

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帰り道、今度は一匹の蝶があらわれた。

見たこともないような、美しい瑠璃色の蝶々。

私たちをしばらく誘導してくれて、

ふっと闇に消えてしまった。

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