泉区生活支援ネットワーク

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障害のある子 学びやすく(「河北新報」より)

2016年01月03日 | 特別支援学校・特別支援教育
(「河北新報」平成28年1月3日(日)付け記事より引用)
4月から配慮義務付け
 障害を理由に進学を諦めていた子どもたちに今春、新たな扉が開きそうだ。障害者差別解消法が4月に施行され、国公立学校では、読み書きが困難な学習障害(LD)の子どもに代読での入試を認めることなど、求めに応じた「配慮」が義務になる。従来の教育スタイルで落ちこぼれがちだった子どもの学びを、情報通信技術(ICT)で支援する試みも始まった。

学習障害の大学生・伊井健悟さん 代読で受験,進学

 読み書きに時間
 奈良市にある帝塚山大の大教室。教授が乳児の発達について黒板にまとめると、最前列に座った心理学部1年の伊井健悟さん(19)=奈良県上牧町=は、講義内容を手元のパソコンに軽快なタッチで入力し始めた。

 学習障害(LD)のため、読み書きに非常に時間がかかる。「手書きだとすぐ疲れ、2行が限界」。他の学生のようにノートを取れない。大学はパソコン使用を障害への配慮として許可した。板書内容をプリントで渡してくれる教授もいる。
 選択外国語のハングルなど、障害に合った学習方法がまだ見つからない教科もあるが、「脳科学を研究したい」と大学院を目指す。障害を抱えながら進学を果たせたのは、配慮を求め学校と交渉してきた母久恵さん(49)の支えが大きかった。
 障害に気付いたのは小学4年生のころ。夜中まで勉強しても、10点満点の漢字テストが〇~2点だった。養護教諭の久恵さんは研修の際にLDを知り、専門医を訪ねた。診断で息子が抱える困難の理由を理解した。
 6年生の時には、1分間に平均30文字程度とされる漢字の書き写しが、4~6文字。
 「読めない、書けない。でも勉強ができないのとは違う」。感想文や日記は、ロ頭で話した内容を久恵さんが代筆した。担任は読みにくい問題は読み上げるなど協力的で、国語以外は100点を取れていた。

 「理解恵まれる」
 中学に入ると状況は一変した。国語や社会の定期試験で点数が1桁に。選択肢で解答する問題も、読むのに疲れて考えられなかった。書面で障害を説明して学校に理解を求め、別室で問題を読み上げてもらう「代読」で受験することになった。
 健悟さんは当初は「ずるみたいで嫌だ」と泣いて拒んだ。多感な時期で「障害を知った周囲の反応が怖かった」。だが点数は急上昇。友人には別室に行く理由をごまかしたまま、毎回マスク姿で試験に臨んだ。
 中学での実績を基に、県立高の入試でも代読が許可され合格した。担任の勧めで級友に障害を打ち明け、高校は定期試験で記述解答できるよう時間を延ばして対応した。
 代読と時間延長は、昨年の大学入試センター試験でも認められた。「配慮はセンター試験に準ずる」とした私立大を受験し帝塚山大に合格。「僕は障害を理解してくれる人に恵まれていた」
 大学や短大などでの障害のある人の在籍率は、2014年度でわずか0.44%。障害者差別解消法で進学の可能性は大きく広がる。「障害があ
ってもなくても、その子の学びやすさを一番に考える世の中になってほしい」。健悟さんの願いだ。

※学校での合理的配慮の具体例
☆資格情報の処理が苦手:
 →・黒板の周りは必要なものだけ掲示
  ・カーテンなどで隠す。
  ・掲示物は淡い色調を使う。
☆車いすを利用:
 →・段差にスロープを設置。
☆移動の困難:
 →教室をアクセスしやすい場所に変更
☆聴覚が過敏:
 →机や椅子の脚に緩衝材を付けて教室の雑音を減らす。
☆言葉だけで理解することが困難:
 →絵や写真カード,タブレット端末などで説明する。
☆読み書きの困難:
 →授業や試験でICT機器資料を許可,口頭試問で評価。
☆発達障害で人前での発表が困難:
 →リポートで代替,発表を録画したもので評価。
☆通常の入試を受けることが困難:
 →別室受検,時間延長,点字や拡大文字の問題を用意,音声読み上げ機能の使用を許可。

など。

タブレットノート代用 茨城・つくばで実証研究
 茨城県つくば市の小中一貫校、市立春日学園では昨年から、読み書きに困難がある児童に企業が情報通信技術(ICT)機器を貸し出し、学習への効果を確かめる実証研究が進行中だ。
 3年生の男児(9)は漢字の書き取りが極端に苦手で、ノートを取るのが難しい。社会科の授業ではタブレット端末で板書を撮影し、休み時間に先生と印刷してノートに貼り付けることにした。
 ノートを書くのは疲れるけど、これなら大丈夫」と男児。母親(45)は「この子にとってタブレットは文房具の一つ。受けられる教育の幅が広かった」と喜ぶ。
 日本マイクロソフトなど3社が機器の提供や教職員への研修に当たる。支援が必要な2~6年生が対象で、他の学校でもスムーズに導入できるよう、成果を事例集にまとめて公開する。
 特別支援教育コーディネーターの山口禎恵教諭は「同じような障害でも児童ごとにふさわしい支援方法は異なり、試行錯誤している。柔軟な対応が必要だ」と指摘する。
 また、東大先端科学技術研究センターは2007年度から、進学に必要な配慮を受けられるよう、障害のある高校生にICTを提供するプログラム「DO-IT Japan」を始めた。現在は、大学生以上や読み書きが困難な小中学生にも枠を広げて参加者を毎年募っている。

作家の乙武洋匡さんは以下のように述べている。
特別扱いとの違い理解を
 これまでは特別な配慮が必要な子どもへの対応は現場任せで、知識を持ち障害への理解がある先生と、勉強不足で理解がない先生とでは対応にばらつきがあった。法施行である程度適切な方向で対応が一律化されていくといいなと思っている。
 私は昨年4月から大学院に通っていて、受験の際には長い論文を書かなくてはならなかった。他の受験者は手書きだったが、パソコンで書いて提出する形に配慮してもらった。入学後の期末試験もほぼ同じ形式だ。15年以上前に大学に通ったときは全部手書きだったので、隔世の感がある。
 発達障害の子どもの中には、タブレット端末など情報通信技術(ICT)機器を使うと効率的に勉強でき、学習能力や意欲が高まる場合がある。でも学校で使おうとすると「前例がない」とか「特別扱いだ」という声が壁になってしまう。
 特別扱いとは全く違う。眼鏡をかけた子に「隣の席の子は眼鏡をかけていないのに、かけるなんて優遇だ。許さない」とは言わない。しっかり学習するために必要ならばICT機器も認めるべきだし、法律で使用は断れなくなるはずだ。

<参考までに>
教科指導におけるICT活用「MIYAGI Style(みやぎスタイル)」(宮城県HP)

障害者差別解消法福祉事業者向けガイドラインについて(宮城県)
 →障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン [PDFファイル/1.04MB]
 →ガイドライン掲載ホームページ(厚生労働省のページへジャンプします)

仙台市HP(「障害を理由とする差別の解消を推進するための条例のあり方」について仙台市障害者施策推進協議会から答申書が提出されました)(平成27年12月28日)
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