(「河北新報」令和元年5月13日付記事より引用)
仙台市宮城野区にある杜の伝言板ゆるるに「こんにちは!」と元気にあいさつしてパンの配達にやって来る青年がいます。同じ宮城野区にあるコッペというパン屋さんのスタッフです。「おいしいよ」「これは自分が作ったんだよ」と、さまざまな種類のパンとクッキーをお客さんに勧めています。
コッペは、NPO法人麦の会が運営する障害福祉事業所。2018年12月に30周年を迎えました。当初3人だったスタッフが今では20人を超え、活発に活動を続けています。
団体が目指すのは「障がい者が働く」ではなく、「たまたま障がい者も働いている」という職場。誰もが共に働けるようにと、障がいの有無にかかわらず、個性豊かなスタッフが通っています。
障がい者を巡っては近年、障害者総合支援法や雇用促進法などにより、自立して生活できるよう目指す環境の整備が進んできました。福祉作業所で働く障がい者の全国平均工賃も年々上がり、17年度には月額1万5603円になりました。とはいえ、自立して生活できるだけの工賃とは言えません。
これに対してコッペの同年平均工賃は月額5万1857円。全国より高い水準を保っていることに「みんなが自立できるように支援したい」という積極的な思いが表れています。
商品の売り上げから必要経費を差し引いたのが工賃で、作業の対価として支払われます。工賃を上げるには、市場開拓や商品PRなどによる売り上げアップが思い浮かびます。
13年に施行された障害者優先調達推進法は、公的機関に障害者就労施設などの受注の機会確保を求めています。就労する障がい者の自立促進が目的で、工賃を上げたいという作業所の追い風となりました。しかし、さまざまな障がいを持つスタッフが仕事量の増加に対応できるかどうかという懸念も残ります。
18年には中央省庁などの障害者雇用水増し問題という不祥事が発覚。障がい者の雇用促進という目的が宙に浮いていたことが浮き彫りになりました。
それでも、麦の会が活動を続けていけるのは、コッペで楽しそうに働くスタッフと商品を愛するお客さんがいるからです。
国産小麦を使った手作りの商品は「おいしい」と評判。自分の作ったパンやクッキーでうれしい言葉を聞けば、よりいっそう熱心に働けます。何より仕事が楽しくなります。
そんな姿を見ている近所の目は、いつの間にか、「障がい者」から「あのパン屋で働くスタッフ」に変わりました。
障がいを持った子どもたちが働く障がい者へと成長したように、サポートしてきた大人たちも年を重ねてきました。障がい者が自立して生活できるように、麦の会は次世代を育成しつつ、工賃アップと働きやすい環境づくりをこれからも追い求めていきます。
仙台市宮城野区にある杜の伝言板ゆるるに「こんにちは!」と元気にあいさつしてパンの配達にやって来る青年がいます。同じ宮城野区にあるコッペというパン屋さんのスタッフです。「おいしいよ」「これは自分が作ったんだよ」と、さまざまな種類のパンとクッキーをお客さんに勧めています。
コッペは、NPO法人麦の会が運営する障害福祉事業所。2018年12月に30周年を迎えました。当初3人だったスタッフが今では20人を超え、活発に活動を続けています。
団体が目指すのは「障がい者が働く」ではなく、「たまたま障がい者も働いている」という職場。誰もが共に働けるようにと、障がいの有無にかかわらず、個性豊かなスタッフが通っています。
障がい者を巡っては近年、障害者総合支援法や雇用促進法などにより、自立して生活できるよう目指す環境の整備が進んできました。福祉作業所で働く障がい者の全国平均工賃も年々上がり、17年度には月額1万5603円になりました。とはいえ、自立して生活できるだけの工賃とは言えません。
これに対してコッペの同年平均工賃は月額5万1857円。全国より高い水準を保っていることに「みんなが自立できるように支援したい」という積極的な思いが表れています。
商品の売り上げから必要経費を差し引いたのが工賃で、作業の対価として支払われます。工賃を上げるには、市場開拓や商品PRなどによる売り上げアップが思い浮かびます。
13年に施行された障害者優先調達推進法は、公的機関に障害者就労施設などの受注の機会確保を求めています。就労する障がい者の自立促進が目的で、工賃を上げたいという作業所の追い風となりました。しかし、さまざまな障がいを持つスタッフが仕事量の増加に対応できるかどうかという懸念も残ります。
18年には中央省庁などの障害者雇用水増し問題という不祥事が発覚。障がい者の雇用促進という目的が宙に浮いていたことが浮き彫りになりました。
それでも、麦の会が活動を続けていけるのは、コッペで楽しそうに働くスタッフと商品を愛するお客さんがいるからです。
国産小麦を使った手作りの商品は「おいしい」と評判。自分の作ったパンやクッキーでうれしい言葉を聞けば、よりいっそう熱心に働けます。何より仕事が楽しくなります。
そんな姿を見ている近所の目は、いつの間にか、「障がい者」から「あのパン屋で働くスタッフ」に変わりました。
障がいを持った子どもたちが働く障がい者へと成長したように、サポートしてきた大人たちも年を重ねてきました。障がい者が自立して生活できるように、麦の会は次世代を育成しつつ、工賃アップと働きやすい環境づくりをこれからも追い求めていきます。