(「河北新報」令和7年3月14日付記事より引用)
病気やけがで一定の障害がある人が受け取れる国の障害年金を巡り、支給を申請しても「障害が軽い」として不支給と判定されるケースが2024年以降、増えたとみられることが13日、共同通信のサンプル調査で分かった。複数の社会保険労務士の協力を得て、23年と24年で計2千件超の申請を集計した結果、精神・発達障害では24年の不支給割合が23年比で2倍に増えていた。
全ての障害種別でも1・6倍に増加。社労士からは「明らかに判定が厳しくなった。以前なら受け取れたはずの人に支給されなくなり、生活に影響が出ている」との声が上がっている。「判定が恣意的だ」との批判が以前からあるが、不支給が増えた理由は明らかにされていない。
障害年金の受給者は約236万人(23年3月末現在)。判定機関である日本年金機構は取材に対し「審査方法などは変更しておらず、基準に基づき適正に判定している」と回答した。判定結果などの統計は毎年9月に公表しているとして、不支給割合が増えているかどうかは答えなかった。
共同通信は今年1月、障害年金の申請代行を専門に扱う社労士5人にデータの提供を依頼。審査は年金機構本部が一元的に行っており、地域の違いは影響しないが福島、群馬、愛知、兵庫、大分の5県で1人ずつとした。
5人が23年1〜12月に扱った新規の支給申請は全体で1430件。うち不支給と判定されたのは2・9%だった。24年1〜7月では申請917件のうち4・7%となり、1・6倍に増えていた。
精神・発達障害に限ると、23年の不支給割合は2・2%だったが、24年は4・4%で2倍に増えた。一方、知的障害の不支給は23年がゼロで、24年も1件だけだった。
社労士が代行せずに一般の人が自分で申請しているケースを含めると、全体の不支給割合はもっと高いとみられる。
障害年金は年金機構の判定医が単独で書類審査を実施し、支給の可否を決める。身体障害は数値などで判定できるが、精神・発達障害は判定医の裁量で結果にばらつきが大きかったため、16年に年金機構が判定ガイドラインを導入した。
障害年金 病気やけがで障害があり、条件を満たせば現役世代でも受け取れる公的年金。障害基礎年金と障害厚生年金の2種類がある。障害の重い順に1〜3級に分かれ、支給額は基礎年金の1級で月約8万5千円、2級で約6万8千円。「基礎」の場合は3級と判定されると支給されない。年間の支給総額は約2兆2千億円(2022年度)。障害者手帳とは別の制度で、主治医に診断書を書いてもらい、他の書類とともに市区町村役場などで申請。日本年金機構の判定医が支給の可否や等級を審査する。