一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
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「郷土」意識にもいろいろありまして……。

2006-05-09 08:49:13 | Essay
前回(5月8日)の文章は、実は「くに」=「郷土」と考えているものが、どのような地理的範囲に及んでいるかを考えてみるためでした。

ここで「郷土」とは、取りあえず、ごく一般的に「先祖から住んでいる一定の土地」といった程度に理解しておいてください。

そう考えると、どうやら「郷土」=「藩」との意識が、まだ残っているらしいことが朧げながらに見えてくる。

一番鮮明に出てくる例としては、ちょっと古い話になりますが、1986年に会津若松市(福島県)が萩市(山口県)との友好都市提携申し入れを拒否したということがあります。
これは奥州戊辰戦争で、会津藩が長州藩と敵味方に分かれて戦ったからで、市民の間からは「未だ時期尚早である」「我々は恨みを忘れていない」との声があったとか(現在は、どうなんでしょう)。

一方で、先祖代々の江戸っ子ならともかく、首都圏に住んでいる人たちに、このような「郷土」意識というのは、ごく希薄なんじゃないかしら。
せいぜい、冗談半分で「ダサイタマ」「バカナガワ」と呼んだりする程度で、これは「郷土」意識に基づくものじゃないような気がする(何しろ「埼玉都民」や「神奈川都民」「千葉都民」が多いんだから、「郷土」意識の持ちようもないでしょう)。

これも「藩」意識に関連づけようとすれば、できないことはない(同様に「人口移動」に関連づけることもできるけれども、ここでは歴史的なアプローチで)。

首都圏のほとんどの地域が、「天領」(幕府直轄領)や「旗本領」あるいはどこかの藩の「飛地」だったから、統合の中心となる強力な「藩」というものがありませんでした。
ですから、現在の都道府県の区分というのも、実に人工的/便宜的なもの。

一番いい例が、旧三多摩地域です。

ここは、当初神奈川県だったけれども、首都東京の水源地確保という目的から東京府に所属換えになった。1893(明治26)年4月1日に施行されたのですから、百数十年前の出来事ということになります。

ちなみに、今でも東京都町田市にあるマクドナルドでは、東京都の他地域で発行されたクーポン券が使えないそうです(「町田市を除く東京都内のマクドナルドで有効」と書いてあるとのことですから、ご確認ください)。

まあ、ことほどさように、個々様々な事情を抱えている「郷土」を愛する心を養え、というのも、なかなか難しかろう、とのお話でした。