一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
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江戸時代の「くに」のイメージ

2006-05-11 08:05:11 | Essay
往来物「国尽女文章」

今日、よその土地を貶すには、「ダサイタマ」「バカナガワ」と都道府県名を使ってますよね。これが、江戸時代には「くに」(武蔵国、長門国、陸奥国など)の名称を使っていました。

それだけ、江戸時代の一般民衆の間には、「くに」の名まえが常識であったということですね。
寺子屋で使用された初歩教科書「往来物」にも、「国尽し」という地理的なテキストがあり、それだけ「くに」の名まえを知ることが、実生活の上からも必要だったのでしょう(そういえば、武士の「受領名」も「くに」の名まえだよね。吉良上総介義央、大岡越前守忠相など)。

したがって、今日の「エスニック・ジョーク」のような表現も川柳や狂歌、ことわざに出てくるのです。
これは、以上のような地理的常識に日常経験を加えて、極端に「くに」の特徴をあげつらったものです(今では、ほとんどが放送禁止用語らしいのですが)。

 相模下女いとし殿御が五六人
 頼まれれば越後から米つきにでも来る。
 近江泥棒、伊勢乞食

といった類ですな。
まあ、類型化された「くに」のイメージといってもいいのかもしれない。

えっ、意味が分からない?
ご自分で、どうぞお調べを。

でも、こういった表現は、ほとんどが江戸で生まれたんじゃあないかしら。
というのは、江戸っ子を貶めるような表現って、ほとんどないんだもの。

 江戸っ子は五月の鯉の吹き流し
 口先ばかりで はらわたはなし

なんて狂歌だって、貶しているようで、実際には、威勢の良さや、腹黒いところがないってことを言ってるんだものね。