一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
読んだ本の書評をお送りいたします。
活字中毒者のアナタのためのブログです。

休日の過ごし方――モンポウでも聴きながら……。

2006-03-21 12:29:59 | Essay
本日は「春分の日」という休日。
別を言い方をすれば、「お彼岸のお中日」です。

やっと天候もよくなり、うらうらと日が射してきたので、墓参りにも、ちょっとした外歩きにもよいのですが、休日には家でゆっくりしたい、という気分もある。
そこで、小生のCDラックから。こんな日にふさわしいアルバムを。

ゆっくりとしたい時には、大音響のオーケストラ曲よりも、ささやきかけるような室内楽曲やピアノ曲がいい。
というわけで、モンポウのピアノ曲をかけてみた。

タンゴは駄目だけれど、モンポウはなかなか聞かせるじゃないか、と思いながら熊本まりの演奏『歌と踊り』を聴いていました。この曲集のように、モンポウの初期の作品は、大仰なところがまったくなくシンプルで、なかなか休日には合っているのですね。

次に、同じモンポウでも目先を変えて、舘野泉の演奏を聴いてみることにしました。ご存知の方も多いと思いますが、病のため右手が不自由になったにもかかわらず、左手のためのピアノ曲をアルバムにまとめたり、左手のための楽曲を作曲家に委嘱(間宮芳生の作品を収録した『風のしるし』というCDあり)、演奏会を開催するなどして活躍なさっている方です(男性ピアニストです、念のため)。

するとどうでしょう、熊本まりとは、まったく別の音楽が流れてくるのです。まるで違う作曲家の作品のよう。曲は『内なる印象』といって、まだモンポウが10代後半から20代の初めにかけて作曲したものです。曲調という点では、『歌と踊り』よりも単純かもしれない。

その単純な楽曲を、一音一音いとおしむかのように大事に、大事に弾いている。熊本まりがぞんざいというわけではないのですが、彼女の演奏はすらすらと弾いているから、どうしても曲が流れていってしまって、心にひっかかりがない。これに対して、舘野泉の演奏は、音を大事にして弾いているから、単純な曲だけど深いものが感じられる。

その点、舘野泉の得意とするグリークの『叙情小曲集』に通じるところがある。
いやあ、いい演奏を聴きました。

参考 CD
Izumi Tateno
Mompou : Impresiones intimas
Faure : Nocturnes
(Canyon classics)