一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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ナショナリズムの応用問題 その15

2006-03-03 02:34:14 | Opinion
会沢正志斎 (1782 - 1863)

幕末の尊王攘夷思想に多大な影響を与えた「後期水戸学」(一種の日本的ナショナリズム)は、それまでのさまざま思想を取り込んで成立した。
その要素として挙げられるものには、朱子学や徂徠学、国学などがある。

ここでは、それぞれの要素を取り上げて、「後期水戸学」にどのような影響があったのかについて述べてみたい。

まずは、国学である。

一言で表せば、国学とは「『古事記』に帰れ」ということになる。
宣長は考えた。
「古代の文献(『古事記』)によって、儒教や仏教が日本に持ち込まれる以前の日本の独自の思考、日本の原理を明らかにしよう」(小川忠『原理主義とは何か』)と。
そして、「神典に解釈を加えるのは、漢国(中国)の悪習であり、そうした外国の悪風にそまって無批判にそれを受け入れてきた世間の学者たちの浅知恵であり、彼らはその愚かさに気づいてさえいない、自説は『神典のまま』であるがゆえに正しい」(小川、前掲書)と言う。

これによって、天皇支配の正統性は、「神典」にあるがゆえに疑いようもないということになる。
「わが御国は天照大御神の御国」(『石上私淑言』)であり「天照大御神は、その天をしろしめす御神にてましませば、宇宙のあひだにならぶものなく」(『玉くしげ』)万国に優越するとする。

ここに、「日本は神国であり、天照大神の神勅を受けた皇孫=天皇が、その地を統治する/すべきである」という「国体」観が、会沢正志斎などの後期水戸学に生まれる。