一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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今日のことば(62) ― 岡本太郎

2005-12-24 01:34:53 | Quotation
「『伝統』『伝統』と鬼の首でも取ったような気になっているこの言葉自体、トラディションの翻訳として明治後半に作られた新造語にすぎません。(中略)伝統という言葉が明治時代に作られたように、内容も明治官僚によって急ごしらえされた。圧倒的な西欧化に対抗するものとして、またその近代的体系に対応して。」
(『日本の伝統』)

岡本太郎(おかもと・たろう、1911 - 96)
洋画家、彫刻家。漫画家の岡本一平を父に、小説家の岡本かの子を母に生まれる。1927(昭和5)年パリに渡り、超現実主義に近づくとともに、パリ大学で哲学・心理学・民族学を学ぶ。1940(昭和15)年、パリ陥落にともない帰国。
戦後、国際的な芸術活動を行ない、1970(昭和45)年の大阪万国博に『太陽の塔』を制作した。
著書も多く、『今日の芸術』『日本再発見―芸術風土記』『沖縄文化論―忘れられた日本』などがある。

岡本の『伝統』に関する考え方には、「創られた伝統」の概念に近いものがある。
そして、実際の活動として、そのような「創られた伝統」ではなく、「縄文式文化のたくましい、魔術的、神秘的な力」を「伝統」として探り続けた。

そこには、岡本が、パリ大学で触れた構造主義文化人類学の影響もあるであろうし、
アヴァン・ギャルドやシュールレアリズムの芸術家として、「生命感」ある文化の独自性に共感したということもあるだろう。
それが縄文文化や沖縄文化の発見にもつながっている。

岡本と言うと「芸術は爆発だ!」が有名であるが、彼の原点になったのは、『今日の芸術』(1954)の次のことば。
「今日の芸術は、うまくあってはならない、きれいであってはならない、ここちよくあってはならない」

参考資料 岡本太郎『今日の芸術―時代を創造するものは誰か』(光文社)
     岡本太郎『日本の伝統』(光文社)