一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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今日のことば(61) ― 前田愛

2005-12-23 10:51:39 | Quotation
「文学テクストを構成している言語記号は、数学の記号のように、純粋な意味と読者とを媒介するものではない。それがあらわしているのは、読者と非現実の世界との界面である。界面としての言語記号が消失し、表象としての空間をつつみこむかたちで現出する非現実の世界のひろがりこそ、読書行為によって現働化されたテクスト空間のひろがりそのものなのである。」
(「空間のテクスト テクストの空間」)

前田愛(まえだ・あい、1932 - 87)
国文学者、評論家。本名は、愛(よしみ)。読者論・記号論などを通して、日本近代文学研究に新たな道を切り開いた。主著に『近代読者の成立』『成島柳北』『都市空間のなかの文学』などがある。

上記引用は、『都市空間のなかの文学』の一章から。
前田の問題意識は、同書「あとがき」にも表れている。
すなわち、
私の念頭から離れなかったのは、日本の近代文学を自我の発展史として鳥瞰するこれまでの文学史研究のパラダイムにたいする異議申し立てであった。それはテクストとしての都市をメタテクストないしはサブテクストとしての文学作品と対応させて行く操作によって、実態概念としての作者を関係概念の括弧に括ることを意味している。
ということである。

そのための方法論として、上記引用のような手続き(定義)が必要になってくる。
ただ、この文章は読者論的な側面からの言説であるため、より詳しく「実態概念としての作者を関係概念の括弧に括る」方法を知りたい方は、実際に同書に当られたい。

参考資料 前田愛『都市空間のなかの文学』(筑摩書房)