一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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今日のことば(43) ―― C. ツックマイヤー

2005-12-02 00:03:14 | Quotation
「この都市はあくことのない貪欲でいろいろの才能と人間のエネルギーをむさぼり食い、嵐のような力で、ほんものとにせものの別なく、あらゆる才能をのみ込んでしまう。(中略)批評も苛烈で画一主義には反対であったが、質を求める上で公平であり、質のすばらしさには大いによろこんだ。ベルリンは未来の味がした。」

C. ツックマイヤー(Carl Zuckmayer, 1896 - 1977)
ドイツの劇作家。第一次世界大戦に従軍後、ハイデルベルクで自然科学を学ぶ。表現主義の影響を受け、戯曲『十字路』を1920年に発表。以後、演劇活動に入り、M.ラインハルトのドイツ劇場にも参加。1926年からオーストリアのザルツブルクに住むが、1938年、ナチスのオーストリア合邦(Anschuluss) 後、アメリカに亡命。戦後はヨーロッパに戻り、晩年までスイスに住んだ。

上記引用は、戦間期、1920年代のベルリンについて述べた一節。
〈ヴァイマール文化〉を代表する都市となったベルリンである。
「つい先頃までのベルリンは、政治・経済上のドイツの中心ではあっても、誰もが認める〈ドイツの文化的首都〉ではなかった。そのベルリンがついに〈文化的首都〉の地位を不動のものにした」(脇『知識人と政治』)
のである。

今、K. ヴァイルの楽曲をテレサ・ストラータスが歌うアルバム "Stratas Sings Weill" を聴いている。
このような歌を耳にすると、頽廃と洗練、狂熱と沈思が交錯する戦間期の雰囲気を感じ取ることができる。
「二十年代は今日、若者たちにとってロマンティクな時代である。ただし、このロマン主義の最後の自由な森の歌を彼らのために奏でたのは、森のホルンではなく、サキソフォンだった」(B. E. ヴェルナー)

今日、われわれが「自由な森の歌」と思っているものは、「死の舞踏」ではないと誰が断言できるのか?

参考資料 ピーター・ゲイ著、亀嶋庸一訳『ワイマール文化』(みすず書房)