今野敏さんの作品は初めて読みましたが、警察小説としてだけでなく、家族問題を描いた小説としても読みごたえのある内容でした。
私は横山秀夫さんの警察小説のファンですが、クセがないという意味では、こちらの方がずっと読みやすいんじゃないでしょうか。
その分、少しベタな感じはしますが、TVの2時間ドラマ化すればピッタリって印象です。
主人公は、警視庁強行犯係・樋口顕。
とてもいい雰囲気を出していますが、この物語の主演は警視庁の捜査二課、島崎刑事。
銀行の粉飾決算の捜査にはじまり、殺人事件に発展するのですが、推理的な側面もありながら事件に絡む島崎父子のかかわりをメインにして、世代間の隔たりと現代の親子の問題を浮き彫りにしています。同じく樋口刑事の家族の話もあわさって家族小説的な面も強く出ています。
真犯人を終盤途中で読者にわからせることによって、勘違いをしている島崎刑事のきにハラハラ・ドキドキ感をもたせ、まさに間一髪って演出になっているところが、TVドラマ向きかなって感じるところです。
ビートは、この作品で刑事の次男がやっているダンスから取ったタイトルですが、作品中のそのダンスの描写も丁寧によく書かれています。
この作品の中で主人公が語ることばで、なるほどその通りと思うくだりがあったのでそのまま引用すると
「若者の好奇心だけに任せていては、世の中は収まりがつかなくなる。事実、現実の世の中はそうなりつつある。すべてが、若者の欲求の方向に動いているように思える。大人たちは若者の文化に媚を売る。なぜなら、それが経済効果を生むからだ。日本の社会というのは、教育より経済効果が優先なのだ。」
うーん、なんとか収まりがつくようにしなければいけませんね。