楡周平さんの経済小説？です。
楡さんの作品を読んだのは「フェイク」以来ですが、もともと作風の幅広い作家ではありますが、この内容が特に著者の専門分野でないとすると非常によく調べられていると感じました。
運送会社で左遷人事で新規事業開発部長となった主人公が会社の命運を賭ける新しいシステムの導入を紆余曲折を経ながら実現するストーリー。
この主人公の勤務するスバル運送というのが、体力勝負で高給を取るセールスドライバー制度があるので、すぐに佐川急便を連想しますし、ストーリーに出てくるカタログで文具通販大手のプロンプトは、ちょうどアスクルそのものです。
そしてシステム導入にかかわるプロモーションにも単にネットではなく、価格ランキングサイトを利用したり、口コミやステルスマーケティングを使うなど、さらに収集した顧客にはターゲットに的確にヒットする効率の良いセグメントDMを出す等々、実際に成功したビジネスモデルを題材にしていないなら、このままやってみたらどうかと思えるぐらい、隙の無い内容になっていて関心しながら読めます。
元銀行員作家の書く金融小説、元警察官作家の書く警察小説のように専門分野でもないのに矛盾を感じずに読める小説っていうのは、やはり非常にしっかりした取材と調査をして書かれているからなんでしょうね。