のんびりかな打ち日記  ini's blog

NikonD7100やSonyRX100M3で撮影した画像と日々の出来事を“ かな入力 ”でのんびり綴るブログです。

やるせない

2008-05-17 21:47:49 | Weblog
一昨日のこと、いつものように朝のラッシュに総武横須賀線の快速に乗り、錦糸町で総武線の各駅停車に乗り換えました。
当然の如く混んでいるので入り口の脇あたりに立ちましたが、ちょうど車両の前方の入り口でしたので3人がけの優先座席の横でした。

車内はギュウギュウ詰めではありませんが、結構な混み具合でした。
その私の横、ちょうど優先座席の前あたりに背の低い60才ぐらいの初老の女性が立っていることは認識していたのですが、なんと突然その女性が、「なんで代わってくれないの・・・」と絞り出すような叫び声を出して泣き出しました。

優先座席に座っていた会社員と思われる3人がまさに飛び上がるようにあわてて席を立ちましたが、そのときに気がついたのですが、この女性は短い杖をついていましたし、顔も3分の1が隠れるぐらい大きな絆創膏を貼ってとても痛々しい感じでした。そして空いた席に痛みをこらえるようにゆっくり座りながら、「どうして・・・ひどい人達ばかり」と泣きながらつぶやいていました。
座席の周囲はとても気まずい空気が流れ、空いた3つの優先座席にはその女性以外は誰も座らず、空いたままでした。私は次の駅で降りましたが、とてもやるせない思いでした。

身体をほんの少し動かすこともままならない朝のラッシュ時の車内では、席の区別なく、空いたらその前に立っているいる人が、全体の込み具合を緩和するためにもとりあえず座るのが暗黙の了解のようになってます。
そんな毎日を過ごしているうちに「人として」の基本すら忘れてしまっていたように思えます。

驚いて席を立った3人の男女の会社員も、ウトウト寝ていたか、うつむいて本を読んでいたか、考え事をしていたのか、とにかくごく普通の会社員風の方々で決して非常識な(見て見ぬ振りをしていたような)人たちには、見えませんでした。

その杖の女性が各駅停車で何駅、優先座席の前に立っていたのかは、わかりませんが、座っていた彼らには、おそらく目の前に立っているにもかかわらず、この女性が物理的ではなく、ただ“見えなかった”のだと思います。
朝の通勤ラッシュの中には、ありえない姿との思い込みがあったのではないでしょうか。
実際、私が降りる間際にみた、その会社員風の女性の一人は、ハンカチを口元にあて目を真っ赤にしていました。
気がつかなかったことをとても悔やんでいるかのようでした。

杖の女性が先に一言「代わってもらえませんか?」と声をかければ、すぐに代わる人達だったと思います。
でも本来、声などかけなくても、常識的に見てすぐにわかるハズのことなのに、そんなこともできなくなっている。
もし座っていたのが私であっても同じように“見えなかった”かも知れません。
やるせない気持ちにはなりましたが、たとえどんな状態であってもやっぱり麻痺させてはならないことがあるってことを意識した出来事でした。