地球族日記

ものかきサーファー浅倉彩の日記

プロローグ

2008年04月29日 | 梅月荘の思い出
映画「In Gods Hands」のラストシーン。
マウイ島の大波JAWSに散った親友を想って、
主人公がある質問をする。
「一緒にいるだけで心底笑いが絶えない。そんな仲間がいるか?」
列車の席で隣り合わせ、
質問を向けられた女性は、少し顔を曇らせながら首を横に振る。

「そうか。それは残念だ。僕にはいる」

私にも、いる。

鎌倉と呼ばれる古都。
都心まで1時間ということもあって、
休日には観光客が歩道をうめ、
次々と建てられるマンションが憧れの”湘南ライフ”を求める人々を呼び寄せる。

そんな中心部を横目にバスに揺られて、
海が見えるあの角を曲がり、
でこぼこ道を進んだその先に、梅月荘という今にも崩れそうな木造アパートがあった。

大学生だった私は毎週、
金曜日の夜にリュックに海道具をつめこんで、
101号室のカギがかかった試しのないドアを、ワクワクしながら開けていた。

これから始まる週末に、起こるすべてに期待して。

そんな日々のことを、小さなことから書こうと思う。
もう多くのことを忘れてしまった。
忘れるということに、ありがたみを感じるくらいに大人にもなった。
だから思い出した。
”あの頃”の輝きは、なんでもない星の数ほどのきらきらした瞬間が
時間とともにとけあってできた結晶。
結晶を眺めてうっとりするのもいいけれど、
忘れてしまうには惜しすぎる愛しい瞬間を
少しでも書き留めておきたい。やっぱり。

ウィンドサーフィン、正しくはヨットのimcoクラスでのコースレーシング競技に
夢中になっていた日々は、きっとずっと、
心の奥の宝箱に大切にしまわれ続ける。
そして時折、何かの拍子で記憶の海から浮かんできては、
私を幸福感と少しの喪失感で包みこむ。

その先の人生を、海から続く道をもうとっくに歩いている私の、原点。








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