学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

コレクションの構築

2018-10-16 20:58:31 | 仕事
美術館の重要な仕事のひとつにコレクションの構築、すなわち、作品の収集活動が挙げられます。収集方法は3つ。購入、寄贈、寄託です。そのうち、今日は購入のおはなし。

美術館が作品を購入するためには、もちろん予算が必要です。ところが、今日の美術館を取り巻く状況は厳しく、毎年の購入予算がついていない美術館もちらほらと話を聞きます。そんななか、埼玉県立近代美術館がシニャク、山梨県立美術館がミレーを購入したとの新聞記事を見ました。どちらも億単位。このご時世のなか、しっかり美術館としてコレクションを構築する姿勢にとても励まされます。

よく、絵1点にこれだけ税金をかけて…との声がありますが、実は結構県民や市民にメリットがあったりするわけで。美術館に世界を代表する作家の作品が収蔵されることは、それだけで美術館コレクションの充実が図られるわけですが、他の美術館から、特に海外の美術館から作品を借用するときにその作品が交渉のカードとして使えるということ。さらに、その作品があれば美術館の本体の入館者数の増加にプラスして、美術館を訪れた人を別の観光地に誘客できるというわけ。山梨県立美術館でいえば、美術館を見たあとにワイナリーを見学しようとか、とても素敵なコースができる。結果、県の観光客の増加、すなわち、行政から見ても、いわゆる地域創生につながるのです。

私の勤務する美術館も、ありがたいことに作品の購入費はついており、毎年いくつかの作品を買うことができています。億単位、までは到底いきませんが、定期的に新しく収蔵した作品のお披露目展を開催しています。観光客の増加まではつながらなくても、これからも美術館としてコツコツとコレクションを構築していきたいものです。
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過去の図録

2018-10-15 22:16:43 | 仕事
おおよそ、どの美術館でも企画展を開催すると、図録を制作して販売します。図録とは、一般のお客様にとって、展覧会を見た記念として、あるいは家でゆっくりと図版を見たいときに購入されるものでしょう。一方、学芸員にとっては、企画展を担当された学芸員の文章が読めるのと、どんな作品が展示されたのか(または、どこから借用されたものなのか)を図版で追えるので、とても勉強になりますし、のちの調査にとって欠かすことのできないものです。

学芸員は企画展を立ち上げる前段階として、作品や資料の現物にあたるとともに、過去の図録をたどって調査を進めていくわけです。が、過去の図録というのはなかなかどうして手に入りにくい。というのも一般の書店で扱っているものではないためです(まれに出版社と共同で刊行する図録もあります)。そこで頼みの綱が図書館。無料で見られますし、時間をかけて調べられる。けれど、どうしても個人的に手元へ置いておきたい図録もあるもの。その場合には、当然のことながら購入となります。私は主に「日本の古本屋」サイト、またはアマゾンで追っていきます。便利な時代になったものですね。それで大抵が手に入りますが、図録にもプレミアムのような値段が付いているものがあって、これがなかなか個人の財布にはつらい。以前、購入したもので最も高かったのは7,000円。これは自分への投資と思って、納得させるしかなかった(笑)また、図録を格安で買うなら、ブックオフ。ただし、買いたいと思う図録が必ずしも店頭に並んでいるわけではないので、これは偶然の出会いに期待するしかない。

と、図録について書いてきたわけだけれど、ときどきショックなことがあります。それは自分が担当した図録が古書店で売られているのを見かけたとき。本だから色々な事情で古書になる、それはわかっているけれども、汗水流して作った図録が持ち主の用をなさなくなって古書になったと想像すると、ちょっぴり悲しかったりするのです。仕方のないことですけれどもね。これからもしっかり気持ちを込めて、図録を作っていきたいと思います。
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肩がこる

2018-10-14 20:31:58 | その他
近頃、やたらと肩こりがひどい…。理由は単純。デスクワークが多いから。最近は1日の70パーセントは机に向かっているような気がします。パソコン事務、資料の調べもの、電話応対…改めてこう書くと、確かに机に座ってばかり。気のついた時に、ストレッチはするものの、あまり効果はないのかも。

職場ではできないので、昨夜から、家でストレッチをしています。ストレッチって…体が熱くなりますね。ポカポカして気持ちがいいです。それだけ、私の体が凝り固まっていたということかな。

私は肩こりから頭痛が起きやすいので、要注意!!定期的に体のメンテナンスを欠かさないようにしたいです。と、それと、デスクワークもなるべく減らすようにしていかねば!
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ハゲタカ

2018-10-13 20:42:37 | 読書感想
タイトルのハゲタカは、鳥のハゲタカではなくて、小説のハゲタカのこと。先月まで、綾野剛さん主演で、小説を元にしたドラマ「ハゲタカ」をやっていましたが、とても面白いドラマでした。原作は真山仁さんの著作。ドラマに影響を受けて、数冊読みましたが、原作も楽しくて、あっという間に読み終わりました。

バブルがはじけて、日本経済が苦境に陥った時に、日本企業を安値で買い漁る外資系ファンドの鷲津と、それに対抗?する銀行員の芝野が繰り広げるストーリーです。企業を巡る駆け引き、私とはまったく縁遠い世界ですが、それだけに興味が惹かれるところです。

バブル期は美術品が投機の目的でずいぶん買われたようです。古書市に行くと、美術品の売り時買い時のような古い本をときどき見かけることがあります。今はこういう本は刊行されませんから、やはり時代の中から生まれたのでしょう。投機目的で美術品を売り買いして、実際にどれだけ儲けられたのでしょうか…。

私自身もいくつか作品を持っていますが、いずれも自分が気に入ったもので、部屋に置いていつまでも見ておきたいものです。金銭的な価値はそれとして、自分の心との対話できるような美術との接し方がやはりいいような気がしますね。
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人気美術館ランキング

2018-10-12 21:14:16 | その他
今日、niftyが集計した年代別人気美術館ランキングがネット上に発表されていたので、興味深く眺めていました。だいたい、どの年代別を見ても、上位に来るのは国立新美術館と国立西洋美術館。さすがに国立は手堅い感じですね。若い世代では金沢21世紀美術館が入っていました。地方の美術館がランクインしたのは嬉しいですね!金沢21世紀美術館は、美術館の活動もさることながら、金沢という街の立地も関係しそうですね。

そもそも人気のある美術館って、お客様はどこに魅力を感じていらっしゃるのでしょう?展覧会、接客、美術館グッズ、カフェ、立地…、そうした総合的な評価なのでしょうね。ただ、そうしたところで、評価されると、どうしても地方の美術館は不利だなあという気がするのです。

ちなみに私が行ったことのある個人的な美術館ランキングを作るとしたら、下記の美術館を推薦したいですね。

岩手県立美術館
水戸芸術館
金沢21世紀美術館

この3館は、展覧会の企画も斬新で面白いですし、地域密着型で地元に根ざした普及活動を長年継続して実施しています。美術館グッズも充実していますしね♪ いずれも素敵な美術館です。

私が知らないだけで、このような活動をしている地方の美術館はもっともっとあるはず。地方の美術館に目が向いてくれるといいな、と思いました。
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永谷園のお茶漬け

2018-10-11 18:56:33 | その他
先日、スーパーに行ったら、永谷園のお茶漬けが売っていて、パッケージに東海道五拾三次のカード復刻とあったので、早速買ってみました。東海道五拾三次は歌川広重の風景版画ですね。私が当てたのは、二川猿ヶ馬場。小さいカードながら、印刷のクオリティもなかなかで、満足のカードでした。

さて、これは私の個人的な希望なのですが、もし、永谷園さんに要望を聞いていただけるのなら、ぜひ月岡芳年の月百姿シリーズをカードにしていただけないかなあと。月岡芳年は明治の浮世絵師で、確かな遠近法やリアルな表現を取り入れた、この月百姿シリーズは、カッコいいモチーフが多くて、特に《信仰の三日月 幸盛》なんて、とにかくしびれる(笑)私なら絶対買ってしまいます。

というわけで、しばらく、我が家の朝ごはんはお茶漬けが続きそう♪
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新しい展覧会が立ち上がり

2018-10-10 19:56:55 | 仕事
すっかり、季節は秋めいてきました。秋といえば、芸術の秋。私の勤務する美術館でも、先日新しい展覧会が立ち上がりました。

私が企画した展覧会で、自分ではベストを尽くした展覧会ではあるのだけれど、どうしても気になるのはお客様の反応。通常はアルバイトさんにお願いしている作品の監視を交代してもらい、1時間程度ですが、作品解説も兼ねながら作品の監視をしました。

そこで感じたのは、通常の展覧会よりもゆっくり作品を見ていらっしゃるお客様が多いということ。実は今回、作品解説のキャプションを多めに配置してみました。このキャプションを書くときに意識したのは、簡単に言ってしまうと、この作品はここがすごいんですよ、という見どころをわかりやすく、かつ短文で表記したこと。キャプションは長すぎるとお客様が疲れてしまうので、シンプルにして、かつ量を多くしてみたのです。ちょっと矛盾するかもですね。ただ、キャプションを手掛かりにじっくり作品を見ていらっしゃるお客様が多くて、私としてはうれしい限りです。

当然のことながら、展覧会は学芸員の自己表現などではなく、お客様にご覧いただくために開かれるもの。作品の配置、キャプションやパネルの文字の大きさなど、お客様の目線を常に意識して展示されるべきものです。これは本からは学べないことで、私は現場(展示室)に積極的に足を運んだり、他の美術館の展示などを見るようにして、展示方法を学ぶようにしています。勉強に終わりはなし。まずは展覧会が立ち上がり、ほっとしたところです。
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