学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ハウフ『盗賊の森の一夜』2

2018-10-22 19:28:50 | 読書感想
みなさんは、どこで読書を楽しんでいますか? 私の場合、もっぱら我が家の寝室やリビングです。ただ、ちょっとした憧れがあって、それはカフェで読書を楽しむこと。好きな飲みものを横に置いて、本の世界に入っていけるなんて、きっと幸せだろうなあ、といつも思っていたのでした。それで、実は今日初めてそれをやってみることにしました。何ごとも挑戦です。そんな大げさなものではないけれど。

私は近くのカフェに立ち寄り、アイスコーヒー(デ・カフェ)を注文。贅沢なソファにゆっくり腰をかける。この時点で幸せでした(笑)カフェに持ち込んだ本は『盗賊の森の一夜』。続きが気になっていましたからね。

「冷たい心臓」というメルヒェン。主人公のペーターは、炭焼き、という自分の仕事が気に入らず、金持ちになりたくて仕方がない。それも楽をして。そんなとき、森の小人(妖精)の話を思い出します。紆余曲折を経て、深い森のなかでとうとう小人を呼び寄せることに成功。そしてかなえてもらった3つの願い。どれもあさましい願いごとでした。

「うぬぼれはつまづきのもとだぞ」

こんな小人の言葉を無視して遊びほうけるペーター。結末は…お察しのとおりです。

最初に読んだ「鹿の銀貨」と比べると、話にアップダウンがあって、面白い話です。また、森の小人の服装が美しい色ガラスで彩られている描写は、これぞメルヒェン!! 気になるのは…実はこれが「冷たい心臓 その1」ということ。この続き、読みたい!!

と、気づくと、私はまったくコーヒーを飲んでおらず、本に夢中になっていたことに気づきました。何のためにカフェに来たのやら。いけない、いけない。私、本に夢中になるともうその世界にまっすぐ飛び込んでしまうことを忘れていました。うーん、次は大丈夫かなあ。そんな私のカフェデビューでした。


・『メルヒェン集 盗賊の森の一夜』ハウフ作、池田香代子訳、岩波書店、1998年

津島佑子『鳥の涙』

2018-10-22 10:43:27 | 読書感想
昔ばなしは、読むよりも聞いたほうが印象に残る。私自身、子どものころ、ふとんのなかで祖母や母が話してくれる昔ばなしに心が踊らされたものでした。桃太郎、金太郎、浦島太郎…、こうした話は、本で読んだ、というよりも、祖母や母が話してくれたもので、家族との思い出のひとつとして記憶に残っています。

津島佑子さんの『鳥の涙』は、アイヌの民話(伝承)を元に展開していく短編小説です。強制労働に駆り立てられた父が、首のない鳥として舞い戻ってくる、その民話を祖母、母、私の三世代にわたって語り継がれていくというもの。語り継ぐ、といっても、世代ごとに民話に寄せる想いは異なり、首のない鳥のイメージとして、祖母は事故死した夫、母は疾走した夫、そして「私」は幼くして死んだ弟を想起させる仕立てになっています。ひとつの民話から、これだけ重厚な小説が書けるのだと、その手法に驚かされます。また、首のない鳥を弟と見立て、その翼からあふれる涙が「私」の体を濡らしていく場面は視覚として現代美術を見ているような感覚を覚えます。

日本文学全集で選者を務めた池澤夏樹さんは「このまま長編小説になりそう」と述べていますが、私も同感です。たしか村上春樹さんが、自分の小説の位置づけとして、短編小説は長編小説となるための実験的な場である、というようなことを書いていた気がしますが、『鳥の涙』はまさにそんな雰囲気を持った小説です。短編小説、奥が深い!


・津島佑子『鳥の涙』日本文学全集28 近現代作家集Ⅲ 河出書房新社 2017年 収録(『鳥の涙』の原本は1999年刊)

散歩で朝日を浴びる

2018-10-22 08:45:44 | その他
昨日に引き続き、今朝も天気がよい。天気のよい朝は散歩をするのに限る。太陽の光が暖かいし、秋のやや冷たい風は心地よいし、鳥のさえずり、虫の音に心が癒される。朝の散歩は脳の働きにもよいと聞く。

今年の私は、立場がやや上になって、中間管理職のような仕事をするようになった。これまで通り、自分だけの仕事に専念するというわけにはいかない。美術館全体としてどうしたらいいのか、ということも今まで以上に考える必要が出てきた。もともと要領の良くない私、そこに新しい立場の仕事が来る。そうするとどうしても元気が足りなくなってくる。以前、自律神経を悪くしたので、それが再発しないか、なおさら心配がつのる。

ストレスを上手に解消する方法として、私は散歩をこよなく愛する。自然のなかに自分が溶けてゆくような気がするから。積もる仕事も、なんだか大したことがないような気がしてくる。散歩のコツは、ゆっくり歩くこと、何も考えずに無心で歩くこと、コースを適度に変えること、この3つに尽きる。それだけでストレスが消えてゆくなんて、なんて贅沢な時間なのだ。

と、私は今日も休日の散歩に行く。さあ、今日もよい1日になりますように!