学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

泉鏡花『夜叉ヶ池』

2009-11-02 15:33:43 | 読書感想
せっかくの休みだというのに、外は大雨で、しかもすこぶる寒い。こんな日には、温かい部屋の中で読書に限ります(笑)

『夜叉ヶ池』は泉鏡花(1873~1939)の戯曲。舞台は越前国(福井県)、鐘楼を守る萩原晃は妻の百合と2人暮し。萩原は夜叉ヶ池の竜が暴れるのを防ぐため、一日に鐘を3回つかなければならなかったのです。もし鐘をつかなければ、一帯は大洪水になる。ところが、日照りが続いて水不足に悩まされた村人たちは暴徒と化し、鐘をつくのをやめるよう萩原夫妻へ迫ります。そして…。


「水は、美しい。何時見ても、美しいな…。」

萩原の最初に発する台詞。そう『夜叉ヶ池』は「水」がテーマなわけですが、この台詞に全てが集約されると言ってもいいでしょう。何気ない言葉ですが、それがとても綺麗な感じがしますね。

日常から非日常へ、が泉鏡花の小説。そこでふと頭に浮かぶのがドイツ浪漫派の作家ホフマン。彼の場合はおどろおどろしいものではありませんが、「日常から非日常へ」読者をいざなう手法は近いものがあります。もしかしたら泉鏡花はホフマンの小説を読んでいたのかしらん?などと想像が膨らみました。


読み終えて、外を見やると、相変わらずの大雨。現実、雨、水、『夜叉ヶ池』。もしかして、つながったでしょうか(笑)

●泉鏡花『夜叉ヶ池・天守物語』 1984年 岩波文庫
コメント
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