学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

コレット『青い麦』

2009-11-16 18:50:38 | 読書感想
シドニー=ガブリエル・コレット(1873~1954)は、フランスの作家。『青い麦』は、彼女が50歳のときに出版した小説です。

夏のブルターニュ海岸を舞台とした16歳のフィリップと15歳のヴァンカの物語。幼馴染の2人は、お互い意識し合いながらも、恋にはちょっと不器用。ある日、フィリップは、ある夫人の怪しい魅力に誘惑されて関係を持ってしまいます。それから夫人の家へ通うようになりますが、ヴァンカには知られたくないため、何でもないように振舞うフィリップ。ヴァンカは何も知るまい、そう鷹をくくっていたのもつかの間…。

物語全体の流れとして、当初はフィリップの強さが随分出ていますが、夫人と関係を持った辺りから、次第にヴァンカの強さ(女性の強さといってもいいかもしれません)が前面に出てきて、フィリップが圧倒されていくような印象です。フィリップがどう動いても、結局はヴァンカの手のひらから出られないような…怖い話だなあと(笑)『青い麦』は青春小説とされますが、ただのロマンチックな話ではありません。登場人物の心理描写、特に若いがゆえの移ろいやすい心を恋愛を通して緻密に書いています。

私はあまり知らなかったのですが、近年コレットの評価がどんどん上がってきているとか。ある評論家によれば、20世紀のフランス小説はプルーストとコレットに尽きると言っても過言ではないそうです。コレットの代表作は『シェリ』。機会があれば、いつか読んで見たいなと思います。

●コレット『青い麦』 手塚伸一訳 集英社文庫 1991年