学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

サントリー美術館「清方ノスタルジア」展

2009-11-18 21:38:02 | 展覧会感想
吐息が見えるほど寒かったのですが、雲から日がのぞいたので東京へ行ってきました。予定通り3つの展覧会を見てきましたが、やはり疲れました。疲れると自然とまぶたが重くなります。私は眼をこすりながら、文章を書いている次第です(笑)

まず、サントリー美術館で開催されている「清方ノスタルジア―名品でたどる鏑木清方の美の世界」展を見てきました。今日が初日なんですね。鏑木清方(かぶらききよかた)は、明治から昭和にかけて活躍した日本画家です。元々は新聞の挿絵や着物の図案を描いて生計を立てていましたが、次第に日本画へ移行していきます。

この展覧会では、清方のホームグランドが日本古典文学と浮世絵(木版、肉筆)であったことがよくわかる内容になっています。それらに着想を得て、自分なりに消化していたのですね。清方の描く女性は、華のある着物を身にまとい、しなやかで艶があります。何気ない生活のなかにある女性の姿を捉えている、理想化されたフォルムに感嘆しました。

また、清方の仕掛けがとても面白い。《嫁ぐ人》は花嫁になる女性をみんなでお祝いする図ですが、花嫁の左薬指を見ると、結婚指輪が隠れていて、ちょっとだけ見えるだけなんですね。どんな指輪なのかは見る人にゆだねられるわけです。また、《一葉》は小説家樋口一葉の肖像。周りの道具から針仕事をしていることがわかるのですが、一葉の指に注目するとちょっとだけ赤い。これは一葉が慣れない家事をして生計を立てていた、ということを示すもの。清方は一葉の小説を読むだけでなく、きっと彼女の歩んだ人生についても取材していたんでしょうね。このほかにも、女性の後姿だけを描き、見る人に女性の表情を自由に想像してもらう遊び、あるいは虫を描かずに虫の存在感を出す工夫など、ちょっとしたことなんですが、非常に一点一点が練られて制作されていることがわかります。

とても面白い展覧会です。来年1月11日までの期間ですので、ぜひご覧下さい!


コメント
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