気軽に茶道をしてます。

日々のお稽古とともに、できるだけ手作りのお菓子で
お茶を楽しんでいる様子や、四季折々の変化もお伝えします。

大和文華館・特別企画展「新春を迎えて―梅と桜の美術」へ

2020-02-13 12:11:50 | 大和文華館
立春も過ぎ、如月もはや半分近くなりましたが、中国発の新型コロナウイルス
インバウンド客の激減で、賑わっていた観光地は軒並み、閑古鳥が。
奈良も例外ではなく、鹿せんべいをもらえず、鹿はうろうろと・・・




奈良では明日14日迄冬の夜を彩る『しあわせ回廊 なら瑠璃絵』が開催中で、
幻想的な瑠璃色の光の道と、ライトアップされた春日大社、東大寺、興福寺も。
さらに奈良の春を告げる東大寺二月堂修二会(お水取り)、2月16日には修二会を
勤める練行衆11名が発表され、2月20日より戒壇院別火坊で前行の別火は始まり
そして3月1日から14日の二七ヶ日夜、二月堂での本行が勤められ、二月堂はお松明
の火の粉で包まれます。

暖冬で見頃を迎えた梅の花と香りに誘われて、


大和文華館の特別企画展 『新春を迎えて―
梅と桜の美術―』へ、でも16日までで、午後のお稽古終わりで大慌て。


梅は高潔な人物の象徴、桜は春爛漫の華やかな季節を象徴する花、各々の花で
デザインされた三十七作品、国宝、重要文化財と重要美術品、各々一点、
特別出陳として春日大社「吉野図屏風」と個人蔵「東山名所図屏風」加わる。
展示室に入ると
左側「梅雀図六角筥」 平福百穂筆 昭和時代
中央「寝覚物語絵巻」 平安後期 
寝覚物語絵巻・春

左側「螺鈿蒔絵梅文合子」尾形光琳・乾山合作、原羊遊斎模造 江戸後期
螺鈿蒔絵梅文合子

【梅を愛でる―清澄と高潔―】
「松梅佳処図」室町時代


「花鳥図屏風」雪村周継筆 室町時代 六曲一双 重要文化財


「四君子図」山本梅逸筆 江戸時代天保十年(1839)
「寒月照梅華図」富岡鉄斎 明治44年(1911)
寒月照梅華図

「織部梅文皿」桃山―江戸時代
「色絵梅文大壺」江戸時代
「色絵松竹梅文大壺」江戸時代
色絵松竹梅文大壺

【桜を愛でる―清浄と華麗―】
「春日宮曼荼羅」南北朝時代
「源氏物語図帖」伝土佐光吉筆 江戸時代
「源氏物語図屏風」伝岩佐又兵衛筆 江戸時代
「花卉図扇面」江戸時代
「親鸞聖人剃髪図」田能村竹田筆 江戸後期・天保4年(1833)重要美術品
親鸞聖人9歳の春、慈円のもとで桜の和歌を詠み、出家を願う場面が描かれる
親鸞聖人剃髪図

「蒔絵枝垂桜柳文棗」嵯峨棗 江戸時代
「色絵桜文徳利」有田(古九谷様式) 江戸時代

一足早い春爛漫の世界を堪能させてくれますよ。

大和文華館「聖域の美―中世寺社境内の風景」展へ

2019-10-27 16:23:00 | 大和文華館
明後日から七十二侯の次候「霎時施(こさめときどきふる)」に
被災地ではもう雨はいやなのに、このような天候の予報が・・・、
でも明後日29日からやっと晴れの日が続き、復興が進むでしょう。

先日、特別展「聖域の美―中世寺社境内の風景」展が11月17日まで
開催中の『大和文華館』に伺いました。
松尾芭蕉の言葉に「佳景寂寞として心澄みゆくのみおぼゆ」があり、
寺社の境内は、私も含め古い人間には幼いころは七五三などお参り、
祭りなどの遊び場に。成長すると聖域であり、心のよりどころにも。
そうした境内の様子が描かれた作品、北は会津から南は九州まで、
時空を超えた寺社巡りが出来ました。


作品は国宝1点、重要文化財9点、重要美術品1点を含む34件で、
四章から構成されている。

Ⅰ.【聖域の静謐と荘厳】、礼拝の対象から境内の様子へ

1.「女神像」平安・10-11世紀
2.「一字蓮台法華経」平安・12世紀後半、国宝
  仏教美術の法会の様子が大和絵にて表され、僧侶が九人で、中央
  の美男の僧横には、数珠を持った貴人と市女笠を被った女性が。


3.「笠置曼荼羅」鎌倉時代13世紀 重要文化財
  線刻で描かれた磨崖仏だが、13重の塔と共に1331年の後醍醐天皇の
  笠置の戦で焼かれてしまい、現在はほとんどわからない。
  舞台造りもあり、また女人が参拝する様子も描かれる。


4.柿本宮曼荼羅 鎌倉時代13世紀 重文
5.日吉曼荼羅  鎌倉時代14世紀 重文
8.山王宮曼荼羅 南北朝14世紀  重文 奈良国立博物館
   廻りを布で覆わず、筆で描いた書き表装に注目
・・・・・ここまでは礼拝の対象・・・・・

9.高野山水屏風 鎌倉~南北朝14世紀前半 重文 京都国立博物館
  中世の高野山の派閥争い(東寺派、高野山派と智山派)が屏風絵に
  反映され、四季が描かれる。
10.園城寺境内古図 14世紀前半 重文 園城寺
  後期は写しになります。
園城寺境内古図一部

12.出雲神社絵図 鎌倉時代13-14世紀 京都・出雲大神宮
出雲神社絵図一部

Ⅱ【物語をはぐくむ場所】縁起と境内
  神仏と寺社をめぐる物語に溢れた境内へ
13.玉垂宮縁起 伝民部法橋忍智 1370年 重文 福岡・玉垂宮
   書き表装(牡丹唐草)とへただけどリアルな描き方
玉垂宮縁起部分

14.伊勢曼荼羅 南北朝14世紀 奈良・正暦寺
伊勢曼荼羅部分

16.高野山曼荼羅 室町16世紀 東京芸術大学
   壇上伽藍が描かれ、9と16と32を比較すれば面白い
19.かるかや 室町・16世紀 サントリー美術館
   イメージとして描かれる。女人禁制
   卒塔婆が奥の院に、32では墓石が・・・

Ⅲ【境内の記憶と再興】
  荒廃からの復興を願って造られた絵図、人の温かい思いが伝わる
20.東山泉涌律寺図 室町・15世紀前半 京都・泉涌寺
21.慧日寺絵図 室町・15世紀前半 福島・慧日寺
  901年の建立されたが明治の廃仏毀釈で廃寺に
  現在この資料を基にして発掘され再興中と
慧日寺絵図部分

22.松尾神社絵図 室町前半・15-16世紀 京都・松尾大社
   日本昔話のような描き方
24.三上古跡図 室町時代16世紀半ば 滋賀・御上神社
   三上山の頂上を中心に描かれる
三上古跡図部分

25.報恩律寺七堂図 室町時代1568年 兵庫・報恩寺
   1502年に火災で焼失し、再興を願い書かれたもの。
   ポップな描き方で、本堂で祈りをささげる人が

Ⅳ【にぎわう境内】
  太平の世の寺社参詣はピクニック気分
26.釈迦堂春景図屏風 狩野松栄 室町・16世紀半ば 京都国立博物館
   女性の洗濯風景で絵に奥行と季節感が
27.洛中洛外図帖 狩野派 16世紀半ば 奈良県立美術館
28.洛外名所遊楽図屏風 狩野永徳 16世紀半ば 個人蔵
   人を重ね、人間関係が明瞭に描かれている
29.吉野花見図屏風 狩野派 桃山17世紀前半 重文 細見美術館
   秀吉の花見が描かれ、仮装した外人風の役の人も
32.高野山図屏風 江戸18世紀半ば 堺市博物館
   ガイドブック
33.浅草寺境内図屏風 蹄斎北馬 江戸19世紀前半 越葵文庫(福井)
   静かな隅田川を背景に、賑やかな歳の市、雷おこしも
浅草寺境内図屏風部分

34.野々宮図 富田渓仙 昭和20世紀前半
   生活に溶け込んでいます。

時空を超えた自社巡りが出来ますよ。

大和文華館「福徳円満を求めてー中国 元・明時代の華やかな工芸」展へ

2019-08-11 19:00:23 | 大和文華館
暦の上では「立秋」を過ぎたとはいえ、一番暑い盛りになりますね。
先月末に「大和文華館」に伺っていたのに、暑さで書く気が失せて、
会期末が18日に迫ってきて、慌てて書きだしているところです。
特別企画展『福徳円満を求めて―中国 元・明時代の華やかな工芸―


大和文華館では福徳な展示はお正月に企画されており、不思議に
思いながら伺うと、学芸部課長、瀧朝子さんの丁寧かつ巧みなお話
のあと、鮮やかな色彩と多種多様な文様に溢れた中国元・明時代の
陶磁器・漆器・染織など、特別出陳作品を含めた96件の中から、
ポイントを押えられた説明も加わり、技術の限りを尽した華やかさ
に魅了されました。

講義に内容は
福徳円満」とは福も徳も欠けることなく満ちていること。
仏教では他者に恵みを与える徳を行うこと、それにより得られる
功徳を意味し、最終的には心の平安と現実的な豊かさを願う
文化的背景をさらうと
中国の元時代(1271年-1368年)はモンゴル人による国で、
 元曲という戯曲が流行し、
 螺鈿漆器は薄貝技法(0.1mm)による細密な人物文が特徴となる
 元時代後期に景徳鎮窯で青花磁器(染付)が完成し、イスラム圏との交易
 コバルト輸入により、筆で描くことで青色が・・・青花磁器の輸出
明時代(1368年-1644年)漢民族による王朝、
 産業・経済の発達し、富裕層が広がり、個人の造園が盛んになる
 文化が庶民層まで享受され、西遊記や水滸伝が出版され挿絵が
 陶磁器は五彩や金襴手など華やかな工芸品に。

福徳を表す文様とは、音通と云われる中国語の発音が同じ動物で表す
例)・「爵禄封候」とは雀=爵、鹿=禄、蜂=封、猿猴(サル)=候
51.「清水裂(きよみずぎれ)」 明時代 大和文華館
清水裂

50.「青花花鳥獣文六角大壺」明時代 白鶴美術館
青花花鳥獣文六角大壺

・梅(早春)に鵲(カササギ=良い知らせを運ぶ)⇒早春に吉兆を運んでくる
・鹿・霊芝・竹・奇岩⇒長寿(仙人が良く出てくる)
・つがいの動物   ⇒夫婦円満

四部構成になり
Ⅰ.華やかな色彩に導かれ―五彩への展開
  元代後期に中央アジアからコバルトがもたれされ、景徳鎮窯で青花磁器
  (釉下彩)が完成され、同時期に銅を呈色材として還元炎焼成で小豆色に
  発色する釉裏紅の作品が生み出されたが、安定しておらず数は少ない。
  明時代に入り、透明釉の上に、五彩(釉上彩)が発達し、さらに金彩など
  色鮮やかな陶磁器が焼造される。
 1.「釉裏紅鳳凰文梅瓶」 景徳鎮窯 元後期 :小豆色が注目
釉裏紅鳳凰文梅瓶
 
 4.「青花蓮池文瓶」 景徳鎮窯 元時代 大阪市立美術館
 青花蓮池文瓶

 13.「金襴手瓢形瓶」 景徳鎮窯 明時代 白鶴美術館蔵
金襴手瓢形瓶

 25.「赤絵角鉢」 景徳鎮窯 明時代

Ⅱ.身近に置いて楽しむ-古染付・祥瑞
  明時代末の天啓年間(1621-1627)と崇禎年間(1628-1644)に民窯で
  焼造され、日本に輸出された焼物で、日本では古染付・祥瑞と呼ばれる。
  大らかな絵付けが多く、茶道具などに注文制作されたものもある。
 29.「青花富士山形平鉢」 景徳鎮窯 古染付 明時代末
青花富士山形平鉢

 31.「青花釉裏紅闘鶏文碗」 景徳鎮窯 古染付 明時代末期

 39.「瑠璃釉瓢形徳利」 景徳鎮窯 祥瑞 明時代末
 瑠璃釉瓢形徳利

Ⅲ.文様の広がりー多様な願いを託して
  長生き、裕福、子孫繁栄・・・様々な願いを託して文様に表す
  吉祥の意味の付け方として
  ・ものの性質や形から
  ・神仙にまつわる故事などから
  ・言葉の音通(発音が同じ)
  ・言葉を重ねて吉祥句を作る
 50.「青花花鳥獣文六角大壺」 景徳鎮窯 白鶴美術館 明時代 既述
 51.「清水裂(きよみずぎれ)」 明時代 大和文華館 既述
 63.「紅花緑葉福字文合子」 明時代
紅花緑葉福字文合子

Ⅳ.魅惑の人物像・物語の世界ー神話・戯曲
  神仙世界
  人々の理想の姿・暮らし
  ・明時代中期に興る造園ブームによる華麗な屋敷・庭園
  ・理想の文人像(琴棋書画、先人の姿)
  ・不老長生の景物に溢れた空間
  ・小説や戯曲の世界を文様に取り入れる
 78.「赤絵仙姑文壺」 磁洲釜系 元後期
 赤絵仙姑文壺

86.「五彩武人図有蓋壺」 景徳鎮窯 白鶴美術館 明時代
五彩武人図有蓋壺

88.「螺鈿楼閣人物図盒子」 白鶴美術館 元時代
螺鈿楼閣人物図盒子

91.「螺鈿楼閣人物図盒子」 大阪市立美術館 元時代 
螺鈿楼閣人物図盒子

95.「螺鈿山水人物図座屏」 明時代
 螺鈿山水人物図座屏

あと一週間ほどですが、福徳を頂きにお伺いください。

知られざる?大和文華館コレクション展へ

2019-06-14 21:31:32 | 大和文華館
梅雨入りがまだない近畿地方、晴れ渡った日に訪れた「大和文華館」、
名残のササユリが門前に一輪のみ咲き、終わりを告げ、バトンタッチは
「紫陽花」へと、季節の移り変わりを教えてくれました。


本館前まで行きつくのに汗が出るほどで、ほんとに夏色です。


7月7日まで「知られざる?大和文華館コレクション」展が開催中です。


大和文華館は来年で開館60周年を迎えます。
美術史家であった初代館長・矢代幸雄により〝日本やアジアの美術史の
流れが分かる美術館を”とバランス良く集められたコレクション、
現在は2000件にまで達しており、日頃展示されない考古学遺物や
絵画作品に日の目が当たる企画です。
なお初出展は2件、40年ぶりや十数年ぶりも数点ありました。

土偶、埴輪や土器が展示された本館内、考古学博物館では目にしますが、
美術館でお目にかかるとは?。


この企画者である古川攝一学芸員に説明をしていただけました。
ここでは土偶や埴輪は彫刻に、土器は日本陶器に分類されており、日本
美術史における縄文・弥生・古墳時代の文化史の違いと、中国や朝鮮を
通じて渡ってきた文化が日本で花開いた一端を窺い知ることが出来ました。
またこのように展示すれば重要文化財へ指定されることもあるのかもと。
力が入っていたマニ教の六道図、それとも・・・数年先が楽しみに。

展示品数は約50件で、重要文化財は古墳時代の埴輪像2件で、
【日本考古】、【東洋考古】と【絵画・彫刻】の三部構成で、
改元の典拠となった万葉集巻5(江戸時代1643年の版本)も参考出展。
後ろ4行からで、梅の花だけでなく、次ページでいろいろな花の名前が
出てくるのですよと


【日本考古】
4.土偶立像 秋田県出土 縄文晩期(紀元前1000~400年)
  土偶は殆どが女性、お産の大事さと豊かさを表すのでしょうか。
  遮光器土偶の後の時代で、 体中点々の刺突紋や顔には化粧か
  入れ墨、首や肩の部分には赤い絵の具が残っており、背中には
  「6」字形の模様が表され、愛らしい姿に見とれます。


5.縄文大壺 新潟県 加曾利E式 縄文中期
  火焔式土器で、炎の大切さ、非対称な文様は美意識の多様性を表す?
  縄状にして積み上げて壁は厚く、焼成温度は900℃まで酸化焼成

8.弥生壺   弥生時代
9.土師器大壺 古墳時代 
  ロクロが使用され、壁が薄くなるが、まだ900℃で焼く
10.埴輪鷹狩男子像 群馬県出土 古墳時代 重要文化財
  冠を被り、髪を美豆良に結い、玉を連ねた髪結びで目鼻立ちの整った
  容姿が可愛い。両腕には籠手を付け、左手には嘴の鋭い鷹がとまる。
  大腿部が異様に膨らみ当時の造形感覚を推し量るが先の台座は欠ける。
埴輪鷹狩男子像 重文

11.埴輪 男子立像 茨城県出土 古墳時代 重要文化財
  つばの部分に斜め格子文様のある兜、美豆良の髪は肩まで・・・
  頬の部分の赤身、口の周りの黒味など服の白の蛇の目模様など
  彩色がのこり、下半身の造形的不均衡が何とも言えぬ造形感覚だ。
男子立像 重要文化財

13.出土刀装具 10点 古墳時代
15.翡翠勾玉 5点 古墳時代
16.須恵器提瓶 古墳時代
  竃で焼くことで1200-1300℃の還元焼成が出来、自然釉も登場
21.三尊塼仏 大阪大平寺 奈良時代前期
  寺の壁に飾られ、金箔が残るものもあり、華やかであったのでは

【東洋考古】お墓から出土した物品
24.灰陶加彩鴟鴞尊 中国・前漢 
  ミミズクは繁栄と再生、リアリズム
28.灰陶加彩誕馬 中国・南北朝 財産を表す
29.灰陶加彩駱駝 中国・南北朝 財産を表す 15年ぶりの展示
31.塑像武人俑 中国・唐 足元の鬼を踏みつける姿 
     台の横に穴があり、11番の埴輪の台にも穴が開き同じ用い?
33.塑像武人俑 アスターナ出土 大谷探検隊 中国・唐
     かわいらしさが・・・
34.犬塑像 中国・唐末期  15年ぶりの展示
  猟犬で西洋犬でシルクロード由来か、
  次世代の大和文華館のアイドルに???、肌が痛んでいる。


38.飛天文軒平瓦断片 5点 慶州・興輪寺、普門寺出土 統一新羅
    かわいらしい飛天が、精度の高い技術が使われている

【絵画・彫刻】
42.六道図 中国・元
  当初は仏教画と思われていたが、2006年の泉武夫の論文より日本でも
  数点しか確認されない数少ないマニ教画と2008年に判明した。
  マニ教とは、ササン朝ペルシャのマニ(210-275年頃)を開祖とし、
  ユダヤ教・ゾロアスター教・キリスト教・グノーシス主義などの流れを
  汲む宗教で、二宗三際を基本とする。ゾロアスター教の二元論と宇宙は
  三際、つまり初際、中際と後際になり回帰し、694年に中国に布教され、
  老子化胡経として広まったが、一度は禁教となったが、元時代に復活、
  再び禁教となり、現存しないとされる。
  『大和文華』121号(マニ教絵画特輯)によれば、マニ教は本来折衷主義的な
  宗教であり、マニ教絵画を制作した絵師たちも、寧波仏画と共通する図像や
  表現を用いていることが指摘され、赤い縁取りの白い衣がマニ僧の特徴とされる
  左右の袖での上下に四角の中に顔が現れ、藤田美術館や山梨・栖雲寺所蔵の
  『虚空蔵菩薩像」にも同様なものが確認される。と

 
47.木造地蔵菩薩立像 鎌倉時代 (パンフレットの右下の像)
  截金を用いられており、おでこが広い形で下から見上げることを考慮されたか 

48.六字経曼荼羅図 南北朝
51.愛染明王図 大津絵 江戸中期
   愛らしさと稚拙さが同居する(パンフレット中央上のもの)
52.雷図 大津絵 江戸後期 初めての展示

53.涅槃図 道益画 江戸後期 木版筆彩、庶民に普及してきた
54.日蓮上人涅槃図 江戸後期 木版彩色 庶民に普及してきた
55.大峰山全図 江戸後期 初めての出典 

なかなか面白い企画で、二回伺いました。 

大和文華館「茶の湯の美術」展に

2019-04-25 21:14:16 | 大和文華館
夜半の雨が止み、晴れるかと思えば曇り空なのに蒸し暑ささえ
感じられますが、週末には寒気が入り不順なようです。

23日の火曜日、朝からの稽古が終わり出かけた先は「大和文華館」、
4月12日から5月19日まで『茶の湯の美術』展が催されています。

HPによれば(一部改変)
”茶を飲む風習は、奈良・平安時代に中国から日本に伝えられ、
鎌倉時代には禅宗とともに抹茶の喫茶法がもたらされ、禅寺における
生活規範として位置づけられ、社交の道具として武家の間にも広まる。
室町時代には、唐物を飾り立てた豪華な空間で喫茶を楽しむ一方、後期頃、
禅を礎にして精神性を重んじた佗び茶が生まれ、さらに深められた。
桃山から江戸時代にかけては、時代を先導する多彩な茶人たちが輩出され、
自らの茶風に合う道具を選び取り、新しい道具の創出にも関わりました。
喫茶の風習は、多様な分野の美意識を結集した独自の文化「茶の湯」に。
近代には、財界人たちが茶の湯に親しみ、著名な茶道具を蒐集し、
茶席に新たな種類の美術品を飾りました。”と

出陳品は国宝1件、重要文化財5件と重要美術品1件を含む79件
5部より構成され
Ⅰ【喫茶の歴史】 茶に関する記載に印があり解かり易い
1.「日本後記」 享保12年(1727年)写し 江戸時代
4.「造東大寺勧進栄西書状」 3月16日 石津浦地頭宛 鎌倉時代
7.「足利義満書状」 5月13日 室町時代

Ⅱ【唐物の茶】
8.「秋塘図」 伝趙令穣筆 中国・北宋時代  重要文化財
秋塘図

9.「雪中帰牧図」李迪筆 中国・南宋時代  国宝
 雪中帰牧図

10.11.「蜀葵遊猫図・萱草遊狗図」 伝毛益筆 中国・南宋時代 重文
 

13.「青磁鯱耳瓶」 龍泉窯 中国・南宋時代
15.「柿磁金彩碗」 定窯 北宋
柿磁金彩碗

16.「黒磁金彩碗」 定窯 北宋
黒磁金彩碗

17.「油滴天目碗」建窯 中国・南宋時代

Ⅲ【侘び茶の誕生】
23.「武野紹鴎書状」卯月六日 日本・室町時代
24.「墨蹟虎丘十詠跋」 霊石如芝筆 1304年 中国・元時代
墨蹟虎丘十詠跋

26.「墨蹟法語」 虎関師錬筆 日本・南北朝時代
28.「粉青象嵌花文小碗」 三島手「金山長與庫納」銘 朝鮮
30.「斗々屋茶碗」     朝鮮・朝鮮王朝時代
31.「柿の蔕手茶碗」    朝鮮・朝鮮王朝時代
32.「熊川手茶碗」     朝鮮・朝鮮王朝時代
33.「伊羅保手茶碗」    朝鮮・朝鮮王朝時代
伊羅保手茶碗

34.「小倉色紙(天の原)」 日本・鎌倉時代
37.「白天目茶碗」瀬戸 室町時代
38.「鉄製蜻蛉文真形釜」室町末期
鉄製蜻蛉文真形釜

Ⅳ【侘び茶の展開】
39.「笑嶺宗訴書状」十二月十三日 栖賢寺宛 桃山時代
40.「津田宗及書」廿三日 道幸宛 桃山時代
41.「織田有楽書状」十二月五日 権右衛門宛 桃山時代
42.「千道安書状」三月廿二日 桃山時代
43.「千少庵書状」正月十九日 日本・桃山時代
44.「千宗旦書状」十一月廿四日 深や庄左エ門宛 江戸前期

53.「古田織部書状」十一月廿一日 桃山時代
54.「古田織部書状」正月廿七日 有楽宛 桃山時代
55.「黒織部沓茶碗」美濃 桃山時代
黒織部沓茶碗

58.「小堀遠州書状」八月十八日 片桐石州宛 江戸前期
60.「金森宗和書状」閏六月七日 堀越中守利長宛 江戸前期
64.「青花花鳥文碗」デルフト窯 オランダ18世紀
67.「色絵おしどり香合」野々村仁清作 京都 江戸前期
色絵おしどり香合

68.「色絵竜田川文向付」0尾形乾山作 京都 江戸中期
69.「色絵枇杷文角銚子」京都(御菩薩)底裏に印有り 江戸中期
73.「一閑蒔絵枝垂桜文棗」江戸時代
一閑蒔絵枝垂桜文棗

Ⅴ【近代数寄者の茶】
76.「和漢朗詠集断簡」 伊予切 平安後期
77.「伊勢集断簡」 石山切 平安後期
78.「小大君像」 佐竹本三十六歌仙絵断簡 鎌倉時代 重要文化財
小大君像

79.書 独座天地間 原三渓筆 昭和

なお5月8日(水)は無料開館日になっておりますよ。

大和文華館「富岡鉄斎―文人として生きる」展を

2019-03-04 16:12:47 | 大和文華館
弥生を迎え雨が良く降りますが、東大寺二月堂修二会(お水取り)も本行に
入り、練行衆の足元を照らすためのお松明がお堂に上っていますね。
TVより

日々忙しく過ごしている中、暖冬で梅も盛りを過ぎた雨の「大和文華館」へ伺うと、


特別企画展「富岡鉄斎―文人として生きる」4月7日まで開催中


富岡鉄斎(1836〜1924)は、京都に生まれた日本画家、本人は儒教学者と。
「万巻の書を読み 万里の道を行く」の座右の銘を実践した
作品は、壮大なスケールと存在感を放ち、
国学・儒学を修め、幕末には勤王家としても国事に奔走した。(コトバンクより)

愛媛・三津浜の近藤家旧蔵品140点等の大和文華館蔵、清荒神清澄寺鉄斎美術館蔵、
奈良市資料保存館蔵や個人蔵等を含む49点で三部構成になります。

本館を入ると、正面に三点が
左:36閻魔図、1907年 72歳 紙本墨図
  田能村直入へのブラックジョークで描かれている。

中:35富士山山頂図、1920年 85歳 紙本墨図
  京都の虎屋さんに書かれたもので、不二の金明水で墨をすり描かれた

右:46鮮魚図、1915年・80歳 紙本墨図淡彩

第1章 文人として生きる
1-1.古人を懐う
1「蘇東坡像」 1918年 83歳 清荒神清澄寺鉄斎美術館蔵 前期のみ
  別名は蘇軾(そしょく)で誕生日が同じ、偉大な人間として尊敬する先人


3「神武天皇像」制作年不詳、奈良には石上神宮の神官をされていた
  青い勾玉を胸に、尊敬されていた

1-2.万巻の書を読む 、
 京都の自宅の扁額に「不読五千巻書者。無得入此室
 ”五千巻の書を読まずして、この室に入るべからず”と

12「大雅筆山水図屏風縮図」 江戸時代 大和文華館蔵

1-3.万里の路を行く(小特集:鉄斎と奈良)


13攀嶽(はんがく)全景図 1889年 大和文華館蔵  

16「月ヶ瀬図巻」 明治時代 50歳代か 奈良市史料保存館蔵
一部


                 2018.3.15月ヶ瀬にて

17「名士観梅図」1916年 81歳 奈良市史料保存館蔵【前期のみ】
文人の宴、酒が足りずに持ってくる人も
名士観梅図

19華之世界図 1914年 79歳 清荒神清澄寺 鉄斎美術館蔵
 お寺等が多く描かれており、南朝に対する哀惜か

第2章 山水を描く
寒月照梅華図・梅華満開夜図 1911年 76歳 大和文華館蔵
一対として描かれており、月の寒々とした冷たさと春になり梅の花の暖かさが
寒月照梅華図 梅華満開夜図

29「山荘風雨図」1920年 85歳 大和文華館蔵
  外は嵐なのに、気にせず堂々としている文人が

第3章 朋友と集う
32「扇面新居雅会図」 1919年84歳 個人蔵 初公開だとか
  鼻と目の位置が、ユーモラス
扇面新居雅会図

34「無量寿仏堂印譜」1926年 個人蔵
37「車海老図」1885年 50歳 
車海老図

45「寿老図」1914年79歳 大和文華館蔵
 墨の濃淡や線の太さで描かれており、鬚の描き方がすばらしい
寿老図

3月下旬頃には、枝垂桜の瀧桜が満開になる頃に、無料観覧日があります。

大和文華館、特別企画展「新年を祝う・吉祥の美術」

2019-02-08 08:41:03 | 大和文華館
お目出度い『大和文華館』、子孫繁栄・長寿・富貴など、幸せを願う想いの
特別企画展『新年を祝う―吉祥の美術―』が2月17日(日)までになり、
先日「うめの無料招待日」にようやく伺うことができました。

駐車場から坂道を上がると、鼻先に微かにウメの花の香が、
展示室には71作品、(所蔵はなければ大和文華館に)
通路から入ると正面にいつもの様に三点
左、白磁青花彩陽刻十長生文六角瓶 朝鮮時代
中、紅花緑葉福字文合子 明時代
紅花緑葉福字文合子

右、色絵梅文大壺 有田(伊万里)江戸中期

五部構成になっており、
Ⅰ.【一富士、二鷹、三茄子】 初夢ですね。
富嶽図 宋紫石筆 江戸時代 大和文華館蔵
富士山図 富岡鉄斎 明治から大正
高いとて 自慢をするな 不尽の山 ときにあたまへ はる風ぞ吹く」 
鷹図 江戸時代 大和文華館蔵

Ⅱ.【梅と桜】
織部梅文香合 美濃焼 桃山時代
一閑蒔絵枝垂桜文棗 江戸時代

Ⅲ.【新年を祝う―亥年によせて】
十五鬼神図巻 鎌倉時代 大和文華館蔵
猪図 望月玉泉筆 文久3年(1863) 個人蔵
大きな猪、目が上を向いて跳ねている。素晴らしい。
猪図

お多福図 江戸時代 個人蔵
お多福図

高砂図 中村芳中筆 江戸時代 個人蔵
高砂図

Ⅳ.【縁起の良い神さま・仏さま】
雲中百寿図 与謝蕪村筆 江戸時代 個人蔵
天神図 葛飾北斎筆 江戸時代 個人蔵
天神図

鍾馗と美人図 狩野養信・歌川国貞筆 江戸時代 個人蔵
鍾馗と美人図

閻魔図 狩野養信筆 江戸時代 個人蔵
閻魔図

朱描鍾馗図 富岡鉄斎筆 明治40年(1907) 大和文華館蔵

Ⅴ.【おめでたいデザイン】 魚・鳳凰・龍・牡丹・蓮・いろいろ
釉裏紅鳳凰文瓶 元時代 大和文華館蔵
紅花緑葉福字文合子 明時代 大和文華館蔵 記載済み
螺鈿魚文盆 朝鮮時代 大和文華館蔵
螺鈿魚文盆

白掻落牡丹文枕 磁州窯 北宋
白掻落牡丹文枕

五彩荷葉硯 景徳鎮窯 天啓頃 明末期
五彩荷葉硯

鉄砂青花葡萄文大壺 京畿道広州郡窯 朝鮮時代
鉄砂青花葡萄文大壺

白磁青花彩陽刻十長生文六角瓶 朝鮮時代 大和文華館蔵  記載済み

大和文華館「四季探訪 研ぎ澄まされる四季絵の伝統」展

2018-11-23 17:47:18 | 大和文華館
温かな秋が昨日は小雪の訪れで終わりを告げ、冬将軍が到来。
昨夜から東北地方にも初雪の便りが・・・、
そして奈良も今朝の最低気温は4.9℃と二度目の5℃以下ですが、
吹く風は一段と突き刺さるような寒さで冬到来ですね。
小雪や古りしだれたる糸桜」飯田蛇笏

糸桜ではないが、三春の瀧桜も葉を落として
寒そうな大和文華館を雨上がりの日に訪問

季節感が希薄になった現代、手紙では時候の挨拶から始まります。
この季節を愛おしむ感性は、日本人からは失われていない証しで、
開催中の『四季探訪 研ぎ澄まされる四季絵の伝統』展では、
平安時代、絵画において自然の風景に行事や祭礼などを織り込む
「四季絵」が登場し、屏風や襖などに和歌と共に描かれていたが、
現在はほぼ失われている。和歌だけは記録として残されており、
江戸時代に至り、再びこの時代ならではの感性で屏風、軸や扇面
等に描かれ、当館所蔵作品で四季を愉しむ展示内容に。


金銀をふんだんに使った紙(料紙)を用いたのは、今までで
平安後期の金箔・銀箔を散らす料紙と、江戸時代前期の1606年
~1615年の間、金泥銀泥で描いた二回だけだそうです。

国宝、重要文化財各1作品を含む25作品が五部構成で展示され、
展示室内に入ると照明は一段と暗く、いつも通り左中右と三作品、
20.観世流謡本 藍染川:観世身愛 奥書 紙本金銀泥墨書 桃山時代 
山は暮れて野は黄昏の薄かな』与謝蕪村

19.新古今和歌色紙: 本阿弥光悦筆1606年 新古今 難波の歌
        紙本金銀泥墨書 桃山時代
忘れじな 難波の秋の 夜半の空 こと浦に澄む 月は見るとも
宣秋門院丹後
  俵屋宗達が金泥銀泥で桔梗と下草を描き、光悦が和歌を書写
  桃山文化の美意識が洗われている。
新古今和歌色紙

22.武蔵野隅田川図乱箱:尾形乾山1743年 木製墨画着色 重文
  81歳の乾山亡くなる直前、落款の上にも薄が描かれ葉陰から・


Ⅰ.【春の花を愛でる
1.「寝覚物語絵巻」 紙本着色 平安後期12世紀 国宝
  ほぼすべての展示されており、不倫で生まれた子が不倫の恋を
  よく判らない物語で、作者は源氏物語に憧れて書かれたと。
 第一段(春):右端近くに櫻と柳がセットで描かれ、室内は簾等
  で暗いなか、一度亡くなったが生き帰った女性を見つめる男


 第二段(夏):松に絡みつく藤の木に花が咲いており、


 第三段(秋);梅の実が落ちる


 第四段(冬):絵が切れている


2.花卉図扇面:紙本着色 江戸前期、;狩野派の工房作で

4.桜図:俵屋宗達筆 紙本墨画 江戸前期;夜の桜、影の桜と
6.春柳図:尾形乾山 1739年 紙本墨画
『つゆけさも ・・・ 春のおもかげ 』三条実隆???忘れました
  乾山77歳、柳の老木が芽吹く姿、まだまだつやっぽいですね。


Ⅱ.【ふたつの季節を味わう
8.伊勢物語図屏風 八橋・布引図 江戸中期 紙本金地着色
9.春秋鷹狩茸狩図屏風:岡田為恭筆 紙本着色 江戸後期
  左右を水で繋いでおり、青の色が良い岩絵の具なのでしょう
  空が絵になる西洋画を研究し、遠近法的な構図になっている。
  右隻は鷹狩:
鷹狩一部
  左隻は茸狩:顔の表情がなんとも近代的
茸狩一部
 
Ⅲ.【夏の光のなかで】
10.草花図屏風:伊年印 江戸前期 紙本金地着色
  金箔をはりその上にトウモロコシが描かれている
11.瓶花図:酒井抱一筆 1815年江戸後期 絹本着色
 

13.神奈川風景図:谷文晁 1802年江戸後期 絹本着色
  対岸を細かな描写、家の輪郭は太く、船は霞んで揺れている
14.海浜漁夫図:司馬江漢筆 1799年 絹本墨画彩色
  庶民的な絵が

Ⅳ.【四季をそろえて】
16.稲富流鉄砲伝書 19帖 1612年 桃山時代
   殆ど開かれていないため銀色がきれいに残っている。
   今後公開されれば色が黒くなるのが欠点ですね。
17.四季花鳥図押絵貼屏風:渡辺始興筆 江戸中期 紙本着色
表一部 裏一部

18.四季山水図屏風:丸山応挙 1787年 紙本墨画淡彩
  冬は雪稜の鋭さ、秋は月の光 夏は梅雨、春は海辺の風景

Ⅴ.【秋から冬へ】
19.20.22.は始めを参照してください
21.僧正遍昭落馬図:英一蝶 江戸中期 紙本着色
  女郎花に気を取られて落馬する高僧のあられもない姿が
『秋きぬと 合点させたる 嚔(くさめ)かな』与謝蕪村
もと歌は、古今和歌集 秋歌上169 藤原敏行
『秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる』


屏風絵等の楽しさを教えて頂いたのは学芸部長・泉万理さんで、
12月2日、午後2時より日曜日術講座の講演をされ、
12月9日は、あの冷泉家25代当主の冷泉為人先生の講演も予定に。

「建国1100年高麗・金属工芸の輝きと信仰」展

2018-10-19 20:46:57 | 大和文華館
先日訪れた大和文華館、台風21号で苑内の木々も大きな被害で
先月の散策路は通行止めもあったが、今は表面的には元通りに。


館では10月6日から11月11日まで1100年前に朝鮮半島に誕生した
高麗ー金属工芸の輝きと信仰』特別展が開催中。


高麗は918年~1392年と長く、隣国中国の政情に影響を受けるが
文化・美術に成熟した時代で仏画、金属工芸、螺鈿や青磁に仏教
文物が制作され、国の安泰や個人の信仰なども願っていました。
展示総数92件、2件の重要文化財と1件の重要美術品を含み、
展示は4章から成り、教えて頂いたのは、瀧朝子先生です。

いつもの如く、展示室内に入ると、正面には三つの展示箱が・・・
左側:16如来鏡像と17水月観音・宝塔鏡像、
   心の目で見ると浮かび上がって来ます。
中央:59『鉄地金銀象嵌鏡架』愛知県美術館(木村定三コレクション)
   黒いのは鉄で錆が出て二年かけて保存修理、日本では唯一、
   鏡を掛けるハスの蕾で花の中心が金、白っぽいのは銀、
   黄色味を帯びるのは同時に金メッキが  
鉄地金銀象嵌鏡架

右側:33銅製銀象嵌柳水禽文浄瓶 漆黒の銅肌色で、線で銀象嵌
   柳の下の水で鴛鴦(おしどり)が遊ぶ
 銅製銀象嵌柳水禽文浄瓶

Ⅰ.花開く高麗の文化
2.大方広仏華厳経巻第四 高麗後期 徳川美術館

3.大方広仏華厳経 巻第三十五・六 高麗後期
   紺地に金泥の上に、朱や群青の彩色が 前田家伝来 
大方広仏華厳経巻第三十五

 大方広仏華厳経巻第三十五と冶金を   

8.螺鈿菊唐草文小箱:丸みを帯びた形、菊唐草文に続く線は
    銅線が用いられ、牡丹唐草文や鋸歯状文も。
    化粧箱として作られたが、伝来した日本では茶箱に。
螺鈿菊唐草文小箱

Ⅱ.信仰の美ー舎利容器の系譜
9.金銅飛天形飾金具、鳳凰に乗る人物が鳳凰の尾は鉄芯が
金銅飛天形飾金具

10.金銅舎利容器 4点 統一新羅時代 東京国立博物館 重要美術品
12..銀製層塔形舎利容器
銀製層塔形舎利容器

13.金銅八角舎利容器 「至治三年」銘 高麗美術館

Ⅲ.信仰の美ー高麗の荘厳具・梵鐘
18.銀製鍍金観音菩薩・毘沙門天像小仏龕:東京国立博物館
   個人の願いを


28.羅漢図 高麗・「乙未」1235年 
   1231年元が高麗に侵略、国家太平を願い五百羅漢像を発願
   その残服で、両手を結び険しい顔を。衣に朱や白、淡緑を
羅漢図

29.銅製銀象嵌梵字宝相華唐草文香炉:根津美術館

30.銅製銀象嵌梵字唐草文香炉:長谷寺


31.水月観音図:補陀落山で右下に水面井浮かぶ蓮弁で善財童子が
    うねる波は水墨で、静けさと厳しさも
水月観音図

39.梵鐘 「峻豊四年」銘 963年 広島・照蓮寺 重要文化財
   北宋の年号で、やや雑なつくりだが、飛天はふくよか
40.梵鐘 「太平十二年」銘 1032年滋賀・園城寺 重要文化財
   契丹の年号で、飛天は細見で、パルメット


41.42.梵鐘は金の年号

43.阿弥陀八大菩薩図 高麗後期:やや硬い表現で高麗仏画の佳作



Ⅳ.装いの美ー装身具・鏡・飲食器
45.金製垂飾 八対 三国(新羅):亀甲文
一部


50~54.金製蓮に、亀文、梅文、鳥文、菊文など
亀 梅  

57.銀製鍍金針筒

60.高麗唐草文鏡 京都国立博物館 :小さくて薄い
高麗唐草文鏡

80.龍樹殿閣文鏡 :兎とヒキガエルが
82.波涛船舶文八稜鏡
波涛船舶文八稜鏡

鏡だけで28点もそろっており、見事としか。
でも館内は本当に空いていました。

大和文華館の中国・朝鮮絵画展

2018-09-26 16:30:35 | 大和文華館
伺わねばと思っていた「大和文華館の中国・朝鮮絵画」展も、
今月末で会期末、雨の降る日でしたが学芸員の都甲さやかさんの
的確な解説を聞きながら、素晴らしい作品の数々を鑑賞しました。


大和文華館の開館は1960年昭和35年であるが、五代目近鉄社長
種田(おいた)虎雄の意を受けた美術史家で後に初代館長となる
矢代幸雄氏のによる収集は昭和21年からで、作品の観賞価値を
重要視し、特に東洋古美術品を対象としてて収集された780件で
開館し、現在は2000件を超え、通覧できる充実した作品群です。


出陳は47作品で雪中帰牧図(国宝),秋塘図(重文)を含む三部構成
館内に入りましょう。いつもの通り、直ぐに三点が・・・
Ⅰ【山水を描く】
左側に「雪中帰牧図」左幅、南宋、隠し落款はあるが、別筆かも
真中は「雪中帰牧図」右幅、同上、李迪(りてき)の隠し落款
本当に小さな作品で、牧童の手に兎と雉を持ち牛の毛が立体的に
一本一本濃淡をつけて描かれるほど写実的で、凍てついた雪の上を
歩く足音だけが響き、以前の持ち主・益田孝(鈍翁)をして
「なんという寂しいほど静かな天地であろう」と言わしめたほど。
15世紀の室町時代に中国から足利家の所蔵品にその後井伊家に、
なお表装は室町時代のもので、価値があるそうです。
左幅 右幅

右側は「秋塘図」 伝趙令穣筆 北宋時代
目の細かい絹画上に秋の夕暮れを、全景の青の着色から後景の水墨
へと緩やかに変化させ、影もあることで無限の詩情が表されている。
秋塘図

5.文姫帰還図巻、第一拍・越中真景図冊 張宏筆 中国・明時代
文姫帰還図巻

11.太平山水図集 蕭雲従原画 劉栄・湯尚版刻 中国・清時代
13.賞楓図 張風筆 1660年 清時代
描いた紙が素晴らしいとしたためられており、人が一人描かれる。
張風は明の役人だったが、清には仕えず・・・奥からの風が
賞楓図

20.台湾征討図巻 1787-88年 銅版画 

21.煙寺暮鍾図 伝安堅筆 朝鮮・朝鮮王朝時代
中央の山で、視線を二分する。北宋山水を原型とする朝鮮画
煙寺暮鍾図

24.灞橋尋梅図 朝鮮中期
灞橋尋梅図

26.冠岳夕嵐図 鄭敾筆 朝鮮・朝鮮王朝時代

Ⅱ【植物を描く】
27.墨竹図 詹景鳳(センケイホ)筆 中国・明時代
風にしなる竹の枝が


30. 墨菜図 栖巌鳳臣筆 中国・清時代
白菜で高潔な文人を表し、よく見ると虫食いの葉や蝶々も飛ぶ

33.葡萄図 李継祜筆 朝鮮・朝鮮王朝時代
濃淡の墨で実が描かれ、多産の象徴で、全体で龍を表す。
伊藤若冲の葡萄図の元になった。
葡萄図

Ⅲ【人の姿を描く】
37.仕女図巻 伝仇英筆・文徴明詞書 中国・明時代
四季で描かれ、春はブランコ、夏は蓮の池で、秋は満月、冬は
けまりをしている仕女を細かい色で描くも、顔の描き方が均一
仕女図巻

40.聴松図巻 王翬・楊晋筆 1700年 中国・清
聴松図巻

41.閻相師像(えんそうし) 伝郎世寧筆 中国・清時代
大きな額として宮城に掲げられていたそうで、帽子の羽は孔雀
勲章として描かれる


42.美人弾琴図 中国・清時代

44.寿老図 金明国筆、金義信賛 1643年 朝鮮王朝時代
朝鮮通信使で来日した折、即興で描かれ、畳の跡が
寿老図

素晴らしい作品の数々になりますね。
次回は10月6日から11月11日まで
特別展『高麗 建国1100年 金属工芸の輝きと信仰』に