
先日大和文華館へ伺った折は、雨の中
笹藪に数輪しか咲いておりませんでしたが、
今日は、夏休みの無料招待デーで、再度訪問しました。
入口からの登り道脇に、赤い斑点をもつ白い花が咲いており、
むせ返るような匂い、とにかく甘い香りなのです。
「山百合(ヤマユリ)」で、別名、鳳来寺百合と言われます。
夏に咲く大型の日本特産の百合で、
関東でユリといえばこの山百合の事です。
1年に1つずつ花を増やし、長年たった株はお見事。
・「ゆり」の由来は
細い茎に大きな花で、風に揺れることから
「ゆる(揺)」、それが変化して
「ゆり」になったそうです。
「「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
女性の美しさを形容することばとして使われております。
・漢字の「百合」は漢名からで、
葉や鱗茎(りんけい)が多数重なり合っていることから。
そういえば、百合根は鱗茎のことで、
これから作る『百合きんとん』
裏千家十一代玄々斎好みで、
いつも有難くいただいております。

「ゆり」は古くは『古事記』からみられますが、
万葉集には10首、ほとんど「さゆり」と詠まれており、
どの花と特定できるのは少ないそうです。
「筑波嶺(つくばね)の さ百合の花の 夜床(ゆとこ)にも
愛(かな)しけ妹(いも)ぞ 昼も愛(かな)しけ」
20/4369 大舎人部千文(おおとねりべのちふみ)
筑波嶺という地名が入っており、ササユリは関東地方にはなく、
多分、山百合(ヤマユリ)と思われ、
この1首のみ、特定出来るのではないでしょうか。



庭で百合を小さくしたような花が咲きだしました。
内側に濃い赤紫の斑点が見られます。
葉は互い違いで生えており、
笹の葉に似て先が少し曲がっておりました。
杜鵑草(ほととぎす)です。
8月から咲き出すはずなんですが、早いですね。
あの斑点が野鳥のほととぎすの胸毛の模様に似ているから、
または基部が曲がっており、姿・形が似ているからか、
(上臈(貴婦人)にたとえられるジョウロウホトトギスも)
杜鵑草の名が付けられたそうです。
ホトトギスを
時鳥・子規・杜鵑・不如帰・郭公
と漢字では書かれるそうですが、
野鳥のほととぎすは
「不如帰」で鳴き声を音にして漢字表記したもので
「時鳥」はその時節柄になると鳴く鳥
花のほととぎすは
正式には「杜鵑」で「杜鵑草」とも
「時鳥草」
「油点草」とも表されます。
漢字で表わされると、草の有無で
判別するほうが良いようです。
茶道では、時鳥丸壺(ほととぎすまるつぼ)毛利博物館蔵
漢作唐物丸壺茶入れがあり、花・野鳥どちらでしょうか。

「惜しむらん 人におもえば時鳥」
後水尾院の発句から名付けられております。
ということは、野鳥のほうですね。


木槿の花粉に誘われて虫たちが集まり、
そこに上手に張られた蜘蛛の巣、
庭には三種類の木槿が咲いております。


二日続きのお稽古に出かけました。
勉強になりましたが、
実は明日も、湿灰作りの予定なのです。
夏本番、汗まみれ間違いなしですが、
暑さに負けずに、お稽古に励みたいものです。
暑さに負けずにといえば、庭では毎日木槿が次々と
花を咲かし続けております。
一日だけ咲いて、その日のうちに枯れてしまう花を
一日花といい、アサガオやハイビスカスなどがあります。
茶道の心得である『一期一会』に、『一日花』は相応しく
木槿(ムクゲ)などが使われますね。
この木槿は、フヨウ属に属しており、
芙蓉(ふよう)も 一日花(イチニチバナ)です。
ムクゲと違いは五角形の葉っぱなのが芙蓉、
美人を形容する言葉に「芙蓉の顔(かんばせ)」があり、
特に純白の芙蓉の花は、清楚で高潔な趣があり、
古来より中国の文人たちを魅了しております。
このように中国では、「芙蓉」はハスの花を指すそうで、
花木の芙蓉は、木芙蓉の字があてられます。




アメリカフヨウ(大和文華館にて)

雨の中の百日紅(昨日)
雨が続き、見まわれない間に、
百日紅(さるすべり、紫薇シビ)が咲きだしました。
ああー、今年も夏がやってきました。
名前のとおり、6月の末から約100日、暑い夏の間中、
ずっと力強く紅い花を咲かせてくれるでしょう。
茶花としては夏の花で、釣舟が相応しいとされております。
しかし、掛花や置花にも使ってしまいますね。
「散れば咲き 散れば咲きして 百日紅」 加賀 千代女
「炎天の 地上花あり 百日紅」 高浜 虚子
晴れた百日紅(今日)
晴天が似合いますね。

玄関に




庭に一週間前から咲きだしましたラッパ型の花があります。
お昼にはしぼんでおり、蕾のままの花が、
夕方には咲きだし、不思議な花だなっとおもっていました。
そういえば、昨秋咲いた花から、お寺の鐘のような形をした黒い種が、
その辺に散らばっていたのを。オシロイバナでした。


一つのオシロイバナに咲く花は黄、赤と白や斑入りなど種々様々だそうで、
学校で習った、メンデルの法則の学習にも利用されております。
また昔からおしろいばなの遊びも行われております。
オシロイバナのパラシュート遊びを孫に教えてみようかな。


夕方の4時頃から咲くそうで「夕化粧」(ゆうげしょう)とも言われ、
夕方以降に活動する昆虫に対しては、色や香りで引きつけます。
白粉(おしろい)をした女性に魅せられるからなのでしょうか?
実は熟した黒いタネをつぶすと白粉のような”白い粉”が出てくことから
オシロイバナと。名づけたのは、あの養生訓の貝原益軒さん。
白粉の時代での移り変わりを調べてみました。
古代ではもち米の粉が使われ、江戸時代には鉛粉から作られた
「京白粉」や水銀から作られた「伊勢白粉」が有名であったが、
有毒なので、現代では無毒な二酸化チタンを用いているそうです。
日本人は昔から今と同じく「美白」に走っており、特に江戸時代の庶民は
京白粉に及ぶもない白ですが、自然から取れるオシロイバナで代用することで、
貧しくも白くなることに関しては健康的であったことは面白いです。
白粉は茶道に関しては、薄茶器・香合の一種で『白粉解(おしろいとき)』ですね。
元々は化粧用具の白粉を解く容器を利用したことに始まり、
後にその形を取り入れた小型の平棗です。
中棗と平棗の中間の寸法で、比較的太短い形状を呈します。
また特に小さいものを香合に利用しております。

法華寺の山門前を通りました。
蓮鉢が両脇に数個並んでおり、
蓮の花が咲いておりました。
日本の風土に相応しい花ですね。




蓮の葉にもですが、里芋の葉もよくこのような写真が見られますね。
どちらも葉の表面には、微毛が生えており、撥水性があるため、
雨露は葉面から浮き(ロータス効果ハス効果とも)、水晶玉のように光り輝きます。
『ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に 溜まれる水の 玉に似たる見む』右兵衛
*雨でも降ってくれ、蓮の葉に溜まった水の玉に似たさまを見よう
古くから輝く蓮の葉は、清きものとされており、
食べ物を盛る最高の皿や、杯(象花杯・荷葉杯)としても用いられています。
そういえば先日お邪魔した萬福寺塔頭の瑞光院(半夏生)で、
荷葉露という蓮の実のお菓子をいただいており、
また紹介させていただきます。



ゆかしい香りで気が付きました。
フウラン(風蘭)が咲いていました。
数年前にはたくさんの鉢があり、植え替えも毎年のようにされていました。
今では冬もそのままにし、手もかけないので、鉢数は少なくはなりましたが、
有難いことですが、きちんと、咲いてくれております。
・・・・・
水苔を替え、株分けをしなくてはいけませんね。
風蘭は老木などに着生するラン科の常緑多年草です。
『風蘭や岩をつかんでのんだ松』
『風蘭や軒にもたれし松の枝』
『風蘭のほのかに白し鉄燈籠』
と子規は詠まれております。
6月から7月には白い花柄を出して数輪の花をつけ
上品ですっきりとした芳香を放ちます。
花弁は三裂し、距(きょ)とよばれる長い管が後方に伸びるのが特長です。
名の由来は、風に乗って木に止まったように見えるからとか、
樹上の風を見て茂るからだともいわれています。

江戸時代には「富貴蘭」と呼ばれ、葉っぱや花に変異のある様々な品種が栽培され
安政二年「風蘭見立鏡」には118品種があったそうです。
最近では戦後、榊莫山さんがブームにされたとか。

その『莫山家の茶懐石のおもてなし』世界文化社では
風蘭の香りの中での点心と「水無月」の菓子後の一服の茶
風蘭の世界に浸ってくださいとのこと。
このような風流な茶事はしたいものですが、
風蘭の花が咲く時と上手く合わないとね。




今年は本当に花々の開花が早くなっていますね。
庭に三株あるヤマアジサイ(山紫陽花)のうち一株が2週間前より咲き始めております。
白から青、赤紫そして紫へと変化しております。
ヤマアジサイの種類はたくさんあり、これは”クロヒメヤマアジサイ”でしょうか?
このようにアジサイは花の色がよく変わることから、「七変化」「八仙花」とも
「アジサイ」は万葉集に「紫陽花」として2首に詠われています.
0773: 言問はぬ木すら紫陽花諸弟らが練りのむらとにあざむかえけり
大伴家持
4448: 紫陽花の八重咲くごとく八つ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ
橘諸兄
平安時代の古今和歌集、源氏物語や枕草子などには詠われておらず、
平安時代末期までの一時期、忘れられていたようで
日本人の感性として不思議ですね。