細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『エデンより彼方へ』に行きたかったジョージの回顧映画愛が伺える。

2021年12月12日 | Weblog
●10月8日(木)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-170『エデンより彼方に』"Far From Heaven" (2003) TF1 International Pictures / Vulcan Productions
監督・脚本・トッド・ヘインズ 製作・スティーブン・ソダーバーグ+ジョージ・クルーニー 主演・ジュリアン・ムーア、デニス・クエイド <107分・ビスタサイズ>
多くのコレクションDVDを処分しようと思ったが、近所の中古ショップに持って行ったら、これは<200円>だというので、引き取って来てまた見た。
これは、実はあのジョージ・クルーニーと、ソダーバーグが、恐らくは趣味的に作ったメロドラマで、50年代風の古風なタッチが、どうにも捨てがたい作品。
というのも、50年代は戦後のハリウッドの作品が洪水のようにドバッと公開された時代で、わたしはモロに、その洪水に呑み込まれたせいで、メロドラマも沢山見た。
多くの西部劇や戦争映画が公開された時代だが、女性向けのメロドラマも量産されていて、よく<二本立て>の同時公開で、ラナ・ターナーやスーザン・ヘイワードの作品も見ていた。
だから、この作品も、典型的な当時の<メロドラマ>だったので、ついつい未練が残って、売るのはやめにして見たのだが、やはり、あの時代の残り香が悪くない。
まるで箪笥の奥にあった、おふくろの衣類のように、まだ、かすかに<あの時代>の香りがするし、その辺りはソダーバーグも、ジョージ・クルーニーも同じだろう。
50年代の中部アメリカのコネチカット州の中都市で、普通の中流家庭の主婦ジュリアン・ムーアは、夫のデニスの浮気による家庭崩壊でゴタゴタな私生活。
しかし、ご近所の婦人会の手前、あまり家内のトラブルは表面化しないように気苦労している、という正に典型的な戦後のアメリカン・ホーム・クライシスの渦中だ。
家の手伝いに現れた好感な黒人青年との交情も、彼の転勤で流されて、夫はゲイの青年とのつきあいで家庭は地滑りをして崩壊していく、という典型的なパターン。
その時代の感触を、クルーニーとソダーバーグは当時への郷愁と愛着を混めて描いていて、これはこれで、一種の<史劇>のような価値観すら感じる懐かしさ。
あの50年代の、アメリカ東部の家庭生活の風景には、その感情面は別にして、われわれには一種の憧れもあり、いま見ても、あの甘さには酔わされる。

■左中間へのゴロで抜けたツーベース。 ★★★☆☆
●ハピネット・ピクチャーズDVD

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