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不定形な文字が空を這う路地裏

きみのそばで凍る純粋の季節










すべての店が軒を下ろした
真夜中の薄明るい街路を
ゆっくりとした速度でぼくたちは歩いた
その夜は12月みたいに寒くて
耐えられなくなるたびに
自動販売機で温かい飲み物を買ったよね
デパートのデジタル時計の下で
話すべき思い出がすべてなくなったとき
ふたりして長い長いため息をついたっけ
それからきみが手洗いに行きたいと言って
でもそのあたりには小さな公園の
鍵の壊れた個室しかなくって
ぼくは勇敢な兵士のようにきみのとりでを守ったっけ
申しわけ程度の植え込みで
秋の虫たちがドサ廻りの楽団のように鳴いていて
きみを待ちながらその音を聞いていると
古い小説みたいな気持ちになったものだった
風が強かったせいなのか
いつもよりたくさんの星が見えて
そんなことはきっと
何度もあるようなことじゃないって
そんな印象の真ん中に
いまここに居るきみへの思いを
言葉にすることなくはめ込んだ
ほんとうにぼくたちは
純粋過ぎて無力だった
こんな局面に至っても
鍵の壊れた個室に
右往左往するのが関の山だった
どうしてあんなに
すべてが終わることをあっさりと受け入れられたのか
そうさせないための手段は
きっと無限にあったはずだった
ぼくたちはきっと
少し不純になって
少し勇敢になればよかった
ほんのわずかの間の戦士ではなく
永遠に戦う覚悟のある戦士になればよかった
寒さに
凍えたりせずに
凛として歩けばよかった
9月の終わりになるときみを思い出す
どこかで目にした美しい肖像画を思い出すみたいに
そのたびにあの頃の純粋さを
強く強く恨んでしまうんだ
ねえ、ぼくは随分と
意地汚い男になってしまった
だけど
ほんとうに欲しいものを手に入れ始めたのは
そうなる覚悟を決めてからだったよ

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コメント一覧

ホロウ・シカエルボク
>きりえさん

数ヶ月以内!
…と、先週くらいに気付いたんだけど
おれ今年15周年なのよ
ホロウ・シカエルボク15週年。

15周年の〆に、やろうかな?
できるかな…!?

咳弐は、本当にいい詩。あれ大好き。
きりえ
http://kirye-fan.seesaa.net/?1380220078
上手い表現です(´▽`*)

>「女子高の文芸部で知合ったふたり」って感じだよね、

朗読会するから数か月以内の筈!
> 今度会うのは何年後だろうか?またのんびり話し込みたいですね。

手毬の「咳弐」の件は解決しました(';')
設定を間違えていたのです、、、直しました!
ホロウ・シカエルボク
半日くらいだけど、そう言えばきりえさんが中ヌケしたわ、一時間くらい?人に会うとかで。いや、でも午前中に会って、昼飯一緒に食べて(大丸の食堂街でパスタ)、晩飯一緒に食べたな、八重洲地下街のカレー屋で…だから半日以上かもね。そのあと夜中に長電話してたし。

なんか、「女子高の文芸部で知合ったふたり」って感じだよね、ぼくは女子じゃないけれども(笑)でも、そういう表現がいちばんしっくりくる。今度会うのは何年後だろうか?またのんびり話し込みたいですね。

ところできりえさん、手鞠の「咳弐」がおれすごく好きなんだけど、なぜかあの詩だけコメント出来ないよ。
(;´∀`)
きりえ
http://kirye-fan.seesaa.net/?1380220078
『純粋』って、人を頭でっかちにさせる部分がありますよね。『純粋』が人であったなら、もう少し器用に生きればいいのになと思ったりします。

あれ、半日もでしたっけ? 楽しかったのでもっと短い時間かと。って、ああ、半日でしたね。
楽しかったな。懐かしいな。

ホロウさんと私って多分、ずっと良い友達でいられる気がするのです( ゚Д゚)
ホロウ・シカエルボク
>きりえさん

思いが強すぎて縛られちゃう、へんな言い方をすれば現実的でない、なんて、そんな感じがしますよね。


ところで、わたしは、きりえさんのエピソードを聞いて、半日近く東京駅周辺をふたりで歩いたことを思い出しました。

懐かしいw
あれ何年前だ?もう
ミクシィ始めた年だから…

8年前!ひゃー。
きりえ
http://kirye-fan.seesaa.net/?1380220078
『純粋』の取り扱い方は際どいというか、それ故幸せになれないという面がありますね。

ところで、
私はこれを読んで、上京して一番最初に出来た当時の彼と一緒に深夜、新宿から徒歩で二時間半ほどかけて自宅に帰宅したことを思い出しました(*'▽')
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