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不定形な文字が空を這う路地裏

古い苔むした忌々しい橋を渡るとき麻痺した頭で僕が考えることは


古い苔むした忌々しい橋を渡る
スニーカーなんかで来たことを僕は後悔する
古い苔むした忌々しい橋を渡る
僕はくたびれていて上手く渡る自信があまり無い
その橋は切り立ったふたつの断崖を繋ぐためのもので
どうしてこんな大事な場所にそんな橋しかないのだろうと僕は不満に思う
橋は風に揺れてぎぃぎぃと不細工な鳥のように鳴いている
はるか下の谷底では荒々しい馬のような濁流が海を目指している
古い苔むした忌々しい橋は
自分がそんなみすぼらしいなりであることを少しも気にしていないようだ
私がどんななりであろうとあなたがあちらに行きたいのなら私を踏みしめていくしかないのだからと
風に揺らぎながら僕に笑いかけている
僕は何度も決心する、古い苔むした橋は
なんだか僕を裏切って谷底まで送り届けようと目論んでいるみたいで
古い苔むした橋は枕木のような足場を見せつける、大丈夫だよ
心配要らない、私は向こうに渡るために造られたものだから
僕にはそれが牧師の話すことみたいに聞こえてどうにも信用が置けない
鳥が鳴きながら木々の間を飛び交う
もっと強そうなものが見当たらないところで鳴いている
このままここに居てもらちがあかないと思って
今度こそ僕はきちんと決心をして古い苔むした忌々しい橋に向けて足を踏み出す
古い苔むした忌々しい橋は僕の最初の一歩を受け止めてワーオ、と声を上げる
その軽薄な調子については僕は何も気に留めないことにした
古い苔むした忌々しい橋を渡るとき麻痺した頭で僕が考えること
どうかこの橋が僕を裏切ったりすることがありませんように、それから
どうかいつか帰ってこようと思ったときにもこの橋が僕を受け止めてくれますようにと、そして
橋がどんなものであれ渡るというのはなにがしか気持のいい行為であるということ
本当ならば在りえない中空に僕は存在しているのだということ、この次もしもこの場所でこの橋に誘われたときには
それがたとえ忌々しい裏切りを含んでいたとしても僕は迷い無くこの橋に足をかけるだろうというようなことで
古い忌々しい橋を渡るときに麻痺した頭で僕が考えることは
つまりは渡ることを躊躇っていたときには思いもよらなかったような事柄だったのだ
橋は僕の足を受け止めて不細工な鳥のようにギイギイと鳴いていた

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