不定形な文字が空を這う路地裏

last call




砂埃にまみれ辛苦が戯れの様に五感を食い荒らす午後に
憧れを見事に統率したままのお前のピュアな欲望に再び停泊した
半端な放蕩息子、俺の息は切れ切れ、笑えるほど慈悲深く瞳に光を宿すのはよして
ここに帰ってくるために、すべてに背を向けて生きてきたわけじゃない
純粋さでは何も手に入れることなんか出来ないぜ、ぺティーナイフのひとつでも俺に突きつけてみたらどうなんだ
もの言わぬ穏やかな背中、タフなベーコンが狐色に変わる匂い、それは俺にある種の永遠を感じさせる
そんなものあってはいけないとずっと信じてきたこの俺に
みすぼらしい身体を引きずり、何を見つけようとしていたのか、午後の日向の中で引っくり返る天地
今欲しいものはただ骸の様な眠り
南の方の内戦地帯で出会った女のことをぼんやりと思い出す、彼女はあらゆる意味で最高だったけど
今ここで胡椒を引く女の様な奇跡は一度だって見せてはくれなかった
懐かしいキッチンに悟りの煙が上がる、夢物語にいいように操られ俺はこの景色を見誤っていたのだ
木目が剥き出しの樫の木のテーブル、俺は両肘をついて
二日前には蜃気楼だった光景に魅入られる
あれはお前が見せたものだったのかい、それとも俺が
どこかで強くそのことを欲していたとでも言うのだろうか?
クラシック・ラジオからおあつらえ向きのメロディー、爪先でリズムをたどるが
ほつれた靴底じゃ大して弾みはしなかった
いつかの続きの様に振り返るお前の、両の手に乗せた大皿の中のベーコンエッグ、それにサラダ
ほんの少しのマスタード、それにレモンを添えて
とたんに時間が動き出すのを感じる、どうしてだろう
何でもいいから言葉にしようとしたけれど、「召し上がれ」とお前が言うのが先だった
空腹の極みの筈なのに俺は何故か教えを請う様に長く長くそれを見つめてからフォークを突き刺す

光は
確かにそこにあった

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