不定形な文字が空を這う路地裏

咆哮の特性

 

 

街では亡者たちがうろついてる

目的を忘れた間抜けたちの群れだ

どんなに掃除をしても街路は汚れ続ける

どんなに愛が溢れても醜い憎悪に変わる

焼き立てのパンにピーナッツバター

幸せの理由なんてその程度しかない

あっという間に埃まみれになる床に掃除機をかけながら

ラジオで流れる交響曲に唾を吐きかけてる

女は鏡の前から離れない

悪い酒を飲んだみたいにうっとりとしている

何かを塗るたびに喘ぎ声を出して

そいつが耳障りで仕方がないんだ

 

紋切り型の正義しか守れない

そんなやつらが万引き少年の利き手を手首から切り落とす夕方

石畳にパッと赤黒い花が咲いて

そのまま放置された少年の泣声は明方まで続くだろう

悪が悪を裁いたところでなにが生まれるんだ

世界大戦のあとで変化した事柄について思い出せないのかい

皆俯き加減に、聞こえない程度に毒づいて

オンラインゲームの中でだけ暴君になれるんだろう

決して交錯しないアクセスの中で

「オンライン」なんて皮肉な話だね

戦争しかないのさ

愚民どもに最適なアイデンティティなんて

 

廃れた飲み屋街には老婆のホームレスが居る

彼女は昔その界隈じゃ有名な占い師だった

明日の天気以外はすべて当てることが出来たって話だよ

不景気になって干されたのさ

オカルトなんて今だって幸せな時代の余興でしかないんだよ

いつだったか、結構遅い時間に

彼女が潰れたバーのカウンターでなにか

儀式めいたことをしているのを見たことがあるよ

彼女が今でも力を失ってないのなら

黒山羊の干首と蠟燭の炎に

彼女が込めてる願いはいったいどんなものなんだろうね?

 

天変地異や核ミサイルの着弾を

本心じゃ誰も彼も待ち焦がれているのさ

フローチャートに乗り損ねた人生のリセットボタンを

押してくれるおせっかいな何かを待ち焦がれている

なにもかも間違えたって本当はわかっているのさ

だから無責任な希望の歌ばかりこの世には溢れている

本当の欲望は絶望をも飲み込むからね

それが正か邪かなんてこだわる必要はないのさ

生きることは汚れることだ

大切なのは新しい服を身に着けるみたいに

新しい知識を飲み込むことが出来るかってことだけさ

したり顔なんか知ったこっちゃない

悟りを開いたら即身仏になるぐらいしか

やることは残されちゃいないはずじゃないか

 

ぶっ飛べ、回転数を上げて

澱んだ血液をすべて入れ替えるのさ

秒針みたいに生きることなんて本当は無理なはずなんだ

ひとつの意識である限り

何かに従って生きることなんかない

飛ぶことの出来る翼のあるものは

駆けることの出来る脚のあるものは

泳ぐことが出来るヒレのあるものは

行先に迷うことなんて決してない

世界は、百年程度じゃ見尽くせないくらい広い

どれだけ強欲になったところで

食らいつくすことなんて出来ないんだぜ

 

お前がお前である理由、俺が俺である理由

フルコースでテーブルに差し出すことが出来るかい

そいつは皆が舌鼓を打つくらい美味いものなのかな

存在が生み出したオンリーワンのフレーズがそいつの喉を通過する時

個体である宿命を超越するようなマジックを生むことは出来るかな

言い訳を続けたっていつか首が絞まるだけさ

自分自身になれないのなら人生になんてまるで意味はない

出来のいい話じゃなくたってかまわない、それは真実の判断基準じゃない

ただただ貪欲に、暗中模索の中で手当たり次第に食らいついて

血肉になったなにかから生まれたものだって証明出来たらそれだけでいいのさ

お前がお前である理由、俺が俺である理由

お前がムキになって俺のことを否定するのは

お前が本当は誰かの操り人形に過ぎないんだって本当は知っているからじゃないのかい

 

ぶっ飛べ、回転数を上げて

昨日行けなかった地点まで転がっていくんだ

誰にでも言えるような言葉に耳を貸す必要なんてない

自分の心の中でざわついているものだけを信じればいい

俺が俺である理由、生きている限り更新され続ける理由

俺を愛し続ける理由、俺を欺き続ける理由

いつだって初めての地平で、地図なんか要らない

思い通りに歩いて、あらゆる場面の中に

俺は彷徨い続ける、てめえの首に太い首輪と長いリードをつけて…

 

 

 

俺は、俺の魂の犬だ…

 


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