最後の雪のように
ねじまき時計の稼働音が降り積もる夜中
俺の右目は殴り書きのように
充血して僅かに傷んだ
水面下の憤怒を何度滅ぼそうとしても
胃袋がこむら返るばかりで
手のひらで押さえつけて
無様な今日が終わるのをただ待っていた
音楽を止めたらそこには何も無かった
音楽を止めたらそこには何も無かったので、俺は腐った眼球を掻いた
瞬きをすると睫毛が
まぶたの裏側に潜り込んで
果てしなく涙が流れた、制御出来ないものが
そんなふうに流れつづけるのだ
目薬をさしたら酒のように染みた
今夜訪れたどんなものにも
俺は言い訳することが出来ない
ある意味で今夜の眠りが保証されないことにはとっくに気がついていた
無記名の喪失の
上に
構築された休日、ぶるぶると震えながら
笑顔を浮かべている痴れ者の
ギシギシに硬直した毛細血管の、振動から生まれる
リズム
リズム
リズム
リズム
お終いの音はよく鳴る
お終いの音はよく鳴るよ
反復が途切れるだけで、何かが裏切られた気がする、黒い波が打ち寄せる砂浜で
想い人の亡骸を抱いた
気の触れた女のような緊張の末路、冷えの戻る4月に
蝋のような思念が凝縮して出来た
壁の上のスクリーンに映るものを見ている
エンド、夢を見ていたんだ
血を吐くような長い傷みが続く夢を
エンド、ミルク色のコールタールの、中で
諦めないということについて考えることを忘れた
諦め続ければ
それは継続と言われはしないのか
エンド
ねえ、エンド
お前というお終いがスクリーンに描く経度
昨日と今日の感情を行ったり来たりしながら、ゆっくりとお前が踊るのをずっと見ていた
金属がこすれ続けるような
ファンファーレと歓声が聞こえて
それは毛細血管の音だ
それは毛細血管の音だよ
無記名の喪失がそれの後で嬉々として奏でるどうしようもない複合だ
リズム
リズム
リズム
リズム
寝床の底に沈むたびに
ああ
想い人の亡骸のような手、手を取って、早く早く
異相の寝床に溺れてしまわないうちに、お前の海にすべてを塞がれてしまわないうちに
ああ
恐れることが出来ない
長いことそれにつきあい過ぎたから
友達のように見とめてしまう
生と死の間の
わけの無い沈澱、そいつが落ち着く、そいつのところに居ることが一番
しっかりと手を取ったら、微笑んでくれ
なにも保証なんて
しなくても
かまわないから
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