不定形な文字が空を這う路地裏

イントロダクションⅡ









それは訝しんでいるような躊躇
それは画策しているような沈黙
それは放棄しているような弛緩
宿命とは有限の生体組織のありったけで空を掻くことだ





俺は知っていた、俺の喉笛に陰鬱な手をかけるものは
膿んだ血を閉じ込めたような報われなかった純粋の数々―殴打し尽くされた感情の肉玉





哀しみの塊は夜にこそ蠢く、聞きたくも無い記憶を囁きながら
届かない指先こそが愛だとでも言いたげに




夢を見ていたんだよ、夢を見ていたんだ
暖かさがやけに不快な掌の側だった
絶望の後にピリオドを打ちたくないのなら








もう一度ここで唄わないか?






俺は屍骸になど成りたくは無い、どんな痴態であろうと
一粒残らずこのリングに投げ入れる
何処にも希望など無いんだ
だから生きてゆくことを選んだ





血にまみれた種の発芽だ
胎盤を貫いて鎌首をもたげる
俺の欲望がその先端でつらつらと光りを弾いて…それはまるで風に騒ぐ湖面にばら撒かれた太陽のようじゃないか




みんな生肉を屠りながら生き延びてきたんだ
鼻腔をひん曲げる臭いの中にこそ輝くものがある




それを何の為に俺は握り締めるんだろう…




腐敗しろ、俺達は汚れながら
あても無い行進を続ける兵士だ
弾の尽きた銃を掲げて
銃創からファンファーレのように血を吹き上げながら





阿呆のように虚空に唄い続ける、そこには永遠があるんだ、そこに産まれるわずかなディレイ・エコーの中だけに




救いといえばそう呼べないことも無いような何かがにやりとしていたような気がする








そして気が触れたような茜色の太陽が掻き傷だらけの地平線の向こうへ沈むとき
銃口を空に向け自分だけの国歌を唄った
母性のような風が海の向こうから静かに吹いて







そのとき俺は確かに本当の韻律を心に留めていたんだ







思い出そうとするほどに混ざり物が多くなってゆく











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