不定形な文字が空を這う路地裏

明日ここに捨ててゆく花を選ぼう








明日ここに捨ててゆく花を選ぼう
あまり綺麗じゃなくて
だけど見過ごせない
咲くよりは枯れるために
生まれてくるようなそんな花を
俺の言葉の代わりに
俺の人生の代わりに


時は流れゆくものだと
幾つものフェバリッツが掻き回したやるせないフィーリング
そんなもののために便箋の前で頭を小突きまわすよりは
近くの河原に出て
そんな花を選ぼう


俺の側にあるものはいつでも
はぐれた子犬のようについてきた灰色ばかりで
何かしら本当のことを言おうとすると
そいつがゆっくりと喉に指を喰い込ませた
嘘をつかなくちゃ生き延びてゆけない
そんな人生だってどこかにはあるものさ
それでいいんだと思えるほどには
俺は自分を割りきれなかった


ほんの少し出かけてくるよ
なにかを形にすることが出来たら
馬鹿みたいにニヤつきながらここに帰ってくる
楽しみにしてろとは言えないけど
余興みたいに待っていてくれたらありがたいと思うよ
明日ここに捨ててゆく花を選ぼう
プレゼントを贈るみたいに
コンセプトと誠実さで
あまり綺麗じゃなく
だけど見過ごせない
俺の言葉の代わりになるような花を
俺の人生の代わりになるような花を


さっきから何度も時計を眺めてしまうんだ
心に不安を隠しているとそうなってしまうものさ
一分がこんなにゆっくりと過ぎるとは思わなかった
長針があんな風に
なにかに躓くみたいにゆっくりと傾いているなんて


窓の外は夕暮れ
薄い赤がガラスに張り付いて
毎日にベールをまとった
俺のことを不思議そうに眺めている
お前の目的はあまりにも判りやすくて尊いから
俺が抱えてるもののことなんて想像も出来ないんだろう
世界を染めるのに飽きたら俺のところに来なよ
すっきりしないもののことならいくらだって話してあげられるぜ


明日ここに捨てていく花を選ぼう
あまり綺麗じゃなくて
だけど見過ごせない
俺の心がどこかに浮かび上がる時
誰かが俺のことをそんなふうに考えてくれるといい
明日ここに捨てていく花を選ぼう
それは俺のすべてについて話すことが出来る花だって考えてくれ
夕日があるうちに
夕日があるうちに
明日ここに捨ててゆく花を
夕日よ
もう少し待ってくれ
もう少しやらなくちゃいけないことがあるんだ
明るさが残ってるうちに
まだ花の形が
この目にはっきりと映っている間に

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