『切手シリーズ』その64。日本切手に描かれた在外地域の風景を取り上げてみる。その前に1930年5月に発行された第二回国勢調査記念の切手を冒頭に貼ったが、当時は台湾・朝鮮・南樺太・そして日本固有の領土であった千島列島は日本の領土であった。戦前の日本の切手の何枚かにはこれらの風景が残されている。
最初は1923年4月の皇太子台湾訪問記念の記念切手に新高山(玉山・ユーシャン)に描かれたものである。実は新高山は富士山より高い標高3952mあり、当時の日本の最高峰であった。
実は第一次国立公園シリーズでも1941年3月に大屯・新高阿里山国立公園(現、陽明山国家公園、玉山国家公園、阿里山国家風景區)と次高タロコ国立公園(現、太魯閣国家公園・雪覇国家公園)の切手が計8枚発行されている。
いずれも1色グラビア印刷で高い技術の素晴らしい切手である。
他にも台湾の風景が切手となっているのが、第1次昭和切手(色違い、額面変更で第2次昭和切手でも使われた)として6銭切手の図案として台湾最南端にあるオーロワンピ(ガランビ・鵝鑾鼻)灯台が描かれている。日本統治時代は帝国最南端の灯台として台湾八景の一つに数えられていた。
そしてもう一つが北朝鮮の名勝地『金剛山(クムガンサン)』である。これも第1次昭和切手の7銭切手として1939年10月に発行されている。
しかし、風景が用いられたのは第1次昭和切手(一部は第2次昭和切手)までであり、図案として『大東亜共栄圏』『少年航空兵』『箱崎宮の敵国降伏の勅額』、さらに終戦の年に発行された第3次昭和切手には『旭日と飛燕という戦闘機』まで描かれている。
しかし、なぜか北方領土を描いた切手は発行されていない。ただ、1987年に発行された登記制度100年の記念切手にはちゃんと千島列島は描かれている。