放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

一関気仙沼南三陸紀行(7)歌津から志津川

2016年10月21日 01時51分53秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました
 気仙沼のリアス・アーク美術館を出たとき、更に陽は傾いていた。もう午後4時をとっくに廻っている。これから志津川まで移動しなければならない。ひとまず国道45号線に出ることだ。
 ところがまた道に迷ってしまう。
 どうしてこんなに道がぐにゃぐにゃなのー? まるでリアス地形の等高線に沿って道が出来ているみたい。曲がりくねって曲がりくねって、眼下に国道45号線が見えているのに寄ったり離れたり・・・。ってか地図見ろ。
 やっと国道に(信号のないところから)車を無理やり突っ込んだ。とにかく急がないと。志津川のお宿に5時着はほぼ不可能。BELAちゃんが遅れる旨をお宿に伝える。ぼくらの旅は、ほっつき歩いてばかりだからいつも遅れが出る。つくづくツアー向きじゃない。
 ひたすら国道を南下。
 はじめは真っ直ぐだった国道も、歌津のあたりからだんだん昇降を繰り返すようになる。
 リアス海岸(このごろ「リアス式」とは言わないようで・・・)は、例えるならばピアノの鍵盤上を走っているようなもの。白鍵から黒鍵にあがりまた下がる。上がって下がるを繰り返す。そして下がるときに必ず目にするのは、「津波浸水域」を示す案内板。低い所はかならず波に襲われている。こんな狭いところに波が押し寄せたのだ。みんなどうやって逃げたのだろう。
 破壊されたままの住居、一方で高台には何事もなかったように立派なお屋敷が建っていたりする。被害を受けた家は、さぞ辛かっただろう。被害を受けなかった家は、さぞ心苦しかったことだろう。生き地獄の浜道を、何も知らない観光客がとおり過ぎる。
 気仙沼行きのバスとすれ違う。このあたりは鉄道も被災したからバスが志津川から気仙沼までの連絡便を担っている。BRT方式という。

 ぱっと視界がひらけて、海がはっきり見えた。これまでは丘のすきまからちらっと見えるくらいで、少し海から遠いなと思いながら走っていた(それでも津波は来ている)が、今、国道45号線はまっすぐ海に向かっている。と、思ったら、右折の表示。正面は封鎖されていて道は不自然に90度右に折れている。ここは歌津大橋があったところ。
 橋は津波をかぶり、引き潮のときに流出した家屋がつぎつぎに衝突した。波が収まると、もう橋はなかった。津波は最高で15メートルを越える高さに達したという。このあたりもすっかりサラ地だが、震災前は民家がずらり建っていた。
 右折してすこし山沿いに入る。小高い丘の後ろをぐるりと迂回する道。驚いたことに、ここも波をかぶっている。伊里前とよばれる地域はほとんどが津波に呑まれていた。高いところを走る南三陸鉄道の駅もこわれたまま。復旧の見通しは立たず、このままでは廃線が決まってしまう。

 伊里前復興商店街前を通過。この時間では寄るのはムリでした。予定コースだったんだけどなぁ。

 再びピアノの鍵盤上を走るようなアップダウンが続く。またBRT方式のバスに出会う。そんなに乗っていない。
 せっかく寄ろうと思っていた寿司屋さんもお店もみんなとりあえずパス。ひたすら志津川を目指した。

 やがて山地が割れて川沿いを走るようになる。その先にまた海岸が見えてきた。このあたりも宅地でいっぱいだったはず。けれど今はどこもサラ地。
 ちいさな分岐路、そこに久しぶりに見る信号。左折すればきっとベイサイドアリーナがある。映画「ガレキとラジオ」の舞台となった災害ラジオ「FMみなさん」がそこにあった。
 映画はその後いろいろなことがあったようだが、災害ラジオは意味のある活動だったと思うし、被災した町の真ん中でそれを続けていた事実は、誰にも否定できない。多くの災害ラジオがそうであったように、修羅の日々にほんの少しの安らぎと有意義な情報を届けよう、災害に負けない元気と少しずつ進む復興を少しでも感じられるように、と活動していたのだから。

 再びR45号線を南下。
 視界はどんどん広くなる。ここが志津川だ。かつては漁業の町だったはずだが、今はまるで巨大な工業地帯のよう。特に海岸には幾つもの足場が建てられ、大規模な工事の真っ最中。あの南三陸町防災庁舎も足場に囲まれていまはもう近寄れない。ここには巨大な堤防が造られる。堤防だけではない。街全体のかさ上げを行っているのだ。
 さんさん商店街のそばを通り、ちょいとややこしい道をくねくね、志津川湾を左手に見ながらぐるっと海岸を向こうまで走る。
 やっと今日のお宿に到着。時刻は午後6時ちょっと過ぎていました。
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