生体肝移植が選択できた幸福

B型慢性肝炎から肝硬変・肝臓癌となり生体肝移植を受けることとなった医師によるブログ

MRIエラストグラフィー

2014-04-27 16:58:58 | 胆管狭窄の治療(移植後6年目)
 発熱も落ち着いたので、前回のステント入れ替えの時に行ったMRIで肝硬変の進行度を評価できるといわれているMR Elastography(エラストグラフィー)を紹介したいとおもいます。


 生体肝移植を受けられる方のほとんどは、肝硬変が重症化している方だと思います。原発性胆汁性肝硬変などの先天性疾患や、ウィルス性肝炎等の後天性の慢性炎症により、肝臓に繊維化が起こり肝硬変に移行していきます。正確な繊維化の程度は”肝生検”を行い、病理学的に評価されていましたが、侵襲的な検査であるがゆえの出血や胆汁漏のリスクがありました。

 何よりも、おなかに針をぶすっと刺すのが怖いです・・・私が・・・何度やっても


 そこで、非侵襲的な肝硬変の程度を調べる方法についていろいろ考えられてきています。

1)採血でわからないか?
 血清マーカー(ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン)、血小板数:あまり正確ではない!

2)機器を用いた肝硬度測定による線維化判定
物質の硬さと波の伝搬速度の関係をみると、繊維化の進んだ肝臓(硬い物質)と正常の肝臓(軟らかい物質)を比べたとき、硬い物質の方が波を早く伝える性質がある事がわかっていました。そこで、外来で行われている超音波(エコー検査)を使用した方法が開発されました。針を刺す事もなく合併症もなく、痛くもありません。しかし、肝臓全体まで音波が届かないため、お腹の方の肝臓の評価はできますが、背中の方の深いところの肝臓は検査できませんでした。
 そこで、MRIを用いて肝臓の弾性率を測定して肝臓の硬さを測定する方法が開発されました。それがMR Elastographyです。1995年頃に原理が発表され、2009年にアメリカで臨床実験が始まり、2010年に国内でも臨床実験開始・2012年に日本で発売開始となっています。


 MRIを撮影するのと大きな相違はありませんが下のような振動を発生するパッドを肝臓の前あたりの腹部にしっかりとバンドで圧着します。



 これは、室外のコンプレッサーから空気を送り込み細かな振動を発生することができます。これを振動させると、けっこう大きなバイブレーションを感じ、初めての方はびっくりするかもしれません(私はすんごくびっくりして、心臓が止まるかと思いました・・・びびりですので・・)。その状態でMRIを撮影し処理をかけると、波の形(波の伝わる早さ)が画像化され以下のような絵になります。波打っていますね!波の間隔が細かいと遅い波(軟らかい)間隔が延びてくると早い波(硬い)となります。最初に、その時に撮影したMRI写真を示します



次に移植された肝臓の輪郭(黄)と、ずーっと拡張している胆管(緑)とその領域(オレンジ)を示します。



次は、パッドから振動派を流して撮影した、波の画像を撮ります(黄は肝臓の輪郭)。



 これに、計算を加え波の点播速度から肝臓の硬さを計算すると以下のような写真となります(黄は肝臓の輪郭)。サーもグラフと一緒で、寒色系(青)は硬度は低い部位で暖色系(黄・赤)は硬度の高い部位に相当します。拡張部の周囲肝の硬度がきれいに上がっているのが解ります



 以前から、拡張していた部分の肝臓については、興味があったのですが、その部分のみ肝臓が硬いので、機能低下を示唆している結果であり納得できました。アシアロシンチなどで、残りの肝細胞量などと合わせればおもしろい結果が出るかもしれません。

以上です。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿