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オンラインシンポ「『雇用によらない』働き方を考える~Uberイギリス最高裁判決から~」

2021-06-15 | 書記長社労士 公共交通

 6月10日、交通の安全と労働を考える市民会議―「ライドシェア」問題を考える―Forum for Traffic Safety and Labourは、日本労働弁護団共催にて、オンラインシンポ「『雇用によらない』働き方を考える~Uberイギリス最高裁判決から~」を開催した。
今年2月19日、イギリス最高裁判所は、Uberドライバーが労働者であり、最低賃金・有給休暇などの保護がなされるべきとの判決を出したが、このシンポでは、今回この裁判の原告ジェームズ・ファーラーさんをお呼びし、裁判の内容や経過について報告を受け、ギグワーカーの保護のあり方等について考えた。

 開会にあたり、代表世話人の一人、宮里邦雄氏(弁護士、日本労働弁護団元会長)は、「新型コロナウイルス感染症の拡大は、2008年のリーマンショック以上に、多くの雇用を奪っているが、一方で、ウーバーイーツをはじめ、ギグワーカー、プラットフォームワーカーと言われる『雇用によらない』働き方が急速に拡大している。しかしこれら雇用によらない働き方をする人は、我が国では個人事業主とされ、労働基準法、最低賃金法、労災も適用されず、すべてが自己責任となっている。さらに労働者に保証されるべき労働団結なども否定されているが、諸外国ではこれら労働者を保護する判決が相次いで出され、法改正も行われている。今日のシンポジウムではこうした働き方、働かせ方についてどのような取り組みが行われているが、諸外国の先進的な取り組みを学ぶ機会にしたい」と呼びかけた。



 James Farrar(ジェームス・ファーラー)さん
「UBERは単なる予約業者であって運送事業者ではないと主張する。
労働者の権利に責任は負わないし、乗客の権利に対する責任も負わず、乗客に対する責任はドライバーが負う。
税金もUBERは払わず、ドライバーに払わせるが、ドライバーも収入が10万ポンド以下なら払わない、UBERは税金を回避している。
プラットフォームは供給を過剰にする、ドライバーの数が多くなると料金を下げる、ドライバーは収入が下がるが、UBERは規模の拡大で稼ぐ。
イギリスの最低賃金は7ポンドだが、1時間に5ポンドしか稼げないが、キャッシュフローに気付いていない労働者は多い。
自動的に配車されることは、ミニキャブよりも公平だと思っているドライバーも多い。
UBERはフレキシビリティ(柔軟性や融通性を有している)と思われているが、アルゴリズムによる管理にフレキシビリティなどない。
自分の自由の時間に自由な場所で働けるというのは『幻想』だ。
何処でも働けるのではない、アルゴリズムに働かされているし、90時間働いて500ポンドなら、500ポンドで90時間という人の時間を奪っているのであって、UBERで無ければ500ポンドを45時間で稼げるかも知れず、UBERに自由はない。
ギグワークというのは、余った時間に働いているのではない、その時間は労働している時間だ。
私たちの運動によって労働者としての権利を獲得すると、同時に自由を失うという人もいるが、そもそも自由は幻想であって、ないのだ。
UBERは、仕事の割り当て(Work Allocation)、パフォーマンス、監視(Surveillance)をすべてマネージメントコントロールしている。
①自分は本当ならいくら稼げたのか、②自分の時間と車両は本当ならもっと活用できたのではないか、③与えられた仕事の質や量はほんとうならどれほどの価値があったのか、④契約解除された本当の理由は、これが、UBERのデータの価値評価を行う重要な鍵だ。
オランダで係争中の裁判では、アクセスの基準を設定する、アルゴリズムの透明性、自動化された決定を不服申し立ての根拠とすることなどが争点となった。
私たちがこの闘いで学んだことは、抵抗を乗り越えるのには時間と忍耐、そして良好な計画が必要であること、また、法廷闘争で足りることは決してないということだ。
成功に必要なのは、継続的なプレゼンス・組織化、恒常的なコミュニケーションとアドボカシー(一人ひとりが問題について知り、その原因について声をあげ、 解決のためにできることを訴えていくこと)、行動・法廷闘争、ストライキ、抗議であるが、それぞれが複合的になっていなければならない。
私たちは一貫性を失わなかった、5~6年、一貫性を持って闘ってきた、そのことによって信頼を勝ち取った。
常に存在感を発揮することが重要だ。
ウーバープラットフォームは世界各国ですべて共通している。一つの国の組織として闘うのではなく、皆で共にアプローチしていく必要がある。イギリスの仲間として共に頑張っていきたい。」



 背景を解説しておく。
英国のタクシーは「ブラックキャブ」の愛称で親しまれているが、そのライセンス取得は世界一難しく、試験に合格するものは受験者の3割に過ぎない。運転手は独立事業主だ。これに加え、予約専用の配車サービス・PHV(プライベート・ハイヤー車)がある。ブラックキャブより割安で、通称「ミニキャブ」と呼ばれている。タクシーの供給が不足していたロンドン郊外で1960年代から普及し全国へ広がった。長年白タク同然だったが、2001年から規制を設け、5年毎の更新を要する営業免許制とした。こちらも運転手は独立事業主扱いだが、ブラックキャブのような厳しい資格審査はない。
 ウーバーは世界中でタクシー業界に殴り込みをかけ、一般運転手が自家用車を使うライドシェアを強引に広め、「法律は後からついてくればよい」とうそぶき、違法サービスを正当化してきた。だが、英国では規制のゆるい「ミニキャブ」として営業する道を最初から選んでいたのだ(だからこそ、ロンドン交通局から2回もその免許更新を拒まれたことは大問題なのだ)。
 典型的なミニキャブ運転手は、週単位で会社に仲介料を払う見返りに、コントローラーと呼ばれる係から配車を受ける。ブラックキャブと大きく異なる点だ。運賃は事前に会社が設定しており、運転手は運賃収入から、仲介料、ガソリン代、車両保険などを負担する。車両はマイカーの持ち込みが一般的だが、会社からリースできる場合もある。仕事の始めと終わりを自分で決められるなど、好きな時間に働けることが魅力だと言われる。

 英裁判の原告は、元ウーバー運転手のジェームズ・ファラー氏とヤシーン・アスラム氏を筆頭とする 25人。ファラー氏は 2015年3月に乗客から暴行を受けた際、「仲介サービスのウーバーは事件と無関係」という会社の主張に納得せず、10週間かけて加害者の情報を警察に提出させた体験が、ウーバーとの雇用契約を考えるきっかけとなった。アスラム氏は同じ頃、安全問題に関わる会社のシステム不備をマスコミに告発したところ、アカウントを一時停止された。この前後にも組合運動に関わり、ウーバーからアカウントを一時停止されているが、英労働法では独立事業主は内部告発から保護されないため、労働者(就労者)として認定される必要性を感じていた。
 ウーバーは同年9月、英国で初めて一方的に手数料を引き上げたが、両氏はこれに抗議する集会などに参加していく。それ以前から会社は運転手をどんどん増やしたり、運賃を引き下げており、収入が法定最賃に達しない運転手が続出していたからだ。ファラー氏の場合、諸経費を差し引いた収入が時給換算で5.03ポンド(約755 円)だっ た月もあるという。当時の英最賃は、7.20ポンド。
 こうした経験を経て、ファラー・アスラムの両氏は、大手組合GMB(全国都市一般労組)の支援を受けながら、「ウーバー運転手は独立事業主ではなく、最低賃金や有給休暇を享受する権利を有している」という訴訟を起こす。雇用裁判所の審理は、2016年7月20日に始まった。
 それから4年半、2月19日、ウーバー運転手の労働者性を認める判決を下した。6人の判事は全員一致で、「運転手は就労者( worker )」という原告の主張を支持し、運転手がアプリにログインしている間を勤務時間とみなすべきと結論付けた。
ウーバーは、2016年10月に雇用裁判所で敗訴して以来、4連敗となった。「運転手は独立事業主」とか「事業は予約代行サービス」という同社の主張は、初審から「ばかげたもの」と退けられ、裁判で一度として認められることはなかった。判決は、運転手が会社に従属している根拠として、改めて次の点を挙げている 。
〇 ウーバーが運賃を決め、運転手が稼げる金額を設定している。
〇 ウーバーが契約条件を設定し、運転手側に発言権がない。
〇 乗車リクエストはウーバーに制約されている。ウーバーは運転手があまりにも多く乗車拒否した場合にペナルティを課すことができる。
〇 ウーバーは5つ星評価を通して運転手のサービスを監視し、警告を繰り返しても改善されない場合は契約を終了する権限を持っている。
 英裁判で原告が認定を求めた「就労者(worker )」とは、 労働者( employee )と 個人事業主( self employed )の中間に位置づけられる英国独自の雇用類型だ。英裁判で原告が従業員ではなく就労者の地位を追求したのは、「それが組合員の求めたことだったから」とファラー氏は解説する。背景には、多くのウーバー運転手が「ミニキャブ」出身者だったという英国独自の事情があるという。


 シンポジウムではその後、市民会議事務局の木下徹郎弁護士の進行で、ウーバーイーツユニオンを支えている川上資人弁護士、日本労働弁護団の管俊治弁護士、ITF(国際運輸労連)の浦田誠部長が、参加者の質問なども踏まえて、ジェームスさんとディスカッションを行った。
今回のシンポジウムでは、全体で160名、内訳として、事業者や労働組合関係以外に、国会議員7人、労働弁護団から37人、大学関係者や学生が25人、マスコミ関係10人などの参加があった。


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