昨日も大阪労働大学、17回目(出席13回)の講座は梶川敦子神戸学院大学准教授の「賃金」、おー
なんてストレートなお題なんだ
はじめに、
賃金請求権にかかわる問題、
賃金に関する法律規制、
賃金の減額にかかわる法的ルール、というテーマで話されて、まさか今さら賃金についてこんだけ新しい発見があるかと思うくらい、ほんとうに興味深い点がいろいろあって、このブログではどの部分を取り上げようかと悩むところなんだが。自分も講義後に講師のところに質問に行ったけど(同じ質問をしに行った人がたくさんいたようだ)、「通勤手当」についてメモしておこうっと。
労基法上の賃金(労基法11条)とは、「①名称の如何を問わず、②労働の対償として、③使用者が労働者に支払う」もので、行政解釈では、①任意的・恩恵的給付、②福利厚生給付、③業務遂行のために企業が負担すべき業務費用等は賃金に当たらないと解されている。③の業務遂行のために企業が負担すべき業務費用等とは、例えば作業服や出張旅費など、では通勤手当はどうなのか?通勤費用はそもそも労働者が負担するものと民法上解されているから、通勤手当は「業務遂行のために企業が負担すべき業務費用」ではなく、賃金に当たるのだ、らしい。
根拠条文=民法485条【弁済の費用】 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
労働者が労働を提供すること=「弁済」という法律行為。労働義務を負う労働者=「債務者」に該当。通勤の費用=「弁済のための費用」に該当。ということで、特に会社との取り決め(別段の意思表示)がない限り通勤費用は労働者が負担するというのが原則になるんだそうだ。しかしこれじゃあ誰も来てくれないってことで、会社が別段の意思表示をして、「通勤手当を支給するとしている」という解釈、だから「企業が負担すべき業務費用」ではなくて賃金。そうか、これを根拠にして以下のことがあるのか~、なっとく。
☆ 平均賃金を算定する時に通勤手当を除外することは違法(S22.12.26基発573号)
☆ 健康保険・厚生年金・労働保険の保険料では賃金に含まれる。
☆ 通勤定期乗車券を現物支給する場合には、賃金の通貨以外での支払いとなり労働協約に定めが必要(労働組合のない事業場で定期券などの現物支給は出来ない S63.3.14基発150)
しかし、割増賃金の基礎となる通常の賃金には通勤手当は算入されない。ここでの注意点は、それでも算入するのは当事者の自由なこと、そして労働者の通勤距離または通勤に要する実際費用に応じて算定する手当のことをここでは通勤手当とするので、距離にかかわらず一律に支給する場合には、実際距離によらない一定額の部分はここでいう通勤手当ではないので、割増賃金の算定基礎に参入しなければならないこと。(S23.2.20基発297)ところで税法上では通勤手当の実費弁償、経費的な性格を考慮して一定額までは非課税とされているよね、これが原則で、割増賃金の件以外の労働法や社会保健関係の解釈が変(例外)だと思っていたけど、どうもそれは逆だったんだ。






労基法上の賃金(労基法11条)とは、「①名称の如何を問わず、②労働の対償として、③使用者が労働者に支払う」もので、行政解釈では、①任意的・恩恵的給付、②福利厚生給付、③業務遂行のために企業が負担すべき業務費用等は賃金に当たらないと解されている。③の業務遂行のために企業が負担すべき業務費用等とは、例えば作業服や出張旅費など、では通勤手当はどうなのか?通勤費用はそもそも労働者が負担するものと民法上解されているから、通勤手当は「業務遂行のために企業が負担すべき業務費用」ではなく、賃金に当たるのだ、らしい。
根拠条文=民法485条【弁済の費用】 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
労働者が労働を提供すること=「弁済」という法律行為。労働義務を負う労働者=「債務者」に該当。通勤の費用=「弁済のための費用」に該当。ということで、特に会社との取り決め(別段の意思表示)がない限り通勤費用は労働者が負担するというのが原則になるんだそうだ。しかしこれじゃあ誰も来てくれないってことで、会社が別段の意思表示をして、「通勤手当を支給するとしている」という解釈、だから「企業が負担すべき業務費用」ではなくて賃金。そうか、これを根拠にして以下のことがあるのか~、なっとく。
☆ 平均賃金を算定する時に通勤手当を除外することは違法(S22.12.26基発573号)
☆ 健康保険・厚生年金・労働保険の保険料では賃金に含まれる。
☆ 通勤定期乗車券を現物支給する場合には、賃金の通貨以外での支払いとなり労働協約に定めが必要(労働組合のない事業場で定期券などの現物支給は出来ない S63.3.14基発150)
しかし、割増賃金の基礎となる通常の賃金には通勤手当は算入されない。ここでの注意点は、それでも算入するのは当事者の自由なこと、そして労働者の通勤距離または通勤に要する実際費用に応じて算定する手当のことをここでは通勤手当とするので、距離にかかわらず一律に支給する場合には、実際距離によらない一定額の部分はここでいう通勤手当ではないので、割増賃金の算定基礎に参入しなければならないこと。(S23.2.20基発297)ところで税法上では通勤手当の実費弁償、経費的な性格を考慮して一定額までは非課税とされているよね、これが原則で、割増賃金の件以外の労働法や社会保健関係の解釈が変(例外)だと思っていたけど、どうもそれは逆だったんだ。
大変勉強になります。
非課税限度額以内なら無税なのに標準報酬額の算定には実費の交通費が加算されるのはこういう考え方からくるんですね。
何の根拠で加算されるのか意味が理解できました。
荒木さんというかたの学説だそうですが、学会でも異論は出ていないそうです。