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2022年度私鉄・バス・ハイタク関係予算の拡充を要請 ~極めて厳しい公共交通に従来の枠組みを超えた大胆な支援を求める~

2021-08-03 | 書記長社労士 公共交通
 私鉄総連は7月27日、各省庁が2022年度予算概算要求を編成するにあたり新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」)の影響で極めて厳しい経営状況にある私鉄・バス・ハイヤー・タクシー産業に対する事業存続に向けた支援や、地域公共交通の活性化による生活路線維持、要員の確保・人材育成、安全輸送の確立に資する予算の拡充を要請した。
要請は国土交通省、観光庁、総務省、厚生労働省に対して、私鉄総連組織内国会議員の森屋隆参議院議員、準組織内国会議員の辻󠄀元清美衆議院議員に同行をいただき、木村敬一中央執行委員長を先頭に、池之谷潤中央副執行委員長、志摩卓哉交通政策局長、樋口和司政治政策局長、久松勇治ハイタク協議会事務局長で要請した。


1.国土交通省要請
 国土交通省では、最初に総合政策局に、感染症による影響に対する事業存続に向けた支援策強化や改正された地域公共交通活性化再生法に関わる施策の予算確保、地域公共交通確保維持改善事業の拡充を求めた。
 要請にあたり木村委員長は「今月開催した定期大会では全国から参加した組合員から公共交通が極めて厳しい状況にあることが報告された。交通従事者はエッセンシャルワーカーとして、輸送の使命を果たすために懸命に頑張っている。しかし、感染症による輸送人員の大幅な減少が長期化し、大手・中小を問わず極めて厳しい状況に置かれている。従来の枠組みを超えた大胆な支援をお願いしたい」と挨拶した。
 続いて志摩交通政策局長から要請項目について説明し、大手・中小を問わず極めて厳しい状況にあることから、すべての事業者を対象とする支援の拡充と、固定資産税・都市計画税の減免などの税制優遇を求めた。
 これに対し寺田吉道公共交通・物流政策審議官は、「地域公共交通は元々厳しい状況であったのに、感染症により、厳しさがより顕在化し、さらに厳しい状況になる怖れがある。支援については、既に国土交通省だけでなく、厚生労働省の雇用調整助成金など、省庁横断で支援を行っている。地方創生臨時交付金の使われ方を見ると、地方自治体からの交通分野への支援が少なく感じる。地域公共交通がエッセンシャルワーカーと認知されながらも、どうしても医療関係に対する支援が手厚くなり、公共交通に対する支援は後回しとなっている。我々としても、地方自治体への働きかけを強めていきたい。交通関係予算をなんとか拡充したいと考えている」、「固定資産税の減免については地方自治体の収入が減り、財政事情が悪化する懸念もあるが、コロナ禍後を見据えて事業者の資金繰り支援も必要。直接支援するか、税の減免による間接的な支援をするかの判断が難しい」とした。
 回答を受け、池之谷副委員長からは、「各事業者は借金まみれとなっている。コロナ禍以前と同じ補助率では、持続可能な公共交通とならない。地域間幹線系統補助がしっかりと地域の足の確保に資するものとなるようにされたい」と要望した。
 また、辻󠄀元清美準組織内国会議員からは、「特にバス運転士は、高速バスや空港連絡バスが稼働していないなかで厳しい状況。感染症終息後に人の動きが復活すれば要員不足の状況となる。雇用を何とか守らなければならない」「私たちも国土交通省の応援団として、国会でも、委員会でも、何とか使える予算はないか、時限的でも支援できないかと求めている。ワクチン接種時のバス・タクシーの活用では国交省とともに厚労省に働きかけ予算を確保した。タクシー議員連盟会長、バス政策議員連盟の副会長として、事業者とも定期的に意見交換している。是非、予算の拡充を」と述べた。

 続いて要請した鉄道局では、樋口政治政策局長から各要請項目を説明し、「感染症の影響で大手・地方鉄道ともに極めて厳しいが、安全・安心・安定の運行を維持するためにも、安全対策、災害復旧、老朽化対策は特に拡充を」と要請した。
 要請を受け、上原淳鉄道局長は、「コロナ禍で厳しい状況で、地方鉄道では資金繰りにも困る状況と伺っている。安全対策では、森屋隆参議院議員から国土交通委員会で踏切道の安全対策に対する支援の拡充を要望されている。予算を少しでも多く確保できるよう、しっかり取り組みたい。災害復旧については、復旧後の路線維持を見据えた支援が必要。上下分離など活用することで、最大97.5%まで国と地方自治体で負担することとしている。老朽化対策についても、感染症で厳しいなか、必要な安全設備投資が行われないことを懸念している。安全がおろそかにならないよう取り組みたい」とした。
 辻󠄀元清美準組織内国会議員から「コロナ禍において、安全・安心の部分にお金をかけ続けなければならないのは鉄道などの公共交通である。平時と一緒の対応では困るため、全体的に公共交通への予算を手厚くするなどを考えてもらいたい」とした。
 また、森屋隆組織内国会議員からは「感染症により、輸送人員が30%減少している。国土交通省では、地方鉄道の経営安定に、DX(デジタルトランスフォーメーション)を打ち出しているが、それだけでは足りない。そこに働く人がいて安全が確保される。働く人が中心の鉄道輸送のあり方を考えていただきたい。JR二島・貨物に支援したが、私鉄も状況は同じであり、同様の支援を」と要望した。上原局長から「地方の営業距離の長い民鉄をどう守っていくのかも課題」との認識が示された。


 続いて要請した自動車局では、志摩局長から要請項目を説明し、「感染症の影響で減便などを行い、見かけ上は要員不足が解消されているが、実態は変わらない。実効性のある抜本的な対策が必要。また、技術系職場では、燃料電池車など従来はなかった新しい技術に対応できるよう、その習得等に対する支援など人材育成を」と求めた。
 要請に対し秡川直也自動車局長からは「人材の確保と育成では、バス運転士は労働条件の改善に向けて増収策が課題であると考えている。整備については、自動車の技術がすごい勢いで変わってきている。新たな技術に対応できるよう整備士の資格の内容を見直すことが必要と考えている。いずれの項目も、もっともな要請であり、通常の予算に補正予算も加え、最大限確保できるよう全力を上げて取り組みたい」とした。
 これに対し、池之谷副委員長からは「貸切バス運賃・料金WGフォローアップ会合が開かれていないが、感染症終息後も感染対策で定員を落として運行しなければならないなど、安全・安心の料金が収受できるのか、バス事業者にしわ寄せがくるのではないかと懸念している。修学旅行については、文部科学省とも連携し、バスへのダンピングは絶対にダメであると指導してもらいたい」と伝えた。これに対し秡川局長は、「貸切バスやタクシーなどの車両についてはエアコンで車内換気ができることは証明されている。感染症対策中は補助できるが、感染症終息後も同じでは困るので乗車定員を元に戻し、利用者の理解を得るための対策を考えたい」とした。


 辻󠄀元清美準組織内国会議員からは「東京オリンピック・パラリンピックの輸送を担う運転士について、ワクチン接種はどうなったのか。また風呂もない劣悪な環境で働いていると報道があった。詳細を確認してもらいたい」と求めたところ、秡川局長からは「現場の詳細までは分からないが、運転士の健康確保は安全運行の基本であり、報道内容について組織委員会に問い合わせ、問題があれば改善を申し入れる。ワクチンについては大会用に確保した分に余裕ができ、これまで選手輸送の運転士に優先的に接種してきたが、今後、報道関係者輸送の運転士などにも接種することになったと聞いている」とした。
 また、森屋隆組織内国会議員からは、「感染症で全体的に厳しいが、特に苦しい高速バスと空港連絡バスは、地域のバスというイメージがなく、支援の枠から抜け落ちてしまっている。そういったところにも地方創生臨時交付金の有効的な活用指導や直接的な支援も含め、力を入れてもらいたい」とした。また、志摩局長からは、「貸切バス・団体旅行の振興についても強く求めたい」とした。これに対し秡川局長は「貸切、高速、空港リムジンが一番厳しい。そういったところへの支援メニューも考えなければならない。貸切については、財源があって使えないのがGoToトラベル。最初は家族旅行から再開し、最後は団体旅行で、貸切バスの旅行が再開したときに予算がないということがないようにしたい」とした。
 最後に久松事務局長から「コロナ禍で真面目なタクシー事業者が倒産する一方で、悪質事業者が横行している。悪質事業者対策の強化を」と求め、秡川局長からも「重要な課題であり、検討していきたい」とした。


2.観光庁要請
 観光庁要請では、志摩局長から要請項目を説明し、「特に厳しい状況に置かれている貸切バスの運転士やバスガイドの雇用が守られるよう、団体旅行の需要喚起と振興を」と求めた。
 これに対し、村田繁樹観光庁次長は「観光業界に対してご支援いただいていることに感謝申し上げる。感染症で厳しい状況におかれている観光業界に対し、国土交通省と連携して支援するとともに、引き続き、雇用調整助成金の確保なども関係省庁に求めていく。感染状況が収まれば、GoToトラベルなど需要喚起に取り組みたい。また、効果が全体に行き渡るように、貸切バス、団体旅行にも波及するよう、観光基盤整備にも取り組みたい」とした。
 これに対し、辻󠄀元清美準組織内国会議員からは「GoToトラベルをいつ再開させるのか、インバウンド関係を今後どのような施策とするかも考えなければならない。国内需要を取り込む施策の充実をはかられたい。」とした。
 また、池之谷副委員長からは「近年、観光政策はインバウンドにシフトしていたが、私たちは国内旅行への対応も求めてきた。今回のような状況になれば国内需要を見据えた団体旅行の振興が求められる」とした。これらに対し村田次長は、「オーバーツーリズムの問題もあった。インバウンドも必要だが、そのことによる弊害を改めて考えるとともに、国内観光施策についても考えていきたい。また、団体旅行もいろいろあるが、要望をしっかり受け止め、先ずは修学旅行から取り組んでいきたい」とした。

3.総務省要請
 総務省要請では、地方自治体の生活交通路線対策に対する地方財政措置の維持拡充や地方自治体が取り組む高齢者などの外出支援、国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業」や「鉄道軌道整備法」に基づく補助に対する地方自治体協調補助に対する地方財政措置の拡充については自治財政局長に要請した。また、コロナ禍において固定資産税・都市計画税の減免の適用範囲の拡大と、鉄道・バス・ハイタク関係の税制改正要望への積極的な対応を自治税務局長に要望した。
 前田一浩自治財政局長からは「鉄軌道・バスなどの協調補助については、国土交通省と連携しながら対応したい。いわゆる交通弱者に対するケアについては、大なたを振るうと言うよりは、自治会やPTAなどの地域のきめ細やかな取り組みを支援していきたい」とした。
 森屋隆組織内国会議員からは、「交通事業者は、一方で『公共』交通と冠がつくが、人口が減少するなかで、一企業で維持していくことが困難となっている」と訴えた。これに対し、前田局長から「国土交通省とよく相談して対応していきたい」とした。辻󠄀元清美準組織内国会議員からは「公共交通をうまく活用することで総合的に見れば、自治体の財政運営や住民の健康増進などプラスになる面が大きい。こういったことも考慮した対応をはかられたい」と重ねて要請した。
 続いて、稲岡伸哉自治税務局長からは、「固定資産税・都市計画税の減免の大手企業への適用について、令和3年度の措置は本当に異例の措置であり、国会でも大手企業を対象とすべきとの議論があったが、非常に厳しい状況。本当に納税が困難な場合には、個別で対応したい。税制改正要望については、国土交通省から要望がまだ来ていないが、バリアフリーなどとても大切な課題であることから、積極的に対応したい」とした。
 辻󠄀元清美準組織内国会議員からは「予算を確保し、補助をすれば、回りまわって税収も上がる。今は悪い循環となっているため、好循環に転換できるよう対応してもらいたい」と求めた。


4.厚生労働省要請
 厚生労働省要請では、最初に木村委員長より、雇用調整助成金特例措置の延長に対する御礼と引き続きの対応を挨拶で述べた。続いて志摩局長より、鉄軌道運転士の養成に対する支援とバス運転士の人材確保に大型二種免許取得に対する支援の拡充などを特に強く要望した。
 これに対し富田望大臣官房審議官(人材開発・雇用環境・均等担当)は、「厚生労働省として、公共交通という基幹的な産業の維持に、人材育成が重要な課題と認識している。鉄道運転士の実習併用職業訓練についてはOJTとOFF・JTを組み合わせて一定の条件を満たせれば、一部を助成している。雇用保険が財源であり、雇用調整助成金に財源が大きく取られ厳しいが、何とか確保していきたい。バス運転士の育成については、教育訓練給付として、事業者が雇用し、自動車教習所に行かせることについて支援したい。人材育成は我が国の発展を考えた時、とても重要であり、しっかりと予算を確保していきたい」とした。


 回答を受けて久松事務局長から、「産業雇用安定助成金のグループ企業への適用拡大に感謝する。引き続き、雇用調整助成金の特例措置の延長も頑張って欲しい」とした。これに対し富田審議官は「産業全体で雇用維持を、という考え方で支援した。引き続き支援していきたい」とした。
 また、森屋隆組織内国会議員は、「交通産業は勤続が長いというメリットがある一方で、入ってくる若い人が少ないため、高齢化が課題となっている。学校などで終身雇用や働き続けることの大切さなどを学生にアピールを」と述べた。続いて、樋口局長からは「鉄道・バス・ハイタクの技術職場の要員不足がより深刻となってきている。人材の確保・育成に対する支援の充実を」と述べた。
 これに対し富田審議官は「キャリア教育になると文部科学省との連携が必要となるが、大切な課題であると認識している」とした。


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