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「ライドシェア解禁論を、いま、改めて考える集会~地域公共交通はこう担う~」をたましんRISURUホール(立川市市民会館)にて開催①

2023-08-01 | 書記長社労士 ライドシェア断固阻止!

 交通の安全と労働を考える市民会議~ライドシェアを考える~は、2023年7月31日、「ライドシェア解禁論を、いま、改めて考える集会~地域公共交通はこう担う~」と題して、たましんRISURUホール(立川市市民会館)にて、多摩地区においては6年ぶりにシンポジウムを開催した。

 開会にあたり、事務局である木下徹郎弁護士は、
「市民会議は2016年8月に立ち上げて以来、ライドシェアに反対し、市民の交通の安全を脅かす問題について検討し、警鐘を鳴らす運動を展開してきた。
市民運動、国交省の立場、海外の情勢の変化などがあって、日本では未だ、ライドシェアの導入を阻止することが出来ている。
立川では、以前にもシンポを開催してきた。
ここしばらくは、ライドシェアの日本上陸の動きは衰えたとも思われてきたが、今更になって解禁論の主張が出てきている。
市民会議でも、ここ2年ほど、ウーバーの租税回避やロビイングの問題などの周辺問題にスポットを当ててきたが、今回は初心に立ち返り、ライドシェアはどういう問題をはらんでいるのか、どうやって地域の公共交通を守っていくのか、論議をしたい。
本日の集会を契機に、皆様の知識をアップデートしてもらいたい。」
と、述べたのち、①「ライドシェアをめぐる海外の事情と日本の課題」浦田誠(国際運輸労連政策部長)、②「自由な働き方?~日本においてギグエコノミー・フリーランスで働く者の抱える課題」菅俊治(弁護士・日本労働弁護団常任幹事)、③「三多摩地域におけるラストワンマイルの課題」大和田實(東京交運労協三多摩ブロック協議会幹事)、神田康裕(一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会三多摩支部支部長)、④「ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会について」住野俊彦 全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)議長、について、それぞれから報告を受けた。


浦田誠(国際運輸労連政策部長)「ライドシェアをめぐる海外の事情と日本の課題」

今日のシンポジウムの趣旨に沿って、改めて、ライドシェアは公共交通を担うには適正でないということ、ライドシェアとはいったいなになのか、皆さんと考えていきたい。
配車アプリとライドシェアはどう違うのか、配車アプリもウーバーなどのライドシェアのアプリも、①スマートフォンの普及、②GPSの民間開放(2000年)、③ビッグデータから有益情報を抽出するデータマイニングの技術、この3つの技術を組合わせたという点では、変わりはない。
最近ではまた、アルゴリズムを活用しているという点でも共通している。

ディスラプター(破壊者)とは、「デジタルテクノロジーを駆使して既存事業を破壊し、乗っ取り、急成長するもの」のことだが、ライドシェアはまさにこのディスラプターとして登場した。
ベンチャー企業から巨額の投資を受け、タクシー事業をカルテルと敵対視し、「マッチングサービス」と事業を正当化し、公然と法律を無視して営業し、運賃ダンピングと便乗値上げを繰り返し、ロビー活動を通じて、政治家や役人を取り組みながら「法律は後から付いてくればよい。」などと公然と発言してきた。
宮里邦夫弁護士(故人・市民会議代表世話人の一人)は「究極の規制緩和」だと警鐘されていた。
このような「究極の規制緩和」は、最初であって最後にしなければならない。

ライドシェア事業者の2つ目の特徴は、「コスト削減の追求」だ。
運転手は個人事業主で、最低賃金、年次有給休暇、社会保険や労働保険はない。燃料費や障害保険も自己負担。
事業者はまた、一方的に手数料を引き上げる、報酬計算をごまかす、労使関係を極力避けるなどしてきた。
ウーバーの場合、50を超えるトンネル会社を使い営業利益を営業損益に変えて租税回避している。
鉄道・バス・タクシーの公共交通事業者は、真面目に税金を支払っているのであり、このような租税回避をする会社が登場すると不公平競争を強いられることになる。
こうしたコスト抑制を続けても経営は各社とも赤字、ウーバー、リフトともに、ここ数年で社員の3割を削減している。

3つ目の特徴は、ライドシェア事業者が徹底して規制に背くということ。
主な事例として、①旅客輸送サービスではないと強弁、違反命令を無視し、運転者への罰金刑を肩代わりする。②労働者性を巡る裁判では、各国で最高裁判決まで争い、負けても命令を全面遵守しない。③ギグ労働者を保護する法律には反対するし守らない  などが挙げられる。
しかし労働者側も負けていない、各国で勝っている。
★タクシー規制を強化したデンマークから撤退
★欧州では、「ウーバーは運輸業」という欧州司法裁判所の判決
★韓国や 台湾は、徹底した罰金制裁 など でウーバーを駆逐
★NY市 では、 台車規制や最低賃金の保障 を確立
★フランス、英国、スイスでは、「ウーバー運転手は労働者」という最高裁判決

特に、欧州司法裁判の判決の結果、欧州ではライドシェアとしてはやっていけずハイヤーの配車サービスのみとなっている。
デンマークでは、反対するだけでは既得権益を守りたい労働組合の主張と思われるという問題意識があり、ユーモアを交えたキャンペーンを展開し、世論を味方につけて行った。
例えば、フェスティバルでUBEER(Uber+beer)という架空のビールブランドをつくり、6000本無料配布したところ、他の業者が不公平競争と怒り、警察を呼んだので、逆らわずもライドシェアもタクシー運転手には不公平競争ですとやりとりし、これを動画に載せた。
また、有名コメディアンを起用して、ウーバーのような租税回避の会社が増えると福祉国家という国の礎が崩壊するとアピールした。
これで、反対が17-70%に伸び、こうなると国会議員も味方に付く。



4つ目の特徴は、アルゴリズムを使った労務管理。
ライドシェアやフードデリバリーは、好きな時間に自由に働けるのが魅力であるはずが、インセンチブで労働をゲーム化させ、仕事に縛りつけている。
このためインセンチブを達成するために先を急いだりして、事故多発。
オーストラリアではこの6年間に食事配達員が12人も交通事故死している。
アルゴリズムはまた、運賃や手数料を一方的に変更するために使われている(天候や繁閑だけでなく、利用者個別による運賃の導入)
そして、最も大きな問題は一方的なアカウント停止だ(解雇問題)
カリフォルニアのあるアンケート調査では、運転手の3人に2人が一時的ないし永久アカウント停止を経験していて、3割は理由を明示されなかった。
結果、18%が自家用車を失い、12%がマイホームを失った。
こうした事例は世界各国にあり、欧州では情報開示を請求する訴訟やアルゴリズム差別を罰する裁判が進行中。
米国では多くの州で、解雇のルールづくりを法制化する動きが出ているが、各社ともこれに反対している。

では、こうしたライドシェアが台頭し、どのような結果をもたらしたか。
アメリカのタクシー産業は崩壊寸前まで行った。運転手の収入は激減し、離職が相次ぎ、メダリオンの価格は暴落し、NYでは8人の運転者が自殺している。
台湾(12人)、オーストラリア(4人)という報告もある。
また、身元のはっきりしない素人運転手が乗客を運ぶため、乗客へのレイプや殺人事件が多発しており、ライドシェアに乗る場合は家族や友人に乗車位置やライドシェア利用を知らせた方が良いとキャンペーンしている都市もあるし、弁護士がライドシェアでの問題を受任しますよという広告がテレビで多数見られる。
ぼったくりや乗車拒否も多い。
ウーバーとリフトは、多数の中の少数だから良いではないかという態度、そもそもあってはいけない。
安全文化を築き上げるという意識が欠如している。
ライドシェア運転手自身の困窮と受難も世界各国から報告されている。
「良かったのは最初だけ」であり、かつては20%だった手数料が50~60%に跳ね上がった事例もある。
最近の傾向としては、運転手(や配達員)自身が仕事中に殺されるケースが急増しているということ。
2017年に4件だった被害件数は、昨年31件となった。
同じ時期には、350件のカージャック事件も起きている。
一方的なアカウント停止も含めて、こうした理由から運転手が定着しない仕事となっている。
今日、米国でウーバー運転手は90万人いるが、毎月5万人が入れ替わっている。
単純計算で、18か月で総入れ替えということだ。反面、日本のタクシー運転手の平均勤続年数は11年を少し切るくらい。
比べものにならないのだ。
一方で、公共交通の利用者減(タクシーだけではなく地下鉄やバスも)に繋がってしまう。

ウーバーは、不祥事のデパートと報道したのは、日経新聞(2017年12月30日)。会社のトップが、「法律は後から付いてくればいい」と放言すると、その下で働く社員がどんなことをするか、想像するのは容易だ。
●警察の捜査をあざむくソフトや利用者の個人情報を盗むソフトを開発・使用。
●他社の情報を盗む諜報チームを社内に設置。
●顧客・運転手570万人のデータハッキングを隠蔽し、ハッカーに口止め料を払う。
●社内でセクハラが蔓延し、20人以上が解雇。処分されたある幹部は、「他者の気持ちを理解し、周囲と同調するための感受性訓練を受ける」よう指導される。
●人種差別に関する社内の苦情を意図的に無視。
●複数の社員がコカインパーティーを開く。


こうした事件が次々と明るみになり、当時のCEOは引責辞任し、後任者もさすがにこうしたことは改めると言った。
しかし不思議なことに橋下徹氏は、今になって、この頃のウーバーを称賛している、これでは、褒め殺しである。

ではこのライドシェア、最近はどんな特徴があるのか。
当初はウーバーの一強で独走していた、しかしリフト、ディディ、グラブなどの参入で戦国時代になり、現在は棲み分けが定着している。
また、ライドシェアからフードデリバリー、そしてスーパーアプリ(プラットフォームとしてタクシー・もの・金融サービス・公共料金などの利用)へと事業のあり方が変わってきている。
一見便利に見えるのだが、生活の隅々まで情報が持って行かれるから気をつけなければならないとも言える。
ソフトバンクグループがこうした企業に多く投資している点も見逃せない。
私たちは、ライドシャアをなにか外国から来た黒船のようにとらえがちだが、その財源を日本の大手企業が支えているのである。
同時に、日本発の新事業mobiはすでにシンガポールとマレーシアでサービスを始めるなど、世界に広がりつつあり注視が必要。
最後に、コロナ禍でライドシェアは運転手も利用者も激減し、今ようやく回復傾向にあるが、こうした理由からウーバーは各国でタクシー事業者と協業を始めている。
では日本はどうなるか。
ウーバーとGOが、今後どのように日本で展開していくのか、こちらも注視が必要。

最後に、日本で最近ライドシェア解禁論が申し合わせたように出てきているので、これを検証する。
橋下徹らが主張する解禁論。
橋下徹(2023 年 3 月、「日本再起動」など)
① 先進国で導入されていないのは日本くらいです。
⇒欧州ではライドシェアは現在なし。
② お客とドライバーが相互に評価し合い、アプリにそれが表示される仕組みになっていて、 悪い評価のドライバーは選ばれなくなり、悪い評価のお客は乗車拒否に遭う。⇒乗客の評価による悪い運転手の 淘汰は問題が起きた後のこと。
③ 料金は明朗で、ドライバーのサービスは好評だし、お客が事件を起こすことも少ない。⇒料金問題あり。レイプ事件は、ウーバー=2017ー18年に米国で 5,981件の性的暴行事件。リフト=2017ー19年に 4,158件の性的暴行事件。
④ 台数制限をかけられているわけではないので、乗車可能な車両が街中に数多く走っています 。
★思考が2017年くらいで止まっている。
勉強不足で一知半解。
ライドシェアを郊外や過疎地で導入すればよいと言っている川邊健太郎氏なども、ウーバーがそれが課題なのだと認めていることをご存じないのか。

一方、日本には日本独自のライドシャアを作るべきだと主張するものも増えている。
こうした主張にどう反論していくか。
ウーバーのCEOは、ニューヨークタイムス紙のインタビューで、「お子さんがライドシェア運転手をやると言ったらどうする」と聞かれ、「最初のうちはそれでもいいが、いずれは手に職をつけてほしい」と答えた。
要するに、一生の仕事ではないことを認めているのだ。
そういうことを理解した上で、日本型ライドシェアの導入と言っているのか?

いずれにせよ、彼ら解禁論者は、国交省やタクシー業界を追求するが、労働組合に矛先を持って行くことがないのはなぜか。
このことも考える必要がある。

《②に続く》


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