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で、この映画、メリル・ストリープがアカデミー賞で主演女優賞を受賞したことで見たくなった。
しかしサッチャーという人に関してはそもそも批判的な立場、この映画は伝記映画だと思っていたので、サッチャーという政治家をより知りたいという興味もあって観たいと思ったということでもあった。
夫デニスを亡くして8年、ようやく始めた遺品整理の手を止めてマーガレットは遙か昔を振り返る。勤勉で雄弁な父を尊敬して育った小さな雑貨商の娘は、オックスフォード大学に進学し、政治家を目指す。初めての下院議員選に落選し落ち込んでいた時に、プロポーズしてくれたのがデニス・サッチャーだった。専業主婦にはならないと宣言して男女の双子をもうけた後、ついに当選して国会議事堂に乗り込むのだった。
取って付けたような邦題と、予告編の仕掛けとは、随分違う映画であって、自分としてはいい意味で裏切られた。
サッチャー元首相が今は認知症であることとか、彼女がどのような経過で英国首相になったのかを知らなかったお陰で、映画としての物語を楽しめた。

the Iron Lady、イギリス史上初の女性保守党党首であり英国首相、新保守主義・新自由主義の非常に強硬な政治方針と信念を持った政治家、強烈な右派であり保守的であり独善的な政治家であり・・・そんなイメージを持っていた、文字通り血も涙もない鉄の女だと思っていた。
この映画も、そういったイメージを、肯定的にか、批判的にか、そのどちらかで描く映画だと思っていたのだ。
しかしそういったステレオタイプの描き方をするのではなく、あなたは彼女という女性をどう思いますか、という、また、女性という性は何なのでしょうか、という、問いかけがテーマの映画であったと思った。
メリルストリープは、まさにそのように演じていたと思った。

「料理や育児や掃除だけじゃなく、人生にはもっと大切なことがある。私は食器を洗って一生を送りたくない」、アレクサンドラ・ローチが演じる理想に溢れる若い頃のサッチャーと、そして認知症が進み、常に彼女を支えてきた夫デニスが死亡したことも忘れるほど記憶力が減退している晩年のサッチャー、コンビニエンスストアで若者に翻弄されながら牛乳を買い求める弱者の象徴のようなサッチャー、そして「食器を洗って一生を終えるつもりはない」と野心を語っていた彼女が老いて食器を洗っている。
「最近の人は、どう感じるかを重視しすぎて残念。私は考えたい。考えが言葉になり、言葉は行動に、行動は習慣に、習慣が人格になり、 人格は運命を形作る」という劇中の彼女の言葉にあるような受動的ではなく、常に能動的な生き方をする鉄の女がいる。
しかし彼女は女性であること、母であること、妻であることをけっして忘れてはいない、媚びているわけではないが自分が女性であることの強みを最大限に生かしている。
そこもぜったいにぶれていない、彼女はやはり鉄のように凛として女なのだ。
彼女は彼女自身が推し進めてきた社会を、どのように思っているのだろう。
彼女のしばらく後、保守党から政権を奪取した労働党のトニー・ブレア政権はサッチャリズムの弊害除去が国の重要な政策となった(いわゆる第三の道、必ずしも上手くはいかなかったが)。
日本では痛みを伴う小泉改革によって痛みまくってしまった国民生活と、自民党をぶっ潰すと公言したとおり小泉さんによってぶっ潰された自民党をどう回復するか、今、民主党政権と小泉息子は苦労をしている・・・のか?(笑)
と、ついでにこんな事を書いたが、そんな政治的な思想的な映画ではなかったな、冒頭でも書いたとおり、いい意味で裏切られた映画だった。
TBありがとうございます。
この映画のレビューをいくつか読みましたが、
書記長さんのこのレビューが一番私の見方と
フィットしていました。
ロイド監督もストリーブも、強いサッチャーの政治信条や伝記物語を描こうとしたのではないと思います。
それを期待してみた人は、裏切られた感じがするのでは。この作品は、サッチャリズムの是非を問題にするのではなく、あくまでもサッチャーという一人の女性を通して、人間の持つ老いの不可避さを見る者に問いかけているのだと。
その意味で、壮と老の落差の大きさをここまで見事に演じたストリーブにVIVAです。
また、おじゃまします。
伝記ものでなく、彼女の女性としての生生しい人間味もあったかな~と思います。
あのオープニングで、この映画はどうもすごいぞ、と思いました。
メリル・ストリープの生き方も、この映画でのマーガレット・サッチャーに重なるところがあるようです。
なにかで読みました。
なるほど、です。
得した、この映画を観て。
素晴らしかったですね。
そう言う見方もあるわけですねえ。
やはり社会科教師としては、見たかったのは政治劇で、女性としてどう生きたかは、言わなくても女性としては、分かってるつもり(あくまでも・・ですが)。
いかにあの男性社会と闘い抜いたのか・・あたりを見たかったです。
なにはともあれ、メリルは素晴らしかったですね。
鉄の女の鉄は、自分が思っていた鉄とは違ったなあと思い
この映画は、そういう面をクローズアップしたのだと理解しました。
サッチャー自身は男性社会と闘ったと思っているのでしょうか、とも感じました。
はい、ほんとメリルは素晴らしかったです!
ディカプリオの妖怪みたいなじいさんメイク&取って付けたじいさん振る舞いとは、格が違いました。