ひのっき

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サピエンス全史はホモ・サピエンスの歴史と未来を斬新な視点で俯瞰できる名著

2017年03月05日 | 絵日記
サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
ユヴァル・ノア・ハラリ
河出書房新社

ユヴァル・ノア・ハラリ先生の「サピエンス全史」を読みました。

凄い本です。鳥肌が立ちました。


10万年前はアフリカの隅で細々と暮らすか弱い存在でしかなかったホモ・サピエンス。
当時は幾種のホモ属、つまり人間の祖先たり得る類人猿が地球上に分散していました。
中でもヨーロッパを地盤とするホモ・ネアンデルターレンシス、いわゆるネアンデルタール人は体格・知能ともに大変優れており、サピエンスが戦いを挑んでもとても勝てませんでした。

しかし7万年前、サピエンスの脳に「認知革命」が起こります。認知革命でサピエンスが手に入れた新しい能力、それが「想像力」です。
「想像力」とは目の前に存在しないものを認識し信じる能力、言い換えれば「神話を信じる能力」のことです。
例えば私たちは「お金」という神話を信じています。何の疑問もなく1000円札とお米を交換したりしています。
ただの紙ペラでしかない1000円札に価値があるという神話、これを共有することができるのはサピエンスに「想像力」という特殊能力があるからです。
「国」という神話、「法律」という神話、「会社」という神話、巨大な社会を形成するためには神話を共有するための「想像力」が必須となります。
7万年前、「想像力」を手に入れたサピエンスは、「群れ」でしかなかった集団を集落などの「社会」に昇華させます。
それにより大人数での組織的な行動が可能となり、1対1なら勝てなかったネアンデルタール人を次第に圧倒していきます。

想像力は、「農業革命」をも引き起こします。
農産物の栽培、これは「来年のことを考える想像力」があって初めて実現する革命です。
この農業革命により、サピエンスは飛躍的に大量の食糧を手に入れることができるようになりました。

しかしこのことは一方で、大きな悲劇を生みだします。
働かずに食べるサピエンスたち、つまり「エリート層」の出現です。
エリート層は食料生産にはかかわらず、王、神官、役人などを名乗りサピエンス達を支配し重税をかけるようになります。
これにより大多数のサピエンスは狩猟採集時代より栄養状態が悪化するという皮肉な結果をもたらします。

そんな食うや食わずの庶サピエンスたちを尻目にエリートサピエンス達は書記体系や法律、貨幣制度を整備し、巨大都市、巨大国家を形成していきます・・・というお話。

内容そのものの面白さもさることながら、ユーモアをたっぷりと交えた語り口にクスリと笑わされます。
サピエンスがどうやってここまで来たか、そしてこの先どうなるのかが説得力たっぷりに語られ、目から鱗がボロボロこぼれます。

ホモ・サピエンスの歴史と未来を斬新な視点で俯瞰できる名著です。