ひのっき

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株式とは何か その6

2007年12月23日 | 投資とか。
さてさて、「株式とは何か」の第六回です。
今回のテーマは、「株式会社の株価」です。

株式会社の株価も、もちろん構造は当座会社の場合と同じです。

①正味価格(=1株あたり株主資本)
②将来見込まれる利益への期待値
の合計が株価になります。

正味価格である「1株あたり株主資本」については、誰が見ても同じ値ですので特に問題はありません。

難しいのは、「将来見込まれる利益への期待値」です。
株式会社は永遠に続く前提なので、航海何回分の利益を当てにすれば良いのか誰にも分かりません。慎重な人は1回分で考えるでしょうし、積極的な人は100回分で考えるかもしれません。

「将来見込まれる利益への期待値」の測り方についてはこの400年間諸処万説が飛び交っており、実は現在もなお結論は出ていません。
故に「株式会社の株価」については、その適正値が「分からない」というのが21世紀科学の結論です。
長々とお話してきたのにあまりにも悲しい結論ですが、「株価の適正値は誰にも分からない。」
これがどうしようもなく現実です。

それが故にこの400年間、「株価」はその大暴騰や大暴落が幾度となく繰り返されてきましたし、これからもおそらく繰り返され続けることでしょう。

ただ「科学」的な計測は無理でも、長年の「統計」で培った目安となる指標はあります。
代表的なものが「PER」と「PBR」です。

これを使えば絶対安全という代物では決してありませんが、これを押さえずに株式投資するのはとんでもなく危険です。車の運転で言えばシートベルトくらいの威力があります。事故そのものは防げないけど、とりあえず一命を取り留めるか否かを左右するくらいの。

この指標の内容についてお話する前に、これまで記述してきたキャプテンペッパーの胡椒航海における登場人物を現代の会社に当てはめて、「株式会社」についてまとめたいと思います。

株主(オーナー)=株主
キャプテン=経営者
船員=従業員
航海=会社の事業経営
1回の航海=年度毎の事業経営
航海の利益=当期純利益

会社のオーナーである株主が経営者(キャプテン)を雇い、資本を預けて会社の事業経営を委託します。経営者は株主が選別して雇いますが、会社の従業員(船員)は経営者が選別して雇います。
会社の事業経営は航海のように1回と区切れませんので、「年度」で区切ります。
経営者が1年間の事業経営で計上した「当期純利益」が、「配当金」の分配と「利益剰余金の資本組入れ」による株式の正味価格(1株あたり株主資本)増加という利得として、事業資金を提供した株主へ還元されます。
この仕組みはこの400年間変わっていません。

以上が「株式会社」のしくみの骨子になります。


さてさて、「株式とは何か」について6回に渡ってお話してきましたが、
なにやらえらく長くなりすぎたので、要点だけまとめます。

【株式会社の仕組み】
・「株主」は「株式」の購入により「株式会社」の事業資金(資本金)を出資し、
  会社のオーナーとなる。
・「株主」は「経営者」を雇い、会社の資本金を預け、会社の事業経営を委託する。
・「経営者」は事業経営によって利益をあげ、「当期純利益」を
 a.「配当金」の分配
 b.「利益剰余金の資本組入れ」による株式の正味価格(1株あたり株主資本)増加
 という利得として「株主」へ還元する。
【株価の仕組み】
・株価は
 ①正味価格(=1株あたり株主資本)
 ②将来見込まれる利益への期待値
 の合計となる。

以上です。
なーんだこれなら一回で終わったんじゃないの?みたいな内容ですね。
でもこれが株式を投資対象として考える場合に非常に重要な事項になります。

次回は株価を測る代表的な指標、「PER」と「PBR」についてお話します。

株式とは何か その5

2007年12月15日 | 投資とか。
さてさて、「株式とは何か」の第五回です。
今回は「株式会社」について考えます。

前回、「株価」が
①正味価格(=1株あたり株主資本)
②将来見込まれる利益への期待値
の合計であるところまでお話しました。

一回の航海ごとに解散する当座会社の場合、
「将来見込まれる利益への期待値」
=「期待される配当額」
=「一回の航海で期待される儲け額」
とシンプルであるため、そんなに極端な株価高騰はありません。
最高でも見込まれる儲け額の満額、そこから航海の成功確率が割り引かれたものが「期待値」となり、「株価」は概ね計算の範囲内での値動きとなります。

しかし1602年、世界初の「株式会社」の誕生より、その前提が大きく変わります。
「株価」はその算定が極めて困難なものとなり、しばしば人智を超えた高騰や理性を失った暴落を繰り返す鬼子と化してしまいます。

それまでの「当座会社」から「株式会社」になって、何が変わったのでしょうか。
本質的な変更点は下記の2点です。
①利益が全額配当されず、一部が「利益剰余金」として資本に組み込まれる
②破綻しないかぎり解散せず、永遠に存続する

ん?たったそれだけ?
そう、でもこの2点がとてつもなく大きな意味を持ちます。

「利益が利益剰余金として資本に組み込まれる」とはどういうことでしょうか。

当座会社では、航海の利益は全額配当金として株主に分配されます。
前回のキャプテンペッパーの例では、航海の利益が3億円、株式発行数が100株ですので、1株あたりの配当金は300万円です。
この場合、株式の正味価格である「1株あたり株主資本」は100万円のまま変わりません。

これに対し株式会社では航海の利益を全額配当しません。一部を「利益剰余金」として資本に組み入れます。

キャプテンペッパーが、航海の利益3億円のうち1億円は資本として会社に残したいと考えたとします。2億金を配当として分配し、1億円は「利益剰余金」として資本に組み入れます。
この場合1株あたりの配当金は200万円になります。

なんだか株主が損するように見えますが、利益剰余金の組み入れにより株主資本が1億円から2億円に増えますので、株式の正味価格である「1株あたり株主資本」が100万円から200万円に増えます。つまり分配される「貨幣」が100万円減る代わりに、所有している「株式の正味価格」が100万円分増えますので、株主の受益額は300万円のまま変わりません。

これだけでは株主にとって別に得でも損でもないのですが、これに「会社が解散せず永遠に存続すること」が条件として付加されると、絶大な効果を発揮します。

会社が存続し続けるので、キャプテンペッパーは会社の資本金を使って次の航海に出発することができます。
資本金が前回より増えていますので、船数を増やすなどより充実した装備で航海に臨めます。これにより更に多くの胡椒を持って帰ることが期待できます。
また船員も前回の航海で経験値が上がった船員をそのまま雇うことができます。これにより更に安全な航行が可能となり、航海の成功確率の上昇が期待できます。
そして会社が永遠に存続する前提であれば、例えばインドに駐在員を置き、現地で胡椒が安いときに買い占めておくなどの施策が打てるようになります。これにより航海の利益率上昇が期待できます。

このように、会社を永遠に存続させることを前提とし、航海ごとに利益を資本に組み入れて資本増加させることにより、1航海あたりの利益と会社の規模が雪だるま式に大きくなっていくことが期待できます。株式の正味価格である「1株あたり株主資本」額もどんどん増えていきます

これが「株式会社」の凄い点です。
航海を重ねるごとに規模と儲けが大きくなりますので、株主はより高額の「配当」と「1株あたり株主資本」増加という利得を得続けることができ、キャプテンは規模と儲けに見合ったより高額の報酬を得続けることができ、また船員はより安定した職を得続けることができます。
そしてキャプテンペッパーの航海継続・拡大でヨーロッパ社会により多くの胡椒が流通するようになり、社会に暮らすみんなが潤い喜びます。

この好循環こそが、「株式会社」という組織、ひいては「資本主義」という社会の最大のメリットとなります。

うーん、「株式会社の株価」まで行けるかと思ったのですが、また長くなっちゃったので次回にします。

株式とは何か その4

2007年12月09日 | 投資とか。
さてさて、「株式とは何か」の第4回です。
今回のテーマは「株式の売買価格の決まり方」についてです。

ある胡椒航海について考えます。
野心家のキャプテンペッパーが胡椒航海を計画しました。
この航海には船、航海中の経費、現地での胡椒仕入等もろもろ合わせて
1億円
が必要と算定します。
この場合、プロジェクトに必要な資本金は1億円です。

結構な額ですが、キャプテンペッパーはこの航海で
5億円分の胡椒
を持ち帰ることができると目論んでいます。

また航海後には、持ち帰った胡椒の売り上げから
キャプテンの報酬5千万円
船員20人への給料5千万円
が支払われることをプロジェクトの条件としています。

そしてこの胡椒航海組織は航海が終わった後、解散することとします。
このように解散時期が明確な会社組織を「当座会社」と呼びます。

キャプテンペッパーは最初、超大金持ちのところへ出資の提案に行きますが、すげなく断られました。
そこで株式を発行して、小金持ち達から当座会社のオーナーを募ることにします。
100万円額面の株券を100枚発行してオーナーを募集し、1億円の資本金を調達しました。
株券を持ったオーナーのことを「株主」と呼びます。
また1株あたりの資本金額を「1株あたり株主資本」と呼びます。

この時の「1株あたり株主資本」は、もちろん100万円です。
当座会社を解散すれば、株主にはこの100万円が払い戻されます。

つまりこの株式の正味価格は
「1株あたり株主資本」
である100万円になります。

はい、株式の価格の決まり方は以上。めでたしめでたし・・・・となれば簡単でいいのですが、株式の売買価格はなぜか正味価格とは一致しません。

それは株式の売買価格には正味価格のほかに、「将来見込まれる利益」への期待値が加算されるからです。

「将来見込まれる利益」とはなんでしょう。
キャプテンペッパーは5億円分の胡椒を持ち帰ることを目論んでいます。
目論見どおりにいったとすれば、
胡椒の売り上げ(5億円)
-航海資金(1億円)
-キャプテンの報酬(5千万円)
-船員の給料(5千万円)
= 3億円
が見込まれる儲け(利益)になります。

株式の発行数が100株ですので、この時の
「一株あたり見込み利益」
は300万円です。
航海がうまくいけば、この300万円が株主へ配当として分配されます。

この「見込み利益」は将来の期待値ですので、日々変化します。
例えば航海が成功しそうだとの情報が入れば期待値は上がり、失敗しそうだとの情報が入れば期待値は下がります。

長くなりましたが、株式の売買価格(株価)は、
①正味価格(=1株あたり株主資本)
②将来見込まれる利益への期待値
の合計であることを今回は覚えていただければO.K.です。

「将来見込まれる利益への期待値」を推し量るのは大変ですが、それでも一回の航海ごとに解散する当座会社であれば、その想定はシンプルです。この航海で見込まれる儲けの額と、航海成功の確率さえ仮定すれば、概ねの値は誰にでも算出できます。
つまり「株価」は計算で推し量れる範囲内でのみ上下する理性的なものとなります。

しかし1602年、「将来見込まれる利益への期待値」を決定的に分からなくする重大事件が起き、その算定がほぼ不可能なレベルまで困難なものとなります。
そのために「株価」は、バブルと呼ばれる大高騰や恐慌とも呼ばれる大暴落を繰り返し、今日に至るまで世界経済をも手玉に取り弄ぶ巨大な魔物と化します。

「事件」とはそれまでにない新しい会社組織の登場です。
航海ごとに解散しない会社。
ゴーイングコンサーン。永遠の存続を前提とする会社。
そう、「株式会社」の登場です。

さてさて次回へ続きます。

株式とは何か その3

2007年12月02日 | 投資とか。
さてさて、「株式とは何か」の第3回です。

前回、「たくさんのオーナーが胡椒航海に必要な資金をシェア(分担)して出資して、儲けもシェア(割当)して分配する仕組み」の必要から、「株式」が誕生したことまで述べました。

しかし、鋭い人は疑問に思ったかも知れません。
「ん?それってつまりは共同出資じゃないの?共同出資なんて中世といわずもっと大昔からあるのでは?」

そう、共同出資という考え方は大古からありました。
しかし共同出資は信頼関係のある者同志でないと、信用力の審査や権利関係の調整が大変でなかなか成立しません。そのため出資者の数を揃えるのが大変で、巨大と呼べるまでの資本を集めるにはなかなか至らないという泣き所がありました。

「株式」の凄いところは、オーナーの権利を「株券」という形でいわゆる証券化したことです。

「株券」さえ持っていれば、面識のない外国人であろうが破産者であろうが極端な話犯罪者であろうが、その人物の素性や信用力に関係なく、額面に応じて公平にオーナーとしての権利が保障されます。

また人間関係のしがらみがきつい共同出資と違い、「株券」は証券という紙ペラであるため、他人への売買が誰への気兼ねなく自由です。

オーナーの権利が素性不問で売買自由。

この革命的な条件こそが出資するオーナーの層を飛躍的に広げ、巨大資本の収集を可能にし、巨大プロジェクトを量産させ、「株式」を投資の王様へと押し上げます。

ちょっと短めですが、キリがいいので今日はここまでにします。
次回はいよいよ、「株式」の売買価格の決まり方について考えます。

株式とは何か その2

2007年12月01日 | 投資とか。
さてさて、古のアジア~ヨーロッパ間の交易ルートといえば、まずシルクロードがイメージされ、荷物満載のラクダがバンバン月の砂漠を行き交ったりする光景が思い浮かびます。でも有機多足歩行ユニットによる運搬ってやっぱりそのキャパシティがいまいちアレで、シルクロード(陸路)での東西物流って、量としては実はそんな大きなものではなかったと言われています。

長距離大量物流の王者は、やはり海運です。

東西物流の要衝は、古来紅海ルートを握ったイスラム商人が独占しており、ヨーロッパでの通商は、地中海ルートを握ったイタリア商人達が寡占していました。これが1498年、バスコ・ダ・ガマによる喜望峰経由でのインド航路発見によりその覇権がポルトガルに移っていきます・・・なんていった航海技術の発展による栄枯盛衰の歴史もかなり面白いのですが、とりあえず今回「株式とは何か」について考える上で重要なのは以下の一点です。

海運にはお金がかかる。

そう、大型船ってめちゃめちゃお金がかかるんです。

大航海時代の大型船の建造費については手元に資料がないのですが、
現代の貨物船やタンカーの建造費が数十億~数百億ですので、
おそらく当時としてもそのくらいの巨額感があったのではと思われます。

加えて、遠洋航海となれば乗組員の給与や食料費などの経費も膨大になりますし、
大きな商売をするなら現地での買い付け金もそれなりに欲しいところです。

なにより計画策定から実際の航海・売買まで全てを采配する、優秀なキャプテンが必要です。
優秀なキャプテンの報酬は、当然かなりの高額です。

つまり胡椒航海のためにはとにかく莫大な資金が必要で、いくら儲けがさらに莫大だと分かっていても、相当の超大金持ちじゃないとオーナーにはとてもなれません。

胡椒航海のオーナーになれば莫大な利益のチャンスが手に入る。
でも超大金持ちじゃないとオーナーになれない。
類は友を呼び、金は金を呼ぶ。
邱永漢さんは言いました。「お金は寂しがりやです。仲間が集まるところへ集まってしまいます」

うう・・・悔しい・・・。私も胡椒航海のオーナーになって大儲けのチャンスが欲しい。でもそこまでのお金はないし・・・。なんとか私の持っているだけのお金でオーナーになることはできないものかなあ・・・。
小金持ち達が歯軋りします。

うう・・・悔しい・・・。俺も胡椒航海のキャプテンになって高額な報酬が欲しい。でも超大金持ちの出資先は実績のあるキャプテンに固定されてしまっているんだよね・・・。超大金持ちってそんなにいないし、どっかに新しいオーナーが現れないかなあ・・・。
キャプテン候補達が胸をかきむしります。

そこへ知恵を持つものが現れます。
「小金持ちはいっぱいいるんだから、たくさんのオーナーが胡椒航海に必要な資金をシェア(分担)して出資して、儲けもシェア(割当)して分配する仕組みを作ればいいんじゃないかな。」

資金のシェア。出資金。
儲けのシェア。分配金。

シェア。
share ━━ n. 分け前; 割当て;分担 ;株(式);

そう。株式は英語でシェアと言います。

「株式」の誕生です。

さてさて、また長くなっちゃったので、続きはまた次回にします。