娘がまだ小さいころ

「むかしフィラデルフィアでしょうがくせいだったときに」
と言ってたんだった。
まだ3才くらい?
フィラデルフィアって言葉を知ってるかどうかもわからない頃。
前世なの?

久しぶりに、そして今年初の坐禅会に行った。
師匠は例のひどいインフルエンザの病み上がりで5キロも痩せたという。
確かに顔がほっそりしている。
気分もまだ元通りではないらしくちょっと言葉が投げやりで皮肉っぽい。
元気な時に発する大きくあたたかいものの奔流はまだ回復してないようだった。
坐禅指導はいつもほど脱線せず、基本的なことをシンプルに説明した。
言葉は全てきちんと見繕われていて気持ちがいい。
粒子が木目が細かく、揺れずぶれず、背骨が立つ。
そうだった。
たまに触れるといいんだった。
そこに向かうといいんだった。
いろいろ変わっていく中で、もう自分は来なくなるのだろうかと思ったこともあるけれど、来られる時にまた来よう、と思った。
今日は病院。
特に変わりはありませんね、で終わる定期診断。
「お母さんの頃からでつきあいは長いけど、あなたはだんだん立派になるね」
「やだー先生、立派って横にですか?」
‥いや、そうじゃないか。
主治医は冗談言うタイプじゃなかった。
母がいて子どもが幼稚園の頃からだから
もう二十年以上の主治医が言う。
私はうまく生きてきてるらしい。