友人たちに勧められた韓流ドラマを見始めた。韓国時代劇×ゾンビものの「キングダム」。
私はホラーは見たくないんだけど、ゾンビは割と嫌いではない。いや、若干好きかも。あの、人でない感じ。あらゆる規則、ルールをぶっちぎり本能と無意識が噴出する感じ。
ホラーは大抵、自我意識、執着の表れだから暗くて苦しいんだけど、ゾンビは基本的に陽気なんだよね。演じ手も感じているはずの気持ちよさが伝わってくるのかも。ゾンビはある意味、祭り、だから。
ゾンビ疫病から民を救おうとする世子が主人公なんだけど、度々ドローンに映されるなだらかな美しい大地、森、川、がもうひとつ大きな主役のように思える。その有機的なフィールドで何か均衡が損なわれるとカチリとスイッチが切り替わり、ゾンビたちが泉のように湧き出て広がっていく。
重い年貢に苦しめられ、ついには人を食うまで追い詰められた人民は、不死身の化け物になって「人の治める地」を襲う。無差別に公平に出会う人全てに全力で食らいつく。宮廷の陰謀、政ごとの勢力争い、様々な意味の世界を無化する津波。その時ゾンビたちは自然の理に反するものではなく、おそらくは理そのものの一翼。
化け物は醜く恐ろしくおぞましい。でも同時にこの上なく、そう、そこには心惹かれる魅力がある。何も映さないその白濁した目をのぞき込む時、私たちは自分にも隠された自分の一部に出会うのではないか。
人としてこうありたい、こうありたくない、といういくつもの切なる願いの井戸の底に映る月。
その月のようでもある、我らがゾンビたち。
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