びょういんはなんか懐かしい。
何年も家族のために通ったからか。
あのクリーム色のカーテンを引くと、ベッドに母が、こどもがいるような気がする。
身体の神経系のどこかが緊張する一方で、ひどくほっとしているところもある。
いつか(順当に行けば)最後の息を引き取る可能性の高いこの場所で、命が明々と燃えている。
またはもがいて、あるいは静かに消えようとしている。
それは自然なことなのだと、ただそうあるものなのだと。
ここにいるとあらためて伝わってくる。
いつか横たわるその時に、私のどこかは安堵をするような気がする。
こんなにこの地に馴染じんだ今であっても。
本当の故郷はここではないと一番の奥底が知っている。