見晴らしのよい部屋で、ストーブの上のケトルがかすかに音を立てている。
水鏡のように静かな人が私のからだに耳をすませている。
澄んだ空気と透明な光、でも不思議と部屋に満ちているのはこんこんと湧く水の気配。
「今どんな感じですか」
そう聞かれて、からだが安心してくつろいでいることがわかる。
その人の手から波紋。
その波と私を形作る波が出会って干渉しあう。
混ざり合い共鳴し新しくひとつのドームを作る。
その人は何もしようとしていないので私のからだは滑らかに動き、いそいそと自分の、元の、かたちと柔らかさに戻る。
はっと我に返り、花びらのようにはらりとひらく。
スライムのように広がる。
ぽこぽこと湧く。
なんだかはわからないけど、面白いからいいんじゃないか、と頭は言う。
でもきっとここに来たのは、体。