平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

(13)狂鹿病(CWD)とは

2006年01月30日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (13)

プリオンによる病気は牛だけではありません。羊にスクレイピーというプリオン病があることはすでによく知られています。

いま北米の鹿の間に、慢性消耗病(Chronic wasting disease: CWD)という病気がはやっています。この病気については、以下のサイトがわかりやすく説明しています。

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CWDはこんな病気

 CWDにかかったシカは、体重が減り、〈同じところを繰り返し歩行する、他の動物に無関心となる、頭部や耳がうなだれる、軽い運動失調を呈する、両足を広げて立つなどの行動の異常が見られる〉(杉山)。このような症状は数日間で終わることもあれば、1年以上続くこともあるのだが、〈末期には、過剰な飲水と排尿が見られ〉〈嚥下困難、過剰流涎あるいは異物の吸入により誤嚥性肺炎を引き起こ〉(杉山)して、最後には死んでしまう。
 発症するのはおもに成獣で、雄雌にかかわらず感染する。

原因は「プリオン」

 症状を見ただけではCWDと断定はできない。解剖して脳を調べる必要があるのだ。診断の決め手は、〈神経細胞および神経網の空胞変性と〉〈異常型プリオン蛋白質の検出〉(杉山)である。
 この異常型プリオン蛋白質が原因になって起きる病気は「プリオン病」と呼ばれ、牛のBSE(狂牛病)や、人間のクロイツフェルト・ヤコブ病もこの「プリオン病」の一種である。
 このプリオン、生半可な消毒や滅菌が効かない。煮沸くらいでは死んでくれないのである。〈死体の処理および汚染器具等の汚染処理の最も確実な方法は、完全焼却である〉(杉山)。

感染環

 BSEでは、異常型プリオン入りの濃厚飼料(肉骨粉の疑いが強い)を食べた牛が次々に犠牲になったが、シカのCWDでは、プリオンを直接食べなくても感染が進むらしい。〈これまでに捕獲・飼育されたエルクにおいて水平感染が観察されており(中略)自然界でもこのような感染経路が成立していると推定される〉(杉山)。水平感染とは、はじめ健康でも病人(シカ)と一緒にいるだけで同じ病気にかかってしまうことをいう。
 そしてやっぱり、異常型プリオンを口にしてもシカはCWDに感染する。プリオンは〈中枢神経系以外の組織にも存在する〉(杉山)ので、雌ジカの後産などとして〈体外に排出され土壌、牧草などに付着し〉〈CWDの感染源となる可能性は高い〉(杉山)。
 とはいえ、〈感染経路についての詳細もまだ完全には解明されていない〉(杉山)。

人に感染るの?

 世界保健機関は〈これまでにCWDがヒトに感染したという証拠はないと結論づけている〉(杉山)。でも〈リスクを完全に否定できないことから、北米の公衆衛生および野生動物管理に関わる機関は、ハンター、食肉業者、剥製業者などにCWDについての注意を喚起している〉(杉山)。
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http://www.yezodeer.com/newsletter/cwdreview.html

この病気が注目されたのは、鹿の肉を食べたハンターの中に、ヤコブ病になる人が多く出たからです。

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 牛海綿状脳症(BSE)や人のクロイツフェルト・ヤコブ病に似たシカ類の病気、「慢性消耗病」(CWD)の恐怖が米国で広がりつつある。
 英科学誌ニューサイエンティストによると、米国で3人のハンターが最近、ヤコブ病にかかり死亡。このうち2人がワシントン州の同じ町の友人同士だったことが判明。“CWD感染”の疑いが浮上した。
 通常、ヤコブ病は100万人に1人というまれな発生率。今回の調査結果は、汚染されたシカ肉を食べたという証拠がないとして、「CWDとは無関係」の結論を出したという。
 米国では一昨年、シカ類にCWD発生が確認され、農務省が緊急事態を宣言。その後、感染は拡大し、厚生省が人への感染の可能性を調べている。実際に感染するかどうかは不明だが、各国は米国産のシカ肉の輸入を禁止している。
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http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0506usa.html

現在では鹿肉によってヤコブ病になった人は、26名に及ぶという情報があります。

アメリカでは牛肉によるヤコブ病が1人しかいないのに、それよりも食べる人がはるかに少ない鹿肉では26人だというのです。あまりにもおかしな数字です。

CWDは、BSEと同じく、プリオンによって引き起こされますが、その起源は人間にあると考えられます。

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 最初の発生は1960年代後半にさかのぼる。米国コロラド州の養鹿場のミュールジカに衰弱死する疾病が発生し、CWDと命名された。本病は当時、人工飼育によるストレスと栄養素の欠乏によるものと思われていたが、1977年に狂牛病と同様の病変を示す「海綿状脳症」であることが判明した。1980年代には養鹿場および野生のエルク(アカシカ)でも発生が認められ、野生のミュールジカとオジロジカにも拡大した。
 カナダのサスカチュワン州の狩猟牧場では1977年、米国サウスダコタより輸入されたエルクでの発生が確認され、カナダも発生地域となった。CWDの現在の発生地域は、米国コロラド、モンタナ、ネブラスカ、オクラホマ、サウスダコタおよびカナダ、サスカチュワンのエルクの養鹿場である。
 野生ジカ(ミュールジカ、オジロジカ、エルク)での発生は、コロラド州東北部とワイオミング州南東部に限局していたが、最近カナダでも野生ジカでの発生が報告された。
 コロラドおよびワイオミングでの10年間の狩猟されたシカについてのCWDの陽性率は、エルク1.1%(1992~1996年、337例) エルクを除くシカ類で0~5.9%、平均2.5%(1983~1996年、6878例) であった。また、同地域の別の統計によるとミュールジカの発生率は4.9%(4.1~5.7)で オジロジカの2.1%およびエルクの0.5%よりも有意に高い値を示した。しかし、流行地以外の300例の調査では、すべて陰性であった。
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http://www.yezodeer.com/cwd/cwdreport.html

CWDは最初は飼育鹿に発生し、それが野生鹿にも広まっていったことがわかります。特定の地域の野生鹿の感染率が異常に高いことが気になります。

同じサイトは、さらにこう解説しています。

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 米国におけるCWDが何から感染したかは不明である。養鹿場で海綿状脳症の動物の肉骨粉を含む牛用飼料の給与も可能性として考えられるが、証明はされていない。野生シカでの流行については、その原因は何ら解明されていない。しかし、羊のスクレーピーでは生後間もない子羊が母羊から感染することが知られており、CWDの母子感染も否定できない。また、シカからシカへの水平感染の可能性も否定できない。
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飼育鹿の発病の原因は、やはり養鹿場でのプリオンを含んだ肉骨粉の投与だと思われます。

しかし、野生鹿にもCWDが発生しているのはなぜでしょう? 野生鹿をおびき寄せるために、ハンターが肉骨粉入りのエサをまいたと言われています。それを食べた鹿がCWDになることは理解できますが、それだけにしては感染率が高すぎます。上記サイトはさらに母子感染と水平感染の可能性を指摘していました。

母子感染が起こるとしたら、その原因の最大の可能性は母乳にあると考えられます。つまり、プリオンが母乳から子に伝えられるわけです。